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聴覚障害+発達障害者、元人事マンのむじなです。
障害者の就労支援に関わる機関は非常に数が多くて複雑です。
ハローワーク、医療機関のデイケア、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業、大学のキャリアセンター、職業紹介会社(転職エージェント)……などなど。
労働・福祉に限らず、医療や教育などの分野で、公的・民間も含めさまざまな組織・機関が障害者就労支援の機能を持っています。
正直どう違うのか、どう使えばよいのか全然わからんと思っておりました。
今回は、これら障害者の就労支援に関わる機関について、なるべく簡単に、主要な機関を網羅できるように紹介していきたいと思います。
障害者就業・生活支援センター
厚労省HPより引用
障害者の仕事と生活の両面で、一体的に就労支援を行う機関です。
2018年現在で全国に334センターがあり、厚生労働省や都道府県から社会福祉法人等に委託されています(一覧:厚労省HP)。
「就業・生活」支援センターですが、障害者雇用促進法に基づく機関のため、就労に関する支援がメインとなります。
- 就職に向けた準備支援(職業準備訓練、職場実習のあっせん)
- 就職活動の支援
- 職場定着に向けた支援
など多岐にわたる支援が受けられます。
障害者就業・生活支援センターの特徴は、労働・福祉、公的・民間にまたがった地域のネットワーク力(さまざまな機関とつながっている)です。
「どこに、何から相談して良いのか全然わからん!」という方は、まずは障害者就業・生活支援センターに問い合わせてみると良いでしょう。
障害者就労支援センター
支援内容は「障害者就業・生活支援センター」とほぼ同様。
違いとしては、障害者就労支援センターは市区町村ごとに設けられていること。
障害者就業・生活支援センターがお近くにない場合は、利用しやすい障害者就労支援センターを利用するのが良いでしょう。
地域障害者職業センター
職業リハビリテーションの専門機関として、各都道府県に設置されています。
職業相談・職業評価や職業準備支援等の障害者支援、事業主に対する助言や情報提供、ジョブコーチ支援等を行っています。
地域障害者職業センターの特徴は、本格的、かつ様々な職業適性検査を無料で受けられること。
「働けるかどうか不安」「自分の職業適性が知りたい」という方に特におすすめ。
原則として各都道府県に一ヵ所のため、利用が難しい場合もあるかもしれませんが……。
「職業準備支援」の必要性は人によってさまざまだと思いますので、まずは職業適性検査を受け、障害者職業カウンセラーに相談してみるのが良いでしょう。
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ハローワーク(公共職業安定所)
(平成30年度版障害者雇用促進ハンドブックより引用)
おなじみハローワーク。
職業安定法に基づき設置・運営されている国の機関で、地域の就労支援の中心的な役割を担う機関です。
ハローワークには障害者の職業相談・職業紹介を行う専門援助部門があり、ハローワーク主催の合同企業面接会や、障害者対象の職業訓練実施等の他、雇用率達成指導等の対事業主の機能(雇用指導官)もあります。
インターネットでの求人検索も可能(ですが大変探しづらく、見づらい)→障害のある方のための求人情報検索
また、障害者の雇用保険は大変手厚いので、特に失業時にはお世話になる機関です。
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『個々の障害特性に応じたきめ細かな職業相談を実施するとともに、福祉・教育等関係機関と連携した「チーム支援」による就職の準備段階から職場定着までの一貫した支援を実施しています。』(厚労省HPより)
ということですが、筆者は5ヵ所ほどのハローワークで相談したことがありますが、残念ながら求人案件紹介以上のことをしてくれたことはありません……。
精神障害者雇用トータルサポーター、発達障害者雇用トータルサポーターなどの専門職員を配置しているハローワークもあります(配置状況は地域により異なります)。
また、職場適応訓練、障害者トライアル雇用など「試しで働ける制度」の窓口でもあります。
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民間の職業紹介会社(転職エージェント)
精神障害者の雇用義務化、障害者雇用率の上昇等に伴い、障害者の売り手市場が続いているため、最近数を増やしている障害者専門の職業紹介会社(転職エージェント)。
特に人材派遣がベースにある会社が運営する転職エージェントは、企業の内情をよく理解しており、連携も充実しています。
利用料は完全に無料。
就労のための準備ができており、「すぐに、かつ自分に合った仕事を探したい」という方には、手軽かつスピーディに就職活動ができる転職エージェントを利用するのがおすすめ。
しかし、近年の障害者向け転職エージェントの増加に伴って、ますます質のばらつきが大きくなっている印象です。信頼できるエージェント探しがまずは重要になります。
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就労移行支援事業
障害者総合支援法による就労支援の福祉サービス。2017年現在、全国で3,471カ所が設置されています。
企業就労を目指す障害者に向けて、「障害理解を深める」「職業トレーニング」「企業での実践的な実習」などを通して就職に向けたスキルアップや、就職活動のサポートも受けられます。
【主な対象者】
- 就労を希望していて、単独で就労することが困難であり、就労に必要な知識・技能の習得もしくは就職先の紹介その他の支援が必要な65歳未満の障害者
最近は精神障害者や発達障害者などの障害種別や、IT・WEBなど分野ごとに特化した就労移行支援事業所も増加しています。
収入(前年)によって無料で利用できる場合と、自己負担が発生する場合があります。
生活保護(生活保護受給世帯) | 0円 |
低所得(市町村民税非課税世帯) | 0円 |
一般1(市町村民税課税世帯) ※世帯収入がおおむね600万円以下 | 9,300円 |
一般2(上記以外) | 37,200円 |
また、基本的に通所期間中はアルバイトを含め就労は認められず、かつ短期間で就労を目指す機関でもないため、通所期間中の生活費の確保は課題となります。
こちらも転職エージェント同様、質のばらつきが大きく、就労移行率0%(誰も就労できていない)の事業所が全体の約3割となっており、適切な事業所を見極めて利用しなければいけません。
原則として、一生涯で最長2年までしか利用できない点に注意(1年の延長が認められる場合もあり)。
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就労継続支援A型・B型
障害者総合支援法による就労支援の福祉サービス。
就労移行支援事業と異なり、現時点で一般企業での就労が困難な障害者に対して、働く場を提供する機関です。
2017年現在、A型事業所が3,776ヵ所、B型事業所が11,041ヵ所設置されています。
仕事内容は、軽作業や事務、製造、清掃等が多い。
事業所と雇用契約を結ぶ(最低賃金が保障される)A型事業所と、雇用契約を結ばない(最低賃金は保障されない)B型事業所があります(従来の「福祉作業所」はB型事業所に該当)。
【A型事業の主な対象者】
- 就労移行支援を利用したが、企業等の就職に至らなかった障害者
- 特別支援学校を卒業後、企業等の就職に至らなかった障害者
- 企業等を離職した障害者
【B型事業所の主な対象者】
- 就労経験があり、年齢や体力面で一般企業での就労が困難になった障害者
- 就労移行支援事業を利用した結果、B型の利用が適当と判断された障害者
- (上記以外で)50歳に達している、または障害基礎年金1級受給者
就労継続支援事業について、(特にB型)は「就労・生産活動の機会を提供する」という色が濃いですが、就労への能力が高められた障害者については、一般企業への移行に向けた支援も行っています。
障害者の就労支援のためのサービス内容と支援機関一覧
(障害者の雇用支援のために(平成23年版)より引用)
①就職に向けての相談 | |
就労に関する様々な相談支援 | 障害者就業・生活支援センター |
職業相談・職業紹介 | ハローワーク、転職エージェント |
相談事業 | 相談支援事業者 |
職業カウンセリング・職業評価 | 地域障害者職業センター |
↓
②就職に向けての準備、訓練 | |
地域障害者職業センターにおける職業準備訓練 | 地域障害者職業センター |
就労移行支援事業 | 就労移行支援事業者 |
公共職業訓練 | 障害者職業能力開発校等、ハローワーク |
障害者の態様に応じた多様な委託訓練 | 職業能力開発校(委託訓練拠点校)、ハローワーク |
職場適応訓練 | 都道府県、ハローワーク |
↓
③就職活動、雇用前・定着支援 | |
求職登録、職業紹介、継続雇用の支援 | ハローワーク、転職エージェント |
障害者試行雇用(トライアル雇用)事業 | ハローワーク |
職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業 | 地域障害者職業センター、社会福祉法人等 |
就業面と生活面の一体的な支援 | 障害者就業・生活支援センター |
精神障害者の職場復帰支援(リワーク支援) | 地域障害者職業センター |
↓
④離職・転職時の支援、再チャレンジへの支援 | |
職業相談、職業紹介 | ハローワーク、転職エージェント |
職業相談、職業紹介、雇用保険の受給 | ハローワーク |
就労継続支援事業(A型・B型) | 就労継続支援(A型・B型)事業者 |
(表:障害者の雇用支援のために(平成23年度版)をもとに作成)
まとめ
今回は、主に障害者が身近な地域で利用できる就労支援機関をご紹介してきました。
ご覧になってお分かりの通り、同じように見える就労支援機関もその特徴はさまざまで、ご自身の職業準備の状況や障害の程度、あるいは経済状態等によっても、最適な支援機関は異なります。
ワンストップで、それぞれの障害者の状況に合わせて各支援機関につなげてくれる機関があればよいのですが……。
特に障害者の中には(私のように)離・転職を繰り返して自分の望ましい仕事の内容やスタイルを模索する方や、障害(疾病)の悪化・寛解など、その時々で必要な支援が変わっていきますので、安心してベースとして利用できる機関を見つけることが望ましいです。