障害当事者として転職を経験し、企業で障害者採用の面接官を務めた経験もある、むじなです。
障害者雇用の面接を控えていると、「障害についてどこまで話すのか」「転職理由をどう説明するのか」「緊張して答えられなくなったらどうしよう」と、不安になることがあると思います。
私自身も、面接では緊張します。ただ、質問されそうな内容と、自分が伝えたいことを整理しておくことで、面接に臨みやすくなりました。
この記事では、私が受けてきた面接で聞かれた内容を中心に、準備しておきたい質問と答え方を紹介します。あわせて、受け答えの基本、緊張したときの対応、面接前の確認事項もまとめます。
企業や職種によって質問は異なりますが、自分の経験、必要な配慮、希望する働き方を整理する際の参考にしてください。本文中の回答例は、伝え方を示すための例です。ご自身の実際の経験に合わせて使ってください。
面接の回答は「質問への答え」と「具体例」を用意する
回答を考える前に意識したいのは、何を聞かれているかを確認することです。
私が採用担当として面接をしていたときも、用意してきた話が立派かどうかより、質問に沿って説明されているかが気になりました。
たとえば「どんな業務を担当していましたか」と聞かれたら、まず担当業務を答えます。「その中で工夫したことはありますか」と続けて聞かれたら、具体的な取り組みを説明します。
一つの質問に、経歴も強みも志望動機も詰め込む必要はありません。
答えるときは、次の順番で整理すると話が伝わりやすくなります。
- 質問への答えを先に伝える
- 理由や具体的な経験を説明する
- 必要に応じて、応募する仕事とのつながりを補足する
質問の意味が分からなかったときは、「〇〇についての経験という理解でよろしいでしょうか」と確認して構いません。すぐに答えようとするより、認識を合わせてから話す方が正確です。
障害者雇用の面接で準備しておきたい質問と答え方
1.「自己紹介をお願いします」
自己紹介では、これまでの経歴と、応募する仕事に関係する経験を簡潔に伝えます。
職歴がある場合は、主な担当業務や得意分野を中心にします。職歴がない場合は、学校、実習、訓練などで取り組んできたことから、仕事につながる内容を選びましょう。
回答例:
これまで事務職として、書類の確認やデータ入力を担当してきました。確認手順を整理し、正確に業務を進めることを大切にしています。本日は、これまでの経験と、御社でどのように働けるかをお伝えできればと思います。よろしくお願いいたします。
私は、応募先の仕事内容を確認し、自分の経験の中から関連する部分を選んで自己紹介に入れていました。
企業に合わせるために、経験していないことまで加える必要はありません。詳しく聞かれても、自分の言葉で説明できる内容にしましょう。
2.「障害の状況や、仕事への影響を教えてください」
障害については、診断名だけでなく、仕事上どのような場面で影響が出るかを整理しておくと説明しやすくなります。
準備しておきたいのは、次の内容です。
- 現在の障害や症状の状態
- 仕事上、難しさが生じる場面
- 自分で行っている対処
- 配慮がある場合にできること
- これまで働いてきた仕事内容や勤務時間
たとえば聴覚障害であれば、会話、電話、会議など、場面によって聞き取りやすさや必要な方法が異なります。「聞こえにくいです」だけで終えず、どの場面で、どのような方法が必要かを伝えます。
説明用の例:
複数人が同時に話す場面では、内容を聞き取りにくいことがあります。重要な連絡をメールやチャットでも確認できると、内容を把握して対応しやすくなります。
障害の経緯を聞かれた場合も、仕事との関係を中心に、必要な範囲で説明しましょう。
厚生労働省のQ&Aでは、採用時に配慮について質問する際も、適性・能力の判断に必要な範囲で、質問の趣旨と必要性を明らかにすることが基本とされています。私生活や病歴のすべてを詳しく話すことが、面接の目的ではありません。[厚生労働省「障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A」Q4-2-4](https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/001237499.pdf)
仕事との関係が分からない質問には、「業務への影響についての確認でしょうか」と、何を確認したいのか尋ねる方法もあります。
3.「必要な配慮や、通院について教えてください」
配慮は、「何をしてほしいか」と「なぜ必要か」を一緒に伝えると、応募先も具体的に検討しやすくなります。
たとえば、次のように整理します。
- 口頭の指示を取り違えやすいため、重要な指示は文字でも確認したい
- 複数の依頼が重なると優先順位の判断が難しいため、優先順位を確認できる相手を決めたい
- 定期的な通院があるため、勤務時間や休暇の利用方法を相談したい
通院については、頻度、必要な時間、勤務への影響を説明します。服薬についても、仕事に影響する眠気などがあれば、その状況と対処を整理しておきましょう。
入社後の就業継続に欠かせない配慮と、方法を相談できる希望を分けておくと、話し合いを進めやすくなります。
雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主に過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供する義務があります。具体的な方法は、本人の状況と職場の条件を踏まえて話し合います。[厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」](https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/shougaisha_h25/index.html)
配慮を伝える時期や、面接・オファー面談での伝え方は、障害者雇用の配慮事項はいつ伝える?面接・オファー面談の例文で詳しくまとめています。
4.「これまでの業務内容や、使えるスキルを教えてください」
業務内容を説明するときは、部署全体の仕事と、自分が担当した仕事を分けます。
次の順番で整理すると、自分の役割が伝わります。
- 何を目的とする業務だったか
- 自分はどの部分を担当したか
- どのような工夫をしたか
- どのような結果や学びがあったか
大きな成果や表彰がなくても、確認手順を整えた、関係者と調整した、依頼された仕事を継続して担当した、といった経験を説明できます。数値が分からない場合は、無理に成果を数字にする必要はありません。
パソコンスキルについては、ソフト名だけでなく、何に使っていたかを伝えましょう。
- Excelでデータ入力、集計、関数を使った確認をしていた
- Wordで社内文書や報告書を作成していた
- PowerPointで説明資料を作成していた
- 業務システムへの登録や、データの照合作業をしていた
実務経験がない場合は、学習や訓練でできるようになった操作を説明します。資格の有無と、実際にできる作業は分けて伝えると、相手も理解しやすくなります。
5.「退職・転職を考えた理由は何ですか」
転職理由では、これまでの職場で何が起きたかと、次の職場で何を実現したいかを整理します。
私が採用担当として確認したいと考えていたのは、過去の退職理由だけでなく、応募する職場で本人の希望や必要な条件を満たせるかという点です。
たとえば、仕事内容の変化が転職理由なら、次のように説明できます。
業務内容の変更をきっかけに、今後の働き方を見直すようになりました。これまでの〇〇の経験を活かしながら、△△の業務に取り組める職場を希望しています。
配慮が得られなかった場合は、必要だった配慮、相談した内容、その後の状況、次の職場に求める条件を分けて説明します。
ハラスメントなど、話すこと自体に負担がある経験を細部まで説明する必要はありません。また、被害を受けた人が、無理に自分の非を作って話す必要もありません。
話す範囲を選ぶことと、事実と異なる退職理由を作ることは別です。応募書類と面接で、経歴や理由が食い違わないように整理しましょう。
前職の話し方については、障害者雇用の面接で信頼される伝え方も参考にしてください。
6.「なぜ当社に応募したのですか」
志望動機では、応募先の仕事内容や特徴と、自分の経験・希望との接点を説明します。
「障害者への理解がありそうだから」「大手企業だから」だけでは、具体的にどこに関心を持ったのかが伝わりにくくなります。
次の二点を考えてみましょう。
- 求人や企業情報の、どの部分に関心を持ったか
- その仕事に、自分の経験や得意なことをどう活かせるか
福利厚生や配慮のある環境を重視することも、仕事選びの理由になります。そのうえで、担当する仕事にも触れると、入社後の働き方を説明しやすくなります。
職歴がない場合は、実習や訓練、学習したことと、求人の仕事内容を結び付けて考えてみてください。
7.「仕事選びで重視していることは何ですか」
この質問では、仕事内容、給与、勤務時間、必要な配慮、雇用形態など、自分が仕事を選ぶ基準を伝えます。
重視する条件が複数ある場合は、優先順位を整理しましょう。
「配慮があればどのような仕事でもよい」のか、「これまでの経験を活かせる仕事を希望する」のかでは、企業側が検討する内容も変わります。
また、「仕事でやりがいを感じるのはどんなときですか」「仕事で大切にしていることは何ですか」と聞かれることもあります。
お客様に役立てた、正確に処理できた、チームで仕事を進めたなど、実際にそう感じた場面を一つ用意しておくと説明しやすくなります。
応募先に合わせて、重視していない価値観まで語る必要はありません。
8.「得意な仕事・苦手な仕事はありますか」
得意な仕事は、具体的な経験を添えて説明します。
「細かい作業が得意です」と答えるなら、どんな作業を、どのように進めていたかまで伝えます。
苦手な仕事については、難しさが生じる条件と、対応できる条件を分けましょう。
たとえば、「急な変更が苦手です」だけでなく、「複数の予定が同時に変わると整理に時間がかかりますが、優先順位を確認できれば進められます」と説明すると、必要な環境が伝わります。
配慮があればできる仕事と、配慮があっても難しい仕事を区別することも大切です。
職種を限定しない求人でも、経験やスキルが不要とは限りません。求人の業務内容や応募条件を確認したうえで、自分に合う仕事を考えましょう。
整理が難しい場合は、面接対策のための障害理解・自己理解を深める方法も参考にしてください。
9.「仕事で大変だったことと、対処を教えてください」
この質問では、困った場面で自分がどう動いたかを、具体的に説明します。
準備するのは、次の四点です。
- どのような状況だったか
- 自分が何を担当していたか
- どんな対応や相談をしたか
- 結果として何が変わり、何が残ったか
すべて自分一人で解決した話にする必要はありません。上司や同僚に相談したこと、支援を受けたことも、仕事を進めるための行動です。
十分に解決できなかった経験でも、そこから分かったことや、現在行っている対策を説明できます。「苦手なことを努力だけで克服した」という形に整える必要はありません。
10.「強み・短所は何ですか」「周囲からどんな人だと言われますか」
強みは、先に一言で答え、その根拠となる経験を続けます。
調整力を説明する場合の例:
私の強みは、関係者と調整しながら仕事を進めることです。新しい制度を導入する際、一斉説明だけでは伝わらない点を部署ごとの打ち合わせで補い、協力を得られるようにしました。
先に「何が強みなのか」が分かると、その後の経験と結び付けて聞いてもらいやすくなります。
「周囲からどう言われるか」は、実際に受けた評価や言葉を使います。言われていないことを、他人の評価として作る必要はありません。明確な言葉が思い浮かばなければ、その旨を伝え、自分の行動の例で補足する方法もあります。
短所については、難しい場面と、現在の対処を組み合わせます。緊張すると話がまとまりにくい場合も、実際に行っている準備や、必要な対応を説明しましょう。
面接で緊張しすぎるときの対処
私も、面接前に吐き気がするほど緊張した経験があります。面接官として初対面の人と話すときも、緊張していました。
私が緊張対策として取り入れてきたのは、緊張していることを伝えることと、想定質問・回答をメモにして準備することです。
緊張していることを短く伝える
言葉が詰まりそうなときは、冒頭で短く伝える方法があります。
本日は少し緊張しています。回答を整理するため、お時間をいただくことがあるかもしれません。よろしくお願いいたします。
面接の途中でも、「少し考える時間をいただけますか」と伝えて構いません。
緊張していることを伝えれば必ず評価が変わる、という意味ではありません。自分の状態や必要な対応を、相手に理解してもらうための方法です。
想定質問と回答の要点をメモにする
回答を書き出すと、自分が伝えたいことを整理できます。ただし、長い文章を一字一句暗記しようとすると、質問の聞き方が変わったときに対応しにくくなります。
メモには、次のような要点を短くまとめましょう。
- 質問への答え
- 根拠となる経験
- 必要な配慮
- 応募先に確認したいこと
面接中にメモを参照したい場合は、事前に使用できるか確認しておくと安心です。当日必要になった場合は、「要点を整理したメモを確認してもよろしいでしょうか」と伝えます。
私は採用担当として、メモを参照すること自体をマイナスに評価する考えではありませんでした。ただ、用意した文章を読むだけでなく、聞かれた内容に沿って説明することは大切だと考えています。
障害特性によって必要な面接方法は、事前に相談する
聞き取りや、その場で回答を整理することに難しさがある場合は、面接を受けるために必要な方法を相談しましょう。
たとえば、次のような方法が考えられます。
- 質問を一つずつ伝えてもらう
- 質問を文字でも示してもらう
- 筆談などを併用する
- 回答を整理する時間を取ってもらう
- メモの使用や支援者の同席について相談する
具体的な方法は、困っていることと応募先の状況に応じて話し合います。準備が必要な場合もあるため、面接日が決まった段階で早めに伝えましょう。
厚生労働省の合理的配慮指針でも、募集・採用時に必要な配慮は、支障となっている事情を申し出て話し合うこと、面接日までに時間的な余裕をもって申し出ることが示されています。[厚生労働省「合理的配慮指針」第3](https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000082153.pdf)
面接前は、求人と企業情報を照らし合わせる
私自身、企業について急に質問され、答えられずに焦った経験があります。応募先の情報を確認しておくことも、落ち着いて話すための準備になります。
まず確認したいのは、次の内容です。
- 会社の主な事業やサービス
- 応募する仕事の内容と、求められる経験・スキル
- 勤務地、勤務時間、雇用形態などの条件
- 自分がその求人に関心を持った理由
- 公開情報だけでは分からず、面接で確認したいこと
企業理念や最近の取り組みも、自分の応募理由に関係するものがあれば確認します。創業者名や売上高などを一律に暗記するより、応募する仕事との関係を理解しておくことを優先しましょう。
転職エージェントを利用している場合は、求人票で分からない点や、面接で必要な配慮を担当者に相談する方法もあります。企業ごとの情報を、どこまで確認できているかも聞いておくとよいでしょう。
勤務条件と逆質問も準備しておく
面接では、希望する勤務時間、勤務地、入社可能時期、給与などを確認される場合もあります。
自分が対応できる範囲と、相談が必要な条件を整理しておきましょう。入社可能時期など、その場で確定できないことは、確認してから回答する旨を伝えれば構いません。
最後に「何か質問はありますか」と聞かれたときは、入社後の働き方を確認する機会として使えます。
たとえば、次のような質問です。
- 入社後、最初に担当する業務を教えていただけますか
- 業務の指示や相談は、どのような方法で行っていますか
- お伝えした配慮について、配属先でも対応できるか確認できますか
面接中にすでに説明されたことは、重ねて質問する必要はありません。分からなかった点や、説明を聞いて新たに確認したいと思った点を尋ねましょう。
具体的な質問例は、障害者雇用の面接で使える逆質問20選で紹介しています。
面接前の最終確認
回答を準備したら、次の点を確認しておきましょう。
- 応募書類と、経歴・担当業務の説明が一致しているか
- 転職理由と、応募先を選んだ理由がつながっているか
- 障害の仕事への影響と、必要な配慮を説明できるか
- 強みや仕事の経験に、具体例を添えられるか
- メモなど、面接に必要な方法を相談できているか
- 応募先に確認したいことが整理できているか
すべての回答を完璧な文章にする必要はありません。まずは、質問への答えと、その根拠になる経験を自分の言葉で話せるように準備しましょう。
実際の面接で質問がどう続いていくかを知りたい方は、内定した企業との一次面接の会話記録も参考にしてください。
面接は、応募者が経験や希望を伝えるとともに、企業の仕事内容や働く条件を確認する機会です。必要な配慮も含め、入社後の働き方を具体的に話せるようにしておくことが、私の考える面接準備の基本です。
