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聴覚障害+発達障害者、元人事マンのむじなです。
このところ専門学校(精神保健福祉士)の実習で忙しくて、すっかりご無沙汰してしまいました。
ここ2年ほど、私は一つの会社に所属することなくフリーのWEBライターやキャリアコンサルタントなどの仕事で生活していますが、いろいろやっているお仕事のひとつとして、障害者向けキャリア教育の講師をしています。
私自身が発達障害の当事者ということもあり、主に発達障害がある学生を対象とした支援に携わっているのですが、保護者の方と面談する機会も結構あります。で、まず保護者の方から聞かれるのが、
「よくなりますか?」
「普通にできるようになりますか?」
というものです。
が、残念ながら発達障害は生まれつき脳の発達が違っているために生じるものであり、特性自体をなくすことはできないというのが現在の通説です。
それでは、発達障害児・者への早期支援が無意味か?というと、決してそんなことはないと思っています。
今回は、支援者として、そして発達障害当事者として考える、発達障害児・者への早期支援の効果と目的について書いていきます。
「悪い(生きづらくする)癖」をつけない、「良い(生きやすくする)癖」をつける
年齢が上がるにつれて悪癖を直すのは難しくなってきますし、そもそも「何が悪い癖なのか=生きづらくさせている原因」に自分で気づけない場合もあります。
また、社会に出てからは「こういうところ直した方がいいよ」と懇切丁寧にかかわってくれる人もあんまりいません。
よって、早期支援で早めに「悪い(生きづらくする)癖」をつけない、「良い(生きやすくする)癖」をつける訓練することに意味があります。
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例として挙げると、どうしたらよいか分からないとき、笑ってごまかす癖のある子がいます。
笑ってほがらかな雰囲気を作り出すことは、その子なりの「生きやすくする術」なのかもしれませんが、学生のうちは良くても、仕事をする上では「笑ってその場をしのぐ」だけではどうしようもない場面が出てきます。
指示や説明に対して、何が分かって何が分からなかったのか、分からなかったなら いつ誰にどのように聞けばよかったのか、具体的な作業場面でのやりとり等を通して「ふさわしい振る舞い」を習得していきます。
分からないことがあったら、質問して教えてもらう。簡単なことに思えますが、しっかり癖(習慣)として身に付けておかないとできるようになりません。
このように、仕事をするうえで必要になってくるソフトスキルを早いうちから習得していけるのが早期支援のメリットの一つです。
自分を知る機会になる
向き不向きというのは自分では意外と気付きづらいもので、更に「自分がどんな仕事に向いているか」は就労経験がないと具体的に考えることは難しく、発達障害があれば尚更です。
私も当てはまるのですが、発達障害がある方は転職を繰り返す方が少なくありません。
その理由ですが、「職場の人間関係」がダントツかと思いきや、「仕事がこなせなかった」というのがほぼ同率で並んでいます。
「発達障害者の能力が低いから仕事についていけない」というわけではなく、発達障害は「発達(能力)の凸凹」ですので、得手不得手が他の人より極端なんです。
なので、まずは自分の得手不得手を正確に把握することが大切なんですね。
私のような就労経験のある支援者が講師となり、職業体験を通して、自己理解を促しつつ客観的なフィードバックを交えながら考えることで、かなり正確な自己理解ができるようになります。
就労(と障害福祉)の専門家が、長期間にわたって、定期的に、将来の就労に向けてかかわってくれるというのはかなり貴重な体験だと思います。
こういった手厚い支援を福祉サービスとして利用できるのは、障害があるからこそですので、使わないともったいないです。
成功体験を積み重ね、自己肯定感を育む
発達障害があり通常の教育では「はみ出してしまう子」にとっては、褒められることよりも叱られることの方が多くなりがちです。
そういった子が成功体験を積み重ね、自己肯定感を育める場所は大変貴重です。
また、「成功体験」はもちろんですが、安心して失敗体験できることの方が大切かもしれません。
発達障害者は「社会経験の少なさ」を指摘されることが少なくありませんが、それは失敗を恐れ、チャレンジできていないということでもあります。
実際、発達障害がある学生たちと接していても、“失敗”や“負け”への強烈な拒否感・拒絶感を持っている子が結構います。
早期支援により、安心して失敗できる「安全基地」を提供することで、チャレンジする力を育てていくことが、何より大切だと思っています。
さいごに.発達障害は治らなくても、発達障害者は成長できる
冒頭で書いた通り、発達障害は治る治らないという性質のものでなく、その人の生まれ持った特徴です。
その特徴を個性と呼ぶ方もいますが、一当事者の意見としては、やはりこれまでの生きづらさを思い返すと、障害だよなぁ……と思ってしまいます。
しかし。発達障害は治らなくても、発達障害者は成長できます。
特性は変わらなくても、生きづらさを解消する術を身に付けていくことはできます。
キャリアコンサルタントの資格を取得して約1年、当初は「当事者視点の障害者支援を」と張り切っていましたが、コロナの影響もあってあまり活動は広げられていません。
今回取り上げたキャリア教育講師のような、意義を感じられる活動を少しずつ増やしていきたい。