発達障害 障害者の就職・転職

発達障害者の就活・転職活動セミナー(コミュニケーション編)まとめ

2019年2月13日

目次

障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。

先日のブログで書いた通り、2月いっぱいで現職を退職することになりました。

聴覚障害者としては5年以上の障害者就労経験がありますが、発達障害者としての就活・転活は初めてなので、セミナーに参加して情報収集してきました。

参加したのは、障害者向けの転職エージェントである『dodaチャレンジ』が主催している「~発達障害のある方向け~面接突破のためのコミュニケーション力向上セミナー」です。

既知の内容が多かったのですが、自己理解の促進につながる良いセミナーでしたので、ポイントを記録・共有しておきたいと思います。

※今回の記事は、私の意見は注釈に留め、あくまでセミナーで聞いてきた内容のまとめです。引用部分はすべてセミナー資料より(画像は資料をもとに筆者作成)。

 

企業が求める人物像とは?

企業が求める人物像は、一言でいうと「求める職業能力と一致し、安定して就労できると証明できる方」です。

「職業能力」×「安定就労要素(自己管理・受容・生活基盤)」であらわすことができます。

職業能力はそのまま、企業で活かせるスキルや経験のこと。

安定就労要素は大きく分けて3つ、下記の通り。

  1. 自己管理(通院や服薬を含め、医師やサポーターの意見・指示を正しく実践できるか)
  2. 受容(自分の障害を正しく把握すること。次の就労に向けて、働くコンディションが整っているか、客観的にも(主治医の意見など)準備ができている状況)
  3. 生活基盤(経済的・精神的なサポートがあるか、相談できる人がいるか。家族・友人・主治医・福祉サポート・ハローワーク等、「どんなサポートか」は人それぞれ)

企業が求める人材像のマトリクス

そして、上記の図の通り、「就労の安定度が高い障害者」が採用のターゲットとなる。

どれだけスキルが高く仕事が出来ても、状態が安定しておらず、例えば「何日も休んでしまうようなことが頻繁に起こる」ようでは、まだ就労の準備ができているとはみなされない。

むじな注釈:発達障害者は、身体障害者・知的障害者に比べて「就労の安定度が低い」とみなされがちです。なので、採用ターゲット群に入るためには、まずは「安定就労できる」ということを、理由を付けてアピールする必要がある。

 

障害特性と対処法、配慮について考える

個人ワークとして、自分の障害特性について理解を深めます。

これまで、何となく「苦手だな」と感じていたものを、仕事の場面ごとに落とし込んでいく作業です。

下記、資料そのままなので一部のみの抜粋としますが、このようなイメージです。始業前(出勤準備)から仕事の切り上げ(退社)までの場面で、自分が苦手だと思う項目をチェックしていきます。

  • 仕事の指示を聞く際に
    □話し言葉を正確に理解することが難しい
    □優先順位を決められない
    ・・・
  • 仕事で困った時
    □何で困っているのか口頭で表現するのが苦手、相談のタイミングが計れない
    ・・・
  • 他人との関わり
    □名前を覚えたり人の顔を見分けるのが苦手
    ・・・

更に、チェックした「苦手」の上位3つを選び、企業に伝えることを想定して、障害特性と具体的な対処法、配慮事項について整理していきます。

 

障害特性と対処法、配慮事項を伝える

私の例でいうと、普段の仕事の中で頻繁に起こる困った場面は、「業務指示を受けるとき」と「業務の進め方について相談するとき」です。

「指示を受けた後に確認漏れに気付いても(大体漏れがある…)、相談しに行くタイミングがつかめない」という感じです。

障害特性
【何で困っているのか口頭で表現するのが苦手、相談のタイミングが計れない】

自分でできる対処方法
【相談するときは、要点(と相談の時間をいただきたい旨)をあらかじめメールで伝える。】

会社にお願いしたいこと
【確認に漏れが多いので、業務指示をいただいた後、まずは一人で内容を整理する時間を貰いたい。その後、改めて業務の進め方ややり方を相談する機会を設けてほしい】

上記は私がワークで作った一例です。このように、いくつか自分の特性と対処方法、会社にお願いしたいことをまとめます。

その後グループワークで発表し、ブラッシュアップしていきます。この発表とブラッシュアップは、実際に面接で話すことを想定した練習ができるので実践的で良かったです。

資料掲載の例も一部載せておきます。

【会話例】
私の障害名は、発達障害(ADHD)です。
複数の業務を同時進行させることが苦手だったり、あいまいな言い方をされたりすると、なかなか理解しにくいですね。
業務の指示していただく際には、メモを取るようにしています。
・・・

【会話例(ブラッシュアップ後)】
私の障害名は、発達障害(ADHD)です。
特性としては、マルチタスクが苦手なこと、あいまいな表現が理解しにくいなどがあります。新しい業務を指示していただく際には、許可を得た上で、必ずメモを取るようにしております。
・・・

 

長く働き続けるために、何を優先して就職先を決めるか

一つの会社で長く就労できている発達障害者に共通してみられる特徴は、「内定・就職(転職)をゴールにしていない」こと。

具体的には、目先のことにとらわれず「この会社で長く安定して働けるか」をあらゆる角度から掘り下げて考えていること。

  • 自分と同じ障害の方の採用実績がある企業?
  • 得意なことや今までの経験・スキルが活かせる企業?
  • 負担にならない通勤時間?
  • 社内における相談のしやすさ?
  • 労働時間?雇用形態?賃金?
  • 能力やスキルを高められること?

上記はほんの一部で、実際様々な条件がありますし、上(もっと良い条件)を見ればキリがありません。

自分にとって決して譲れない条件は何かを決めておかないと、「正社員で給料も高い!」と飛びついて、後で「こんなはずじゃなかった」と後悔するかもしれません。

もちろん、雇用形態も賃金も重要な要素なのは間違いないですが、続かないと意味ないですからね。

 

発達障害の雇用実績例

発達障害の雇用事例もいくつか紹介がありました。

ポイントとしては、繰り返しになりますが、「職場で配慮してほしいこと(会社にお願いしたいこと)」と「働く上で実践していること(自分なりの対処法)」を持っていることでしょう。

例1:発達障害(ADHD)・20代男性

職場の配慮:業務指示の際は優先順位や納期を明確化。感情的な叱責は控える

働く上で実践していること:注意散漫と歌集中のため抜けもれが起きやすい傾向にありますが、業務毎にチェックリストを作成し、仕事を進めています。また、アラーム機能なども利用しています。

例2:発達障害(アスペルガー症候群)・30代男性

職場の配慮:
①遂行可能な納期設定
②明確な業務指示
③変更は前日までに
④シングルタスク希望。マルチタスクについては、仕事に慣れ業務指示が文章であること、またタスクを細分化し、段取りする時間をいただけるなどであれば対応可能

働く上で実践していること:業務指示で曖昧と感じた点は自ら質問する。タスクリストを上司と共有し、朝夕15分進捗確認。MTGを実施。

上記の例のようにまとめておけば面接でも話しやすいです。

 

まとめ:自分の障害特性を理解すれば、面接の突破率アップ

企業(面接官)としては、「どんな特性があって、どんな配慮が必要か」が分からないことが一番困ります。自社で受け入れる余地があるのか、判断する材料がなければ、当然採用の見込みはありません。

自分で考えてみるのももちろん大事ですし必要ですが、客観的な視点で考えることの方が重要です。

話を聞く方が理解できる内容になっていないと、伝わりませんからね。

ですので、今回のようなセミナーに参加したり、障害者専門の転職エージェントに相談してアドバイザーと一緒に考えるなど、フィードバックを貰える機会は作った方が良いですね。改めて実感。

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