障害者の就職・転職

障害者の公務員就職・転職をおすすめしない理由【元公務員より】

2018年11月25日

目次

障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。

このニュースをみてびっくりしたんですが、「政府の障害者大量採用に備えて、障害者の間で民間企業への就職活動を控える動きが出ている」ようです。

政府は、法定雇用率の達成に向けて、来年末までに計約4千人の障害者を採用する方針を示している。これに対して、障害者の就職支援などをしている参考人からは、すでに障害者の間で民間企業への就職活動を控える動きが出ているとし、企業の障害者採用への影響を懸念した。

朝日新聞DIGITALより引用

「障害者4千人雇用」の話は1月前くらいから言われていましたが、担当者レベルではまだ影響は感じていないのですが、見えないところでは動きがあるようですね。

……今の時代、そんなに公務員になりたいと思う人がいるのでしょうか。実は私も元公務員ですが、障害者の公務員就職・転職はあまりおすすめできません。

 

公務員をおすすめできない理由その1.能力を発揮して貢献しても、相応の待遇(給料)が得られない

ネットで調べればいくらでもこの手の話は出てきますが、国家公務員はかなりの激務です。しかし公務員は年功序列のため「仕事ができれば給料が増える」というものではありません。

下記の表は国家公務員の給与(平成30年版)から引用したものですが、今回障害者採用の対象となるであろう国家一般職(いわゆるノンキャリア)の場合は、

「係員~地方機関課長」がキャリアの目安になるかと思います(障害者枠として採用された方が、どこまでキャリアアップできるのかは甚だ疑問ですが)。

国家公務員モデル給与例

民間企業のモデル年収(『労政時報』本誌より引用)と比べてみると、下記表の通りです。

年齢 国家公務員(一般) 民間企業(大卒) 民間企業(高卒)
25歳 309万円 380万円 344万円
35歳 448万円 584万円 508万円
50歳 686万円 913万円 845万円

やりがい云々の比較は置いておいて、「バリバリ仕事をして」「相応の給料が欲しい」という点で見れば、民間企業に軍配が上がります。

また、働き方(キャリアアップ)の選択肢としても、民間企業の方が豊富です。特定の仕事を深く追求するエキスパートになるという選択肢もありますからね。

いずれにせよ、バリキャリ(死語?)志向の方には、民間企業への就職がおすすめです。

【補足】
「民間企業の障害者採用枠は、仕事のやりがいもないし給料も低い」と考えている方は、仕事の探し方の問題だと思います。

私が実例ですが、「配慮を受けながら」かつ「健常者と同等の裁量と給与を得ながら」働いている障害者は沢山います。

もっとも、そういう求人(会社)を応募者目線で見分けることは不可能なので、障害者専門の転職エージェントを活用しましょう(私の利用体験記はコチラ)。

 

公務員をおすすめできない理由その2.国家公務員は激務。障害への配慮を得ながら長く働くのは難しい

「障害への配慮を得ながら、細く長く働いていきたい」

こんな方になら公務員がおすすめできるかというと、残念ながらそうではありません。前述の通り、国家公務員は激務だからです。

昨今話題の「障害者雇用水増し問題」は論外ですし「民間企業にはやれと言っておいて何だその言い草は(怒)」とは思うんですが。そのうえで言うなら、下記の言い分自体は的を射ていると思うんですよ。

国家公務員は拘束時間が長い上、国会対応など突発的な仕事もあり、「採用は難しい」との声も。業務の外部委託が進み、障害者が働く場の確保に苦慮している側面もあるという

産経新聞より引用

元々ハードな仕事なんです、国家公務員は。

「障害者が働きやすい環境をつくるため、職場で障害者に合理的な配慮をすることを求める指針や、障害者の雇用管理のあり方についてまとめたマニュアルも策定する」

と言ってますが、これまで数十年「障害者雇用って何?」というレベルで無視し続けてきた省庁が、指針とマニュアルで劇的に変わるなんて、本当にできるんでしょうか?

いきなり4千人雇用して、それぞれに配慮しながら働いてもらうなんて無理ですよ。

私個人的な経験をお話しすると、公務員の頃(地方公務員です)はサービス残業や持ち帰りで仕事をすることは当たり前、無給の(自由参加という名の半強制の)研修参加もしょっちゅうでした。

どこでも同じとは言いませんが、「公務員は楽な仕事」というのはイマドキ通じません。

 

公務員をおすすめできない理由その3.公務員は雇用保険の対象外。辞めても失業保険がもらえない

これ意外と知らない方も多いと思うのですが、公務員は雇用保険の対象外です。

代わりに退職時に「退職手当」がもらえますが、短期間(数年以内)で離職した場合、もらえる額は失業保険で受給できる額よりも少なくなります。

もちろん、就職するときから辞めることを考える方は少ないと思いますが、だからこそ、しっかりリスクも考えておく必要があります。

特に障害者の失業保険は手厚いので、この権利を手放してしまうのはもったいないです。

 

「公務員は安定している」は今の時代通用しない

公務員は税金から給料を支払われています。

その税金を納める人間が、50年後の日本では4千万人(約3割)減少します。いくら少子化対策を講じても、この流れは止められないでしょう。

加えて、税金を納めない高齢者の割合は年々高まっていきます。

実際問題、解雇されることはないのでしょうけれど、人口の減少に伴って公務員は新規採用されなくなり、給料は減らされるうえ仕事の負担は増すばかりという状況になることは目に見えています。

「ずっと国家公務員の仕事がしたかったけれど、採用されるチャンスがなかった」

今回募集される国家公務員を素直におすすめできるのは、こういう方のみです。

「公務員は安定してそう」「民間企業の障害者枠は給料が安いし」と安易に選択するのは全く賛同できません。

激務の上見合った給料は得られず、障害への配慮が得られるかも不透明であり、これまでの実績を踏まえると期待できない。

それならば、現時点で障害者への合理的配慮をしっかり提供しながら障害者雇用を進めている民間企業に就職・転職した方が、よっぽど「安定」していると思うのです。

 

2019年3月25日追記:「やっぱりなー」と言う感想しか出てこない。今後意識が高まってくれば良いのですが。

配慮不足の質問も…障害者採用、公平性に疑問の声 国家公務員試験(yahooニュース(西日本新聞)より引用)

面接で「できない仕事」ばかり聞かれたりするなど公平性や配慮の不足を指摘する声も上がっている。採用方法と同時に、いかに働きやすい職場をつくるかもなお課題となっている。

(中略)

男性は5カ所の機関のうち3カ所の面接で「できない仕事は何ですか」「健常者と比較して劣る点は」などとしつこく尋ねられたという。面接時間の半分が同様の質問だった所もあり、腹が立った。

国の障害者雇用2.31% 6月、4割の機関で基準未達(日本経済新聞より引用)

政府は19年中に約4千人の障害者を採用する計画。各機関は18年10月から19年6月までに計3444人を採用したが、職場環境になじめなかったり、体調が悪化したりするなどの理由で既に161人が離職した。

 

私が元公務員ということもあり、今回は辛口で、公務員を目指している方にとってはちょっとイヤな書き方をしてしまったかもしれません。

と言うより、公務員特有の古い体質(主に人間関係)が私個人にまっったく合わなかったというのでかなりマイナス印象強めなのは否めません(苦笑)。ご了承ください。

地方だと、「そもそもまともな民間の求人がほとんどない」というケースもあるでしょう。「公務員なんてなるべきじゃない」などとはもちろん言いません。

が、民間の就職活動(就労)に疲れ、公務員の良い面ばかり見て(期待)してしまうと、後で「こんなはずじゃなかった」となっちゃいます。

公務員を目指すとなると、かなりの時間と労力を費やすことになります。本当に公務員になりたいのか、挑戦するなら覚悟をもって臨むべきです。

 

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