「障害者が長く働くなら、民間企業より公務員の方が安心なのでは?」
そう考えて、公務員への就職・転職を検討している方もいると思います。
障害当事者のむじなです。私は地方公務員として働いた経験があり、民間企業への転職も経験しています。
その立場からお伝えしたいのは、「公務員だから働きやすい」「障害への配慮を受けながら無理なく働ける」とは、職場の中身を確認せずには言えないということです。
私が公務員として働いていた頃は、サービス残業や持ち帰りの仕事、自由参加という名目でも断りにくい無給の研修がありました。職場の人間関係や慣習も、私には合いませんでした。
もちろん、これは当時の私の勤務先での経験です。現在の公務員の職場や、障害者採用の状況すべてを表すものではありません。
それでも、「安定していそう」というイメージだけで選んで、後から「こんなはずじゃなかった」となることは避けてほしいと思っています。
この記事では、元地方公務員としての経験を踏まえ、公務員への就職・転職を決める前に確認しておきたい点をまとめます。
1.公務員だから、仕事の負担が軽いとは限らない
私が地方公務員として働いていた頃は、次のようなことがありました。
- 残業代がつかないまま仕事をする
- 職場で終わらなかった仕事を持ち帰る
- 自由参加とされながら、実際には参加を断りにくい無給の研修がある
正直なところ、私の経験から「公務員は楽だからおすすめ」とは言えません。
仕事そのものに加えて、職場の人間関係や昔からの慣習が合わなかったことも、公務員に対する私の印象に影響しています。
ただし、私が経験したのは地方公務員の特定の職場です。この経験だけで「国家公務員も地方公務員も、どこでも同じ」と判断するのは違います。
「配慮があります」から、もう一歩具体的に確認する
障害への配慮についても、職場の名前やイメージだけで判断しない方がよいと思います。
国家公務員については、人事院が合理的配慮の指針や、障害のある職員が働きやすいように設けられている制度を案内しています。人事院「障害者雇用関係」
そのうえで、応募先には、自分が困りやすい場面に沿って確認したいところです。
例えば、聴覚障害があって電話対応が難しいなら、「障害への配慮はありますか」だけでなく、「担当業務に電話対応がどの程度含まれ、どのような調整を相談できるか」と聞く。
口頭の指示だけでは整理しづらいなら、「指示を文章でも確認できるか」「優先順位を相談できる相手がいるか」を確認する。
制度があることと、自分がその職場で働き続けられることを、具体的につなげて考える必要があります。
これは民間企業を選ぶ場合も同じです。
2.給与やキャリアは「公務員か民間か」だけでは比較できない
「民間企業の障害者雇用は給料が低いから、公務員の方がよい」
そう考えているなら、決める前に、実際に応募できる民間の求人も見てほしいと思います。
一方で、「民間企業なら公務員より稼げる」と一律に言えるわけでもありません。
給与を比べるなら、年齢別のモデル年収だけではなく、自分が応募する仕事の条件で比べることが大切です。
| 比較する項目 | 確認したいこと |
|---|---|
| 採用時の給与 | これまでの職歴がどう評価され、いくらから始まるか |
| 賞与・手当 | 支給条件は何か。示された年収に何が含まれるか |
| 任用・雇用期間 | 期間の定めがあるか。更新などの条件は何か |
| 担当する仕事 | 経験を活かせるか。どこまでの責任を求められるか |
| 将来の働き方 | 昇給・昇任や、異動・転勤についてどう説明されているか |
「給与が高いけれど、負担が大きく続けられない仕事」と「希望する働き方で続けられる仕事」では、年収だけで優劣を決められません。
逆に、障害への配慮が必要だからといって、経験や専門性を活かす選択肢まで最初から諦める必要もないと思います。
私が実際に紹介された民間求人の例
2026年9月、私は在職中にatGPエージェントへ相談し、電話面談の約1時間後に9件の求人を紹介してもらいました。
その中には、募集年収に500万〜600万円の範囲を含む求人や、年収の下限が500万円以上の求人もありました。
ただし、これは私の経験や希望条件を踏まえて紹介された例です。誰でも同じ求人を紹介されるわけではなく、求人票の金額がそのまま採用時の年収になるわけでもありません。
それでも、「障害者雇用の民間求人は、低い給与の仕事しかない」と決めつける必要はないと感じました。
実際の募集年収と、仕事内容・働き方を比較する際の注意点は、次の記事で紹介しています。
障害者雇用で年収500万〜600万円の求人はある?実際に紹介された求人を見る
3.退職後の保障は、採用区分や適用される制度を確認する
就職するときから辞めることを考えるのは、気が進まないかもしれません。
それでも、体調や職場との相性によって働き続けることが難しくなった場合に、どのような保障があるかは確認しておきたいところです。
ここで、「公務員は全員、雇用保険に入らない」「辞めても失業時の給付を受けられない」と一括りにするのは正確ではありません。
例えば、横浜市の会計年度任用職員の募集には、雇用保険への加入が明記されているものがあります。横浜市の募集案内・社会保険欄
また、国家公務員には、退職後の失業状態など一定の条件を満たし、一般の退職手当等が雇用保険の失業等給付に相当する額に満たない場合などに支給される「失業者の退職手当」という制度があります。厚生労働省の制度説明
そのため、「短期間で辞めたら必ず民間より不利」とも言い切れません。
確認したいのは、自分が応募する採用区分について、次の制度がどうなっているかです。
- 雇用保険の加入対象になるか
- 退職手当の対象になるか、その条件は何か
- 退職後に失業した場合、利用できる制度や相談窓口はどこか
具体的な適用や支給額は、募集要項や勤務先の担当窓口で確認してください。すでに勤務していて退職を考えている場合も、退職前に確認しておく方が安心です。
公務員という選択肢が、自分に合う人もいる
ここまで注意点を書きましたが、「障害者は公務員になるべきではない」と言いたいわけではありません。
取り組みたい行政の仕事があり、仕事内容や勤務条件、必要な配慮について納得できているなら、公務員は十分に検討する価値のある選択肢だと思います。
住んでいる地域によっては、希望する条件に合う民間求人が少ないこともあるでしょう。
私自身、公務員時代の職場が合わなかったため、どうしても厳しい見方になります。ただ、その経験を、ほかの人にもそのまま当てはめるつもりはありません。
気をつけてほしいのは、民間での就職活動や仕事に疲れたときに、公務員のよい面だけを見てしまうことです。
「公務員になれば今の困りごとが解決する」と考える前に、その困りごとが応募先ではどう変わるのか、具体的に確認してみてください。
まとめ:肩書きの安定より、自分が働き続けられる条件を確認する
地方公務員として働いた私にとって、サービス残業や持ち帰りの仕事、断りにくい研修、職場の人間関係は、実際に経験した負担でした。
だからこそ、「公務員なら楽で安心」と考えて就職・転職することは、安易におすすめできません。
一方で、民間企業なら必ず働きやすいわけでもありません。
大切なのは、公務員か民間かという区分だけではなく、次の点が自分に合っているかです。
- 無理なく続けられる仕事内容・業務量か
- 必要な配慮を具体的に相談できるか
- 給与と仕事の負担に納得できるか
- 任用・雇用期間や、将来の働き方を理解できているか
公務員を目指す場合も、民間の求人を比較対象として知っておけば、選ぶ理由がよりはっきりすると思います。
民間企業の障害者雇用について、求人や配慮の情報を集める方法の一つが、障害者向け転職エージェントへの相談です。私が8社を利用した経験をもとに、比較する際のポイントを別記事にまとめています。
公務員を諦めるためではなく、自分に合う職場を選ぶために。イメージだけで決めず、具体的な条件を並べて考えてみてください。
※本記事の勤務経験は、筆者が過去に所属した職場でのものです。募集条件や制度の適用は、応募先の最新の募集要項・公式案内でご確認ください。