結論から言うと、障害者雇用の面接で信頼されるために、上司や先輩を持ち上げたり、失敗をすべて自分の責任にしたりする必要はありません。
大切なのは、事実に基づいて一貫した説明をすること、自分の役割と周囲の協力を切り分けて話すこと、そして障害特性や必要な配慮を職務との関係で具体的に伝えることです。
私は聴覚障害と発達障害があり、障害者雇用を含む転職を複数回経験してきました。現在は一般企業で人事労務に携わっています。面接を受ける側と、企業で働く側の両方を経験して感じるのは、面接で評価される「誠実さ」は、性格の良さを演出することではない、ということです。
※本記事は、私自身の経験と公的機関の公開情報をもとにした一般的な情報です。特定の回答で採用されることを保証するものではありません。実際の評価基準や実施できる配慮は、企業・職種・選考方法によって異なります。
面接は「誠実な人」を決める性格テストではない
厚生労働省は、公正な採用選考について、応募者の基本的人権を尊重し、職務に必要な適性・能力に基づいて評価することを基本としています。面接も、本来は曖昧な「人柄の良し悪し」だけで決めるものではありません。
一方で、面接官が「この説明は信頼できるか」「入社後も認識をすり合わせられるか」を見るのは自然なことです。ここでいう信頼は、愛想の良さや従順さではありません。私は、次のような行動として表れるものだと考えています。
- 応募書類と面接の説明に大きな矛盾がない
- 分からないことを、分からないまま断定しない
- できることと難しいことを分けて説明できる
- 失敗や退職理由を、事実と感情に分けて振り返れる
- 自分の成果だけでなく、周囲の協力も正確に説明できる
- 必要な配慮と、自分で行っている対処を具体的に伝えられる
つまり、面接で伝えたい「誠実さ」とは、善人らしく見せることではなく、相手が判断できる材料を、事実に沿って分かりやすく渡す姿勢です。
障害者雇用の面接で信頼につながる5つの伝え方
1.応募書類と面接の「軸」をそろえる
面接前には、履歴書、職務経歴書、障害についてまとめた書類の内容を並べて確認します。文章を一字一句暗記する必要はありません。そろえておきたいのは、次の軸です。
- これまで何をしてきたか
- なぜ入社・退職・転職を選んだか
- どの仕事で、どのような強みを発揮したか
- 何が難しく、どのように対処しているか
- 応募先で何をしたいか
過去と現在で考えが変わること自体は問題ではありません。「以前は○○と考えていましたが、△△の経験から、現在は□□を重視しています」と変化の理由を説明できれば、矛盾ではなく経験から得た学びになります。
2.「事実」「自分の受け止め」「今後」を分ける
退職理由や人間関係の話では、事実と感情が混ざりやすくなります。私は、次の順番で整理すると話しやすいと感じています。
- 事実:何が起きたか
- 対応:自分は何をしたか
- 結果:何が変わり、何が変わらなかったか
- 今後:次の職場で何を重視するか
たとえば、口頭指示が多い職場でミスが増えた経験なら、次のように説明できます。
複数の口頭指示が重なると、優先順位を取り違えることがありました。そこで、指示を復唱し、メモを共有して認識を確認するようにしました。一定の改善はありましたが、緊急時には対応が難しい場面が残りました。現在は、重要な指示をチャットやメールでも確認できる環境であれば、安定して業務を進められると整理しています。
これは前職を悪く言うことでも、自分だけを責めることでもありません。企業が知りたい「同じ状況が起きたとき、どう働けるか」に答える説明です。
3.失敗は「反省」より「対処と再発防止」を話す
失敗について質問されると、「自分の非を認めなければ」と考えて、必要以上に自分を責めてしまうことがあります。しかし、面接で見られているのは、深く謝れるかどうかだけではありません。
私は、次の4点を用意します。
- どのような条件で失敗が起きたか
- 自分に改善できる点は何だったか
- 周囲に相談・確認したか
- 現在はどのような方法で防いでいるか
以前、複数案件の締切管理が重なった際に、確認が遅れたことがありました。それ以降は、依頼を受けた時点で期限と優先順位を確認し、一覧表で管理しています。判断に迷う場合は、抱え込まず早めに確認するようにしています。
「もう絶対に失敗しません」と言い切るより、再発を減らす具体策を説明する方が、入社後の働き方を想像してもらいやすくなります。
4.チームの成果は「周囲の支援」と「自分の役割」を分ける
面接で上司や先輩を持ち上げたり、自分を必要以上に低く見せたりする必要はありません。大切なのは、仕事の成果を説明するときに、自分の役割と周囲の協力を正確に分けて伝えることです。
実際にはチームで取り組んだ仕事を、自分一人の成果として話すのは適切ではありません。一方、「すべて上司のおかげです」と自分の役割を消してしまうと、応募先は本人が何をできるのか判断できません。
| 避けたい伝え方 | 信頼につながりやすい伝え方 |
|---|---|
| 上司のおかげで、自分は何もしていません | 上司が方針を示し、私は手順の整理と進捗管理を担当しました |
| 成果はすべて自分が出しました | 同僚の協力を得ながら、私は○○を改善し、△△という結果につなげました |
次の順番で話すと、過度にへりくだらず、協働の姿勢も伝えられます。
- チームの目的
- 上司・同僚など周囲の役割
- 自分が任された役割
- 自分が工夫したこと
- 結果と学び
チームで手続きの遅延を減らす取り組みを行いました。上司が全体方針を決め、同僚が事例を集め、私は申請状況を確認できる一覧とチェック手順を作りました。その結果、確認漏れを減らすことができました。自分だけで完結させず、役割を分けて進める重要性を学びました。
この伝え方なら、他者の貢献を奪わず、自分の仕事も過小評価せずに説明できます。
5.障害特性と配慮は「仕事への影響」まで具体化する
障害者雇用の面接では、診断名だけでなく、仕事上どのような場面で影響が出るのか、どのような対処や配慮があれば働けるのかを整理しておく必要があります。
私は、次の型で準備します。
○○という状況では、△△が起きることがあります。現在は自分で□□という対処をしています。加えて、御社には××について相談させていただきたいです。この方法であれば、これまで安定して業務を継続できました。
たとえば聴覚障害であれば、「聞こえにくいです」だけではなく、会議、電話、口頭指示など場面ごとに影響と代替手段を説明します。発達障害であれば、「臨機応変な対応が苦手です」だけではなく、どのような条件で混乱し、指示の優先順位や手順がどの形で示されると対応しやすいかまで言葉にします。
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)は、採用選考時の配慮例として、障害に応じた情報保障、試験時間の調整、支援者の同席などを紹介しています。必要な配慮がある場合は、応募先に早めに相談してください。
面接で避けたい5つのパターン
1.経歴や障害特性を事実と異なる形に変える
自分をよく見せるために、担当していない仕事を担当したことにしたり、必要な配慮を「不要」と言ったりすると、入社後のミスマッチにつながります。伝え方を整えることと、事実を変えることは別です。
詳しくは、障害者雇用の面接で嘘はバレる?話を盛らずに強みを伝える方法でも整理しています。
2.退職理由を前職への批判だけで終える
前職側に大きな問題があった場合でも、「ひどい会社でした」で終わると、応募先は再現条件を判断できません。起きたこと、相談や改善の経過、次の職場に求める条件を分けて話します。
ただし、ハラスメントや差別を受けた人が、無理に「自分にも非があった」と言う必要はありません。自責を演出するのではなく、話せる範囲で事実を整理すれば十分です。
3.成果をすべて自分の手柄、または他人の手柄にする
面接では、謙虚さを演じる必要も、強く見せるために成果を独占する必要もありません。「周囲がしたこと」と「自分がしたこと」を分けて説明します。
4.苦手なことを隠す、または苦手なことだけを並べる
障害特性による難しさを隠すと、企業は必要な配慮を検討できません。一方で、「できないこと」だけが続くと、働き方のイメージを持ちにくくなります。
「難しい場面」「自分の対処」「相談したい配慮」「配慮がある場合にできること」を一組にして説明します。
5.用意した文章をそのまま読み上げる
回答を一字一句暗記すると、質問の聞き方が変わっただけで答えにくくなることがあります。覚えるのは文章ではなく、結論と事例の要点です。
メモが必要な場合は、面接前に使用できるか確認します。メモには長文ではなく、「結論」「事例」「結果」「配慮」などの短い見出しだけを書いておくと、会話になりやすくなります。
面接前に作る7項目の準備メモ
私は、少なくとも次の7項目を一枚にまとめてから面接に臨みます。
- 30秒程度の自己紹介:職歴、得意分野、応募先で活かせる点
- 転職理由:事実、試した対応、転職で実現したいこと
- 志望理由:応募先を選んだ理由、自分との接点
- 仕事の実例:役割、工夫、周囲との連携、結果
- 失敗の実例:原因、対応、再発防止
- 障害と配慮:影響が出る場面、自分の対処、依頼したい配慮
- 確認したいこと:仕事内容、指示・相談方法、配慮の運用、評価基準
回答を作ったら、「それは事実か」「応募書類と矛盾していないか」「相手が入社後の働き方を想像できるか」の3点で見直します。
緊張やコミュニケーションの難しさがある場合
面接で緊張することと、職務を遂行できないことは同じではありません。障害特性により口頭でのやり取りが難しい場合は、選考前に必要な方法を相談できます。
- 質問を一度に一つずつ伝えてもらう
- 聞き取りにくい場合は、筆談やチャットを併用する
- 重要な質問を文字でも示してもらう
- 回答を整理するため、少し待ってもらう
- メモの使用や、支援者の同席について事前に相談する
すべての希望がそのまま実施されるとは限りませんが、必要性と方法を具体的に伝えることで、応募先も検討しやすくなります。
よくある質問
面接では上司や先輩を褒めた方が有利ですか?
一律に有利になるとは言えません。重要なのは、上司を持ち上げることではなく、仕事における自分の役割と周囲の協力を正確に説明することです。自分を過度に下げる必要もありません。
前職で人間関係の問題があったことは話さない方がよいですか?
一律に隠す必要はありません。ただし、相手への批判だけで終わらせず、起きた事実、相談や改善の経過、今後必要な環境を整理して話します。心身への負担が大きい経験については、無理に詳細まで話す必要はありません。
障害について、どこまで話すべきですか?
診断や私生活のすべてを説明するのではなく、応募する仕事への影響、安定して働くための対処、企業に相談したい配慮を中心に整理します。配慮がないと就業継続が難しい条件は、入社前に認識を合わせることが重要です。
面接で回答に詰まったら不誠実に見えますか?
すぐに答えられないこと自体で、不誠実と決まるわけではありません。「少し考える時間をいただけますか」「質問は○○という理解でよいでしょうか」と確認し、落ち着いて答える方が、分からないまま話し続けるより正確です。
一人で面接対策をするのが難しい場合はどうすればよいですか?
ハローワーク、就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター、転職エージェントなどに、応募書類と面接回答の整合性を確認してもらう方法があります。転職エージェントを比較したい方は、2026年版・障害者向け転職エージェントおすすめ3社も参考にしてください。
まとめ:迎合ではなく、判断できる材料を正確に渡す
障害者雇用の面接で信頼につながるのは、「誠実な人」に見せる演技でも、上司や先輩への迎合でもありません。
- 応募書類と面接の軸をそろえる
- 事実、自分の対応、結果、今後を分けて話す
- 失敗は自責の強さではなく、対処と再発防止を伝える
- 周囲の支援と自分の役割を、どちらも正確に説明する
- 障害特性と配慮を、仕事への影響とセットで伝える
面接は、弱点を隠して通過するための場ではなく、応募者と企業が「この条件で一緒に働けるか」を確認する場です。自分を大きく見せる必要も、小さく見せる必要もありません。入社後の働き方を相手が判断できるように、事実を整理して伝えることが、私が考える面接での「誠実さ」です。