障害者雇用・転職

障害者雇用に資格は必要?MOS・簿記などの選び方と就職への活かし方

「障害者雇用の求人に応募しているけれど、なかなか決まらない。資格を取った方がよいのだろうか」

「未経験の仕事に挑戦したいけれど、何を勉強すればよいか分からない」

就職・転職活動で結果が出ないと、資格を増やせば状況が変わるのでは、と考えることがあります。私も、転職活動が思うように進まず、苦労した時期がありました。

私は障害当事者として転職を経験し、企業の障害者採用にも携わってきました。その経験から、資格は、学んだ内容や希望する仕事を伝える材料になると考えています。ただし、どの資格を取るかは、応募したい仕事と結びつけて考えることが大切です。

この記事では、資格取得を検討する前の確認、MOS・簿記・IT系資格の選び方、書類や面接での伝え方、受験に必要な配慮の相談について紹介します。

障害者雇用に資格は必要?まず求人の条件を確認する

資格が必要かどうかは、障害者雇用という枠だけでは決まりません。希望する職種と、個々の求人の応募条件を確認します。

求人票を読むときは、次のように分けると、学習の優先順位を考えやすくなります。

求人票の記載 最初に確認すること
資格が必須条件 必要な資格・級を満たしているか。不明なら応募先へ確認する
資格が歓迎条件 資格以外に、関連する経験やスキルを伝えられるか
資格の指定はなく、操作や経験が条件 求められる作業を、どこまで実際にできるか

例えば、「Excelで集計できる方」という求人と、「日商簿記2級必須」という求人では、準備する内容が違います。前者なら、どの機能を使った集計が必要なのかを確認し、操作の練習や経験の整理を進めます。後者なら、指定された資格が応募条件になります。

オープンポジションのように配属先を選考中に検討する求人でも、経験やスキルを問わないとは限りません。希望する業務と、現在できることを伝え、どの仕事を想定しているか確認しましょう。

資格を取る前に、就職活動のどこで困っているかを整理する

不採用が続いたことだけでは、「資格が足りない」とは判断できません。まず、求人の条件と、これまでの応募内容を照らし合わせます。

知識や操作を補う必要があるのか

希望する求人をいくつか読み、共通して求められている知識や操作を確認してみてください。

例えば、Excelを使う事務職を希望しているものの、表の作成や集計に不安があるなら、操作を学ぶことが具体的な準備になります。経理の仕事に関心があり、仕訳や会計用語をまだ理解していないなら、簿記の学習が候補になります。

その際、「資格に合格すること」と「仕事に必要なことを学ぶこと」の両方を考えます。求人で資格そのものが求められていなければ、必要な操作から練習する方法もあります。

すでにある経験が、伝わっていないのか

すでにExcelで集計しているのに、職務経歴書には「PC使用」としか書いていない。経費精算を担当していたのに、「一般事務」としか説明していない。こうした場合は、まず経験の書き方を見直せます。

何を担当し、どの機能を使い、どこまで自分で対応していたかを具体的にすると、応募する仕事との接点が伝わります。詳しい整理方法は、障害者雇用の職務経歴書の書き方で紹介しています。

勤務時間や必要な配慮、面接での説明に課題がある場合も、資格取得だけでは解決しません。選考段階ごとの見直し方は、障害者雇用の不採用理由と、書類・面接の見直し方を参考にしてください。

希望する仕事に合わせた資格の選び方

元々の経験を補いたいのか、新しい職種の基礎を学びたいのかを決めると、候補を絞りやすくなります。ここでは、事務・経理・ITに関わる資格を例に考えます。

MOS:Word・Excelなどの操作を学び、伝えたいとき

MOS(マイクロソフト オフィス スペシャリスト)は、Word、Excel、PowerPointなどの利用スキルを証明する資格です。Excel 365の一般レベルでは、表の管理、数式・関数、グラフなどを、実際にパソコンを操作する試験で確認します。MOS公式「Excel 365(一般)」

事務職を希望していて、Office製品の操作を基礎から学びたい場合に、学習目標の一つとして検討できます。

科目は、希望する仕事に合わせて選びます。集計が中心ならExcel、文書作成が中心ならWord、説明資料の作成が中心ならPowerPointというように、求人で使うソフトと作業を確認してください。最初から全科目や上級レベルを目指す必要はありません。

また、使用するソフトがOffice製品とは限らず、求められる操作も職場によって違います。「MOSを持っている」だけで終わらせず、「どのような表や資料を作れるか」まで説明できるようにしておくと、応募先と話をしやすくなります。

受験するバージョンに対応した教材と、練習に使うソフトの環境も確認しましょう。

日商簿記:経理や会計に関わる仕事の基礎を学びたいとき

経理補助などの仕事に関心があるなら、簿記の学習が候補になります。

日商簿記3級は基本的な商業簿記、2級は商業簿記に加え、原価計算を含む工業簿記などを扱います。学習範囲は、日本商工会議所の3級の案内と2級の案内で確認できます。

初めて学ぶなら3級の内容から取り組む方法があります。ただし、応募の目標は求人に合わせて決めます。「2級必須」の求人に3級で応募条件を満たすことはできませんし、「実務経験必須」なら資格を取るだけではその条件を満たしません。

私自身も、経理の実務経験がない時期に、面接で「経理はどう?」と配属先を打診されたことがあります。当時は、学生時代に取得した日商簿記3級を持っていましたが、それが打診につながったかどうかは分かりません。

経理の仕事を検討する場合は、簿記の級だけでなく、入力・照合・経費精算・決算など、担当する業務を確認しましょう。仕事内容や、未経験で応募するときの確認事項は、人事・経理の仕事と求人の選び方で紹介しています。

ITパスポート・基本情報技術者:学びたい範囲を分けて考える

ITパスポート試験は、仕事でITを活用する人に向けた共通的な基礎知識を扱う国家試験です。情報セキュリティやシステムなどの知識を、業務と結びつけて学びたい場合に検討できます。IPA「ITパスポート試験」

一方、基本情報技術者試験は、システムやソフトウェアを作る人材に必要な基本的知識・技能を対象としています。ITエンジニアの仕事を目指す場合などに、求人で求められる知識と照らし合わせて考えます。IPA「基本情報技術者試験」

どちらも、Excelなどの操作を実技で確認するMOSとは役割が違います。ITパスポートに合格したことだけで、プログラミングやPC操作ができると説明するのは適切ではありません。

資格名を増やすより、「担当したい仕事に、どの知識が必要か」を出発点にしましょう。

資格は、取得理由とできることをセットで伝える

資格欄に名称を書くだけでは、仕事への関心や、実際に使えるスキルまで伝わらないことがあります。

私が資格を就職活動に活かすうえで大切だと考えるのは、次の三つをつなげることです。

  1. なぜ、その内容を学んだのか
  2. 学習を通じて、何を理解し、何ができるようになったか
  3. 応募する仕事の、どの部分で活かしたいか

学習を進めた経験は、新しいことを覚えるためにどのように取り組んだかを説明する材料にもなります。「向上心があります」とだけ話すより、具体的な学習内容や練習方法を伝えてみてください。

例えば、取得済みの場合と学習中の場合では、次のように伝えられます。自分が実際に学んだ内容に合わせて、説明を組み立ててみてください。

MOSを取得した場合の説明例

事務職への転職を希望し、Excelの基本操作を整理して学ぶために、MOSのExcelを取得しました。学習では、表の作成、並べ替え、関数による集計を練習しました。実務経験はありませんが、求人にあるデータの整理・集計に関わりながら、社内の処理方法を覚えていきたいと考えています。

実務で使った経験があれば、その内容を追加します。自習や訓練でできたことは、そのように説明し、仕事として担当した経験とは分けます。

簿記を学習中の場合の説明例

経理補助の仕事に関心があり、現在は日商簿記3級の学習をしています。仕訳と帳簿の基本を学び、問題演習に取り組んでいます。まだ資格は取得していませんが、求人で求められている知識を身につけるため、学習を続けています。

未取得のものは、合格済みの資格と分けて「学習中」と伝えます。受験予定が決まっていれば、その時期を補足できます。

資格がある場合も、まだ学習中の場合も、できることを実際以上に広げて話す必要はありません。現在できることと、これから教わる必要があることを分けると、入社後の仕事を具体的に相談できます。

受験に配慮が必要な場合は、申込み前に相談する

障害によって、試験会場への移動、説明の聞き取り、画面の確認、入力操作などに支障がある場合は、受験方法を先に確認してください。

MOSの運営会社は、聴覚障害のある人への筆談対応や、対象となる障害に応じた試験時間の延長などを案内しています。利用条件や対応会場、申請が必要かどうかはサービスごとに異なります。オデッセイ「障がいのある方への支援について」

日商簿記では、受験する地域や方式に応じて、申込窓口へ確認します。例えば、東京商工会議所は、事前申請と審査に基づく受験上の配慮を案内しています。これは東京商工会議所の案内なので、別の地域やネット試験でも同じ手続きと考えず、受験する試験の窓口に相談してください。東京商工会議所「受験上の配慮(日商簿記検定試験)」

ITパスポートや基本情報技術者などについても、IPAが受験上の配慮の問い合わせ先を案内しています。試験区分によって対応が異なり、申込完了後では対応できない場合があります。IPA「障害をお持ちの方へ」

相談するときは、「どの場面で何が難しいか」「普段はどのような方法で対応しているか」を伝え、必要な書類と申請期限も確認しておきましょう。

応募と学習を、無理なく続けられる形にする

資格を取り終わるまで、すべての応募を止める必要があるとは限りません。今の経験で応募できる求人を探しながら、必要な知識を学ぶ進め方もあります。

講座や教材を選ぶ前には、学習内容に加えて、受験料・教材費・必要なソフトなどの費用、学習に使える時間、受験方法を確認してください。公式の出題範囲やサンプル問題を見てから、自習か講座かを考える方法もあります。

体調や仕事との両立が難しければ、目指す科目や級を絞ったり、受験時期を調整したりして構いません。短期間で合格することを、働けるかどうかの基準にする必要もありません。

一人では優先順位を決めにくい場合は、ハローワークや、利用している支援機関、転職エージェントに、実際の求人票を見せて相談してみてください。「何の資格がおすすめですか」だけでなく、「この仕事に応募するため、今の経験で伝えられることと、学ぶ必要があることを整理したい」と聞くと、相談を具体的にできます。

相談先の役割は、障害者の就労支援機関を目的別にまとめた記事で確認できます。

まずは、気になる求人を一つ選び、仕事内容、応募条件、自分がすでにできることを書き出してみてください。そこから必要な学習を決めれば、資格取得を、応募したい仕事へ近づくための具体的な準備にできます。

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