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発達障害の特徴は「主体性のなさ」?+キャリアコンサルティングの限界について

2019年7月26日

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聴覚障害+発達障害者、元人事マンのむじなです。

4月からキャリアコンサルタント養成講座を受講しはじめ、スクーリング(通学)もあとわずか。

理論を学び、ロールプレイを重ねてきましたが、どうにも違和感がぬぐえません。合格できなかったときの予防線を張っている(言い訳)みたいになるのでこれまで言わずにいたのですが……

発達障害者にキャリアコンサルタントは向いていないし、キャリアコンサルティングのアプローチは発達障害者には有効だとは思えないのです。

※この記事で言う「発達障害」は、主に自閉症スペクトラム(ASD)の特性がある方を想定しています(私のように)。というか「イチ発達障害当事者である私はこう感じる」というくらいでご理解いただけると幸いです。

今回は、私が発達障害当事者として抱いたキャリアコンサルティングに対する違和感をもとに、文献をあたっての所感を記しておきたいと思います。

 

発達障害の中核的特徴は、「主体のなさ(主体の弱さ)」にある

「発達障害者にはどうもキャリアコンサルティングのやり方は合わないのではないか」という疑問を感じつつ色々な書籍をめくってみてシックリきたのが以下の2冊です。

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発達障害への対処については療養や訓練が主流となっていますが、あえて心理療法のアプローチについて論じたのがこの2冊です。後者は「大人の発達障害」に焦点を当てたもの。

編者・著者である河合氏は、発達障害を「主体のなさ(自分のなさ)」として説明しています。

筆者たちは、発達障害の中核的特徴として、「主体のなさ」に焦点を当ててきた。主体がないがゆえに自他の分離や関係が困難になり、極端な場合には言語が成立しなくなる。主体がない、あるいは弱いから、たとえば同一態の保持や、こだわり行動が必要になる。つまりそれが主体を保つ代わりになるのである。

主体のなさの結果として、発達障害の人は関係をもてずに孤立している場合もあれば、逆に特に軽度の人はとても相手や状況に合わせてしまって生きている場合もある。

 

自分がないから、人間関係を構築することが苦手。自分がないから、相手や状況に合わせてしまう(流されやすさ・干渉されやすさ)。すべてが表面的で「普通のふり、適応しているふり」をして生きている。

この指摘、「そんなことはない!」と反発を覚える方もいらっしゃるかもしれませんが、私としてはすごく腑に落ちるものでした。

 

キャリアコンサルティングは相談者の「主体と成長力」を前提としている

キャリアコンサルティングでは、クライエント(相談者)の主体を尊重し、成長力を信じることを前提としています。

キャリアコンサルタントは、アドバイスをして解決に導くのではなく、「解決策を知っているのは相談者だけである」と考え、共感・受容の態度で接し、相談者が自分で答えを出すことを手助けするのが仕事です。

しかし、キャリアコンサルティングを受けたとしても、主体がない(弱い)発達障害者は探索すべき自己を持たない(弱い)ので、いつまで経っても表面的な場所から抜け出すことができません。

私は自分のことを話すのが苦手です。「事柄」を話すことはできても、そこに付随する思いや感情、意思を話すことができません。

この「経験に伴う思いや感情、意思」から相談者の「自己概念」を見つけていくのがキャリアコンサルティングの過程なのですが、

それを体験するためのロールプレイを受けても全く効果を実感することができないし、自分がコンサルタント役をやってみてもシックリきません。

講座のなかで「自分のことを理解している深さでしか、相手のことは理解できない」と言われるのですが、発達障害者は、理解すべき自己が非常に弱い。

よってキャリアコンサルティングの手法は発達障害者には効果が薄いし、発達障害者自身がキャリアコンサルタントになるのも不向きである、と(私は)考えました。

 

発達障害のキャリア相談には、別のアプローチが必要

「キャリアコンサルタント的な」アプローチ(受容・共感の態度で相談者の自己概念の探索を助ける)では上手くいきそうにありませんが、だからといって発達障害者に「キャリア相談」の場所が不要かというと、そんなことはありません。

「大人の発達障害」が増加していることからも分かる通り、特に軽度の発達障害者は、就職してからあるいは就職活動から、障害を自覚する(=どうしようも出来ない困難にぶち当たる)ことが多いです。

それから、これは精神障害者も同様ですが、目に見える身体障害とは違い「障害特性による困難」が「言い訳」や「怠け」によるものだと決めつけられ理解が得られないことも多いでしょう。

仕事・キャリアに関して安心して相談できる場は必要です。

これは現時点の仮説ですが、キャリアコンサルティングよりももっと具体的な解決志向のアプローチが必要なんじゃないかと考えています。

私含め、面識がある発達障害者は総じて、

  • 明確な「答え」を知りたい
  • けれども本音で語れる場が少ない
  • 具体的で的確な道筋がつけられれば上手くやれる

という方が多いと感じるからです。

これからキャリアコンサルタント、そして精神保健福祉士の資格取得を目指す中で、その後経験を積んでいく中で、自分なりの支援方法を模索していきたいと思います。

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