障害者の就職・転職

障害者の就職に関する目には見えない大都市間の格差(東京・大阪・名古屋)

目次

聴覚障害+発達障害者、元人事マンのむじなです。

これまでもブログの中で「大都市圏と地域の格差」については何度か取り上げてきましたが、今回は三大都市である「東京・大阪・愛知(名古屋)」の就職格差についてです。

自身の就職・転職活動の際は東京中心でやってきましたし(一度地元で挫折しましたが)、人事で採用に携わっていた時も関東圏以外の事情に特に精通していなかったため、「大阪・名古屋も(東京と)そこまで大きな差はないのかな」という印象でした。

実際、「障害者の職業紹介状況等」でもそんなに差はなかったので。

 

障害者の就職紹介状況等の集計(およびその欠陥)

「障害者の職業紹介状況等」は厚労省が取りまとめているもので、ハローワークを通じた障害者の就職件数等の状況を年度ごとに見ることができます。

その障害者の就職紹介状況等(平成29年度)結果の抜粋がこちら。※平成30年度も既に公表されています。

都道府県 就職件数
全国 97,814件
1.大阪 7,911件
2.東京 6,809件
3.愛知 5,489件

ここだけ見ると、大阪→東京→愛知とそれぞれ1,000件以上の就職件数の差がありますが、これは正確な数値とは言えません。

この統計には、一般企業への就職だけではく、就労継続支援A型事業所への就職件数が含まれています。

※A型事業所(+その他就労支援に関する機関)についてはコチラでまとめています。

 

障害者の就職紹介状況等の集計には「福祉的就労」が含まれている

A型事業所が良い/悪いという話ではなく、雇用契約を結ぶとはいえ、「一般企業での就労が難しい障害者が利用するための」「福祉サービスの一環」であるA型事業所への就職を、一般企業への就職とひとまとめにしてしまうのはおかしな話です。

ということで、A型事業所への就職件数を加味した結果が下の表です。

※各都道府県のA型事業所への就職件数は「関西大学人権問題研究室紀要 第76号(2018年11月) P.93」より引用

都道府県 就職件数(全体) 就職件数(A型を除く) 就職件数(A型) 就職全体に占めるA型の割合
全国 97,814件 76,923件 20,891件 約21.4%
1.大阪 7,911件 4,833件 3,078件 約38.9%
2.東京 6,809件 6,272件 537件 約7.9%
3.愛知 5,489件 3,710件 1,779件 約32.4%

 

障害者の就職件数上位を占めている大阪府、愛知県では、就職件数の実に3割~4割が「就労継続支援A型事業所への就職」であることが分かります。

 

東京と大阪・愛知の格差の原因は?(推測)

どうしてここまで差が出てしまうのでしょうか?

A型事業所を取り巻く歴史や実情については詳しくないので的外れかもしれませんが、ざっと思いつく限り挙げてみると、

大阪・愛知では、東京に比べて……

  1. 一般企業での就労が困難な障害者が多い
  2. ハローワーク(または外部の支援機関)がA型への就労を積極的に勧めている
  3. 障害者が働きたいと思えるような企業が少ない(「A型事業所で働く方が良い」と思われている)
  4. 障害者雇用に積極的な企業が少ない
  5. 企業が優秀層(または就労上の困難が軽度)の障害者しか採用してしない

……のでしょうか?

まず、A型事業所自体の数で比較しても、大阪・愛知と比べて東京は圧倒的に数が少ないです。

※平成29年社会福祉施設等調査 閲覧 第72表(基本票)を加工(e-statより)

都道府県 A型事業所施設数
東京都 103
大阪府 318
愛知県 237

 

また、ハローワークインターネットサービスで障害者の求人を検索してみると、やはり大阪・愛知ではA型事業所の求人が多くなっています(2020年2月19日現在)。

都道府県 求人数(全体) フルタイムの求人 パートタイムの求人 A型事業所の求人 求人全体に占めるA型の割合
東京 1,969件 869件 1,100件 60件 約3%
大阪 1,323件 399件 924件 364件 約27.5%
愛知 1,370件 427件 943件 258件 約18.8%

 

障害者の就職紹介状況等にせよ上記の求人数にせよ、ハローワークを通しての就職に関する集計なので、障害者向けの民間の就職・転職支援サービスが増えてきている現在ではそもそも把握できない情報が多いのですが……。

大阪・愛知では、東京に比べて……

  1. 一般企業での就労が困難な障害者が多い
  2. ハローワーク(または外部の支援機関)がA型への就労を積極的に勧めている
  3. 障害者が働きたいと思えるような企業が少ない(「A型事業所で働く方が良い」と思われている)
  4. 障害者雇用に積極的な企業が少ない
  5. 企業が優秀層(または就労上の困難が軽度)の障害者しか採用しない

1に大きな地域差はないでしょう。

2,3はどうでしょう?仮にそういう傾向があったとしても、ここまで東京と大阪・愛知間で差は出ないと思います。

ということは、4,5の影響が大きいのでしょうか。

仮にそうであるなら、東京でなら一般企業で雇用されうるチカラを持っている障害者でも、大阪・愛知(名古屋)ではA型事業所に就職せざるを得ないということです。

地方での就職の状況が厳しいことはもちろん分かっていましたが、大阪・名古屋圏でも、東京との格差は(私の)想像以上に大きいようです。

在宅勤務・サテライトオフィスなどの就労形態は増えてきていますし、クラウドソーシングなどの「自分で稼ぐ」という方法も出てきてはいますが、東京一極集中による地域格差を覆せるようなパワーはまだありません。

在宅勤務による障害者雇用はまだまだ増えてくると思うので、期待したいところではありますが……。あとはシンプルに(東京への)転居を伴う就職・転職でしょうか……誰でも実行できるという手段ではないですが。

 

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