地方に住みながら、東京など首都圏の障害者雇用求人を探したい。でも、「遠方からでも応募できるのか」「面談や面接のたびに上京する必要があるのか」「転居して生活を続けられるのか」と迷う方もいると思います。
私自身、関西に住みながら首都圏の企業に応募し、転職した経験があります。また、地方から首都圏への転職について、読者の方から相談を受けたこともあります。
この記事では、その経験と二つの相談事例を踏まえ、求人探しから面談・面接、転居までの進め方を紹介します。体験談はいずれも過去のもので、現在のサービス情報は公式案内に基づいて説明します。
地元で探すか、首都圏へ移るかを比べる
地元で希望に合う求人が見つからないとき、転居は選択肢の一つです。私も、地元での仕事探しがうまくいかず、転居を前提に都市部の求人を探して上京した経験があります。
ただ、転職先を考えるときは、次の方法を比べてみてください。
- 今の住まいから通える範囲で探す。 障害者雇用の求人に加え、仕事内容や必要な配慮が合う一般求人も検討する。
- 転居せずに働ける在宅勤務の求人を探す。 居住地の条件、出社の必要性、研修中の勤務場所を確認する。
- 転居を前提に首都圏などの求人を探す。 仕事の条件と、移動・引っ越し・転居後の生活にかかる負担を合わせて判断する。
障害のある人も一般求人に応募できます。ハローワークも、障害者向け求人と一般求人の両方への応募を案内しています。特定の専門資格がなければ一般求人に応募できない、ということではありません。応募先の仕事内容・募集要件と、自分が働くために必要な条件を確かめましょう。ハローワーク「障害のある皆様へ」
在宅勤務については、「在宅可」だけで転居不要とは判断できません。週に何日かの出社や、入社時の対面研修が必要な場合を想定し、実際の条件を確認します。
家族との生活、通院、地域の支援などを考えると、転居が難しい人もいます。地元での仕事探しを続けながら首都圏の求人を調べ、条件が合う場合に転居を検討する進め方もあります。
首都圏の求人に応募する前に整理すること
遠方から応募するときは、採用された場合にその勤務地で働ける見通しを伝えます。応募前に、次の点を整理しておくと、企業や紹介担当者との相談を進めやすくなります。
- 希望勤務地と、通勤できる範囲
- 転居する意思があるか、どのような条件なら検討できるか
- 在職中の退職準備や住居探しを含め、入社までに必要な期間
- 対面面接に参加できる日程と、移動に使える予算
- 仕事内容、勤務時間、収入、障害への配慮などの優先順位
まだ転居を決めていないなら、決定したふりをする必要はありません。たとえば、次のように現在の考えを伝えられます。
現在は地方に住んでいますが、仕事内容と勤務条件が合えば、内定後の転居を検討しています。入社までに必要な期間を相談したいです。対面面接が必要な場合は、移動の手配があるため、日程を早めにご相談いただけると助かります。
これは伝え方の例です。転居の可否や参加できる日程は、自分の状況に合わせて伝えてください。
選考への参加や継続勤務に必要な配慮も、準備に時間がかかるものは早めに相談します。伝える時期や例文は、障害者雇用の配慮事項を伝えるタイミングで詳しく紹介しています。
求人探しと面談は、地方に住みながら進められる
ハローワーク・企業への直接応募・エージェントを組み合わせる
地元の求人を探す場合も、首都圏への転職を目指す場合も、応募経路は一つに限定する必要はありません。ハローワークの求人、企業の採用ページ、転職サイト、障害者向け転職エージェントなどで、希望する勤務地と条件に合う求人を探します。
ハローワークでは、障害のある人に向けた職業相談や求人紹介を行っています。インターネットで検索する場合は、求人区分の「障害のある方のための求人」を選ぶと、対象求人を絞り込めます。ハローワークの公式案内
働き方や生活面の準備から相談したい場合は、障害者の就労支援機関を目的別に整理した記事も参考にしてください。
エージェントとの面談のために、必ず上京する必要はない
現在は、現地のオフィスへ行かずに面談できるサービスがあります。
- atGPエージェントは、オンライン・電話・対面から転職相談の方法を選べると案内しています。atGPの公式案内
- dodaチャレンジは、電話・オンライン面談・メールを中心に相談を実施し、視覚・聴覚に障害がある人の相談にも応じるとしています。dodaチャレンジの公式案内
atGPは、東京・大阪・愛知以外に住む人も利用できると案内しています。ただし、紹介できる求人数は変わる場合があります。atGP「居住地域についてのFAQ」
登録前後に、希望勤務地の求人を相談できるか、自分に合う面談方法を利用できるかを確認しましょう。聴覚障害などにより音声だけの面談が難しい場合は、文字でのやり取りなど、必要な対応を具体的に相談してください。
エージェントとの面談がオンラインでできても、企業の採用面接が同じ方法で行われるとは限りません。企業ごとの面接方法と、現地へ行く必要がある選考段階を確認します。
求人を紹介されなくても、理由を居住地だけに決めつけない
エージェントから求人を紹介されない場合、その理由が居住地にあるかどうかは、返答の内容を確認しなければ分かりません。希望職種、経験、勤務時間、年収、必要な配慮、その時点の求人などが関係します。
atGPも、取り扱う求人の状況によっては、転職相談や求人紹介が難しい場合があると案内しています。atGPの公式案内
紹介が難しいと言われたら、可能な範囲で理由を尋ね、希望勤務地や転居の考えが正しく伝わっているかを確認します。そのサービスで紹介を受けられなくても、ほかのエージェントや直接応募、ハローワークで探す余地はあります。
私の体験:移動の負担を減らすため、面談・面接の予定をまとめた
私が関西に住みながら首都圏の企業に応募したときは、エージェントとの面談から2か月強で内定に至りました。面談と面接のために東京へ行ったのは、計5回ほどです。
当時は、聴覚障害があり、利用した方法では電話での面談が難しかったため、エージェントとの面談にも東京へ行きました。一度の移動で複数の面談・面接を受けられるよう、担当者に日程を相談していました。
私の場合は、このように予定をまとめて移動時間や費用を抑えました。現在なら、まずオンラインで対応できる段階を確認し、現地での選考が必要な場合に移動を考える方法もあります。
対面面接が必要なときは、次の点を相談すると準備しやすくなります。
- 別の企業の面接と同じ日や近い日に調整できるか
- 移動時間に加え、休憩や面接準備の時間を確保できるか
- 面接に必要な配慮を事前に準備してもらえるか
- 交通費・宿泊費の支給があるか、ある場合の条件は何か
日程をまとめられるかは、各企業の選考予定にもよります。また、一日に複数の面接を入れることが体調面で負担になる人もいます。私の訪問回数や活動期間を目標にせず、無理なく参加できる予定を組んでください。
地方から首都圏への転職について寄せられた二つの相談
求人を紹介されず、応募も通らなかったケース
以前、地方の企業で障害者雇用として働く読者の方から、収入を上げるため東京の企業へ転職したいものの、エージェントに「紹介できる求人がない」と言われ、転職サイトからの応募も通らないという相談を受けました。
私は、複数のエージェントを検討することや、東京で働く場合の通勤・転居の見通しを応募時に伝えることを提案しました。
ただし、紹介や書類選考に至らなかった理由は確認できていません。その後の選考結果も把握していません。この相談は、遠方在住が不採用の原因だったと示すものではありません。応募時に、働き始めるまでの見通しが伝わっているかを確認するための例として紹介しています。
紹介に苦労しながら、納得できる内定を得たケース
別の読者の方からも、地方に住みながら首都圏で仕事を探すことについて相談を受けました。この方は発達障害があり、複数のエージェントに登録したものの、紹介を断られたり、希望する求人がなかなか見つからなかったりしていました。
私は、自分の転職経験を伝え、面談や面接の予定をどう調整できるか、担当者と相談することを提案しました。
後日、その方から内定の報告をいただきました。雇用条件にもご本人が納得し、入社を決めたとのことでした。掲載の了承をいただいた当時のやり取りを、個人が特定されないよう要約しています。
私の助言が内定につながったとは判断できませんが、最初に紹介を受けにくくても、結果として納得できる内定を得た人がいた、という個別の事例です。
入社を決める前に、雇用条件と転居後の生活を確認する
転居を伴う転職では、提示年収だけで判断せず、生活を続けられるかまで確認します。
雇用条件と、実際の働き方
- 雇用形態、契約期間、更新の条件
- 給与・賞与の内訳と、想定年収の前提
- 正社員登用制度がある場合、その基準・時期・実績
- 勤務地、出社頻度、勤務時間、通勤にかかる負担
- 必要な配慮を、配属先でどのように実施するか
「正社員登用あり」だけで、将来の登用を前提に生活設計をするのは避けたいところです。契約社員からの入社を検討する場合は、正社員登用を目指す求人の確認事項も参考にしてください。
引っ越し費用と、毎月の生活費
面接の交通費・宿泊費に加え、住居の初期費用、引っ越し代、家具や生活用品などを見積もります。転居後は家賃、通勤、食費、医療費などを考え、収入との釣り合いを確認しましょう。
企業に転居支援や住宅手当がある場合も、対象条件、支給時期、自己負担額を確認します。最初の給与が支払われるまでの生活費も見込んでおくと、準備に必要な金額を把握しやすくなります。
私は、仕事が決まる前に転居して支出を増やすより、まず今の住まいから応募を進め、入社条件と入社日を確認してから転居を具体化する方法を勧めます。
入社までの期間と、通院・支援の継続
内定後すぐに引っ越せるとは限りません。退職準備、住居探し、引っ越しに必要な期間を踏まえ、入社日を相談します。
継続して通院している場合は、転居先での受診や紹介状の準備について主治医に相談しましょう。福祉サービスや就労支援を利用している場合は、転居後も必要な支援を受けられるか、現在の窓口と転居先の窓口に確認しておきます。
地方から首都圏への転職を考えるときは、応募先を増やすことと、入社後に無理なく働けることの両方が大切です。地元で働く選択肢も含めて比較し、希望勤務地、面接への参加方法、転居と生活の見通しを具体的にしていきましょう。
