「障害者雇用に応募しても、なかなか受からない」
「書類は通るのに、面接になると落ちてしまう」
「不採用通知だけでは、何を直せばよいのか分からない」
不採用が続くと、自分の障害や経歴をすべて否定されたように感じることがあります。私も、全力で臨んだ選考で不採用になり、自分の人格まで否定されたようなショックを受けたことがありました。
私は聴覚障害と発達障害があり、障害者雇用での転職活動を複数回経験しています。過去には障害者採用コンサルタントと企業の障害者採用担当を経験し、現在も一般企業の人事労務で働いています。
応募者と採用側の両方を経験して感じるのは、不採用の結果から、自分の能力や人格を丸ごと評価し直す必要はないということです。選考には、自分で準備できることに加え、他の候補者や採用計画など、応募者には分からない要素もあります。
この記事では、書類選考、適性検査・実技、面接、最終面接で見直せる点を整理します。不採用理由を特定できなくても、次の応募に向けて確認できることはあります。
不採用理由は、通知だけでは分からないこともある
不採用通知に詳しい理由がなく、問い合わせても個別の評価までは分からないことがあります。その場合、「この回答が悪かった」「障害の説明をしたから落ちた」という考えは、確認できた理由ではなく、自分の推測です。
選考結果に関わり得る要素には、例えば次のようなものがあります。
- 求人で必要とされる経験と、自分の経験との接点
- 書類や面接で、経験や働き方をどこまで具体的に伝えられたか
- 勤務時間、勤務地、入社時期などの条件
- 必要な配慮と、実際の仕事内容・職場環境との関係
- 他の候補者との比較や、企業の採用人数・配属計画
これらは、個々の不採用理由を言い当てるための一覧ではありません。次に何を確認するかを考えるための視点です。
採用枠や他の候補者は、自分だけでは変えられません。一方、求人の選び方、書類の内容、面接での説明は見直せます。私は、この二つを分けて考えることが、必要以上に自分を責めずに転職活動を続けるうえで大切だと思っています。
厚生労働省も、採用選考は応募者の基本的人権を尊重し、求人の職務に必要な適性・能力に基づいて行うことを基本としています。採否は、その求人で働くうえでの評価であり、人としての価値を決めるものではありません。厚生労働省「公正な採用選考の基本」
まず、どの選考段階で落ちたかを整理する
不採用が続くときは、すべてを一度に直すより、どの段階で止まっているかを確認すると、準備を絞りやすくなります。
| 不採用になった段階 | 最初に見直したいこと |
|---|---|
| 書類選考 | 応募条件、経験の伝わり方、勤務条件・配慮事項の書き方 |
| 適性検査・実技 | 検査の形式、時間配分、操作・受検環境、必要な配慮 |
| 面接 | 職歴・退職理由・志望動機のつながり、障害と働き方の説明 |
| 最終面接 | 入社後の役割、希望条件、入社時期、それまでの説明との整合性 |
企業によって選考の順番や評価方法は異なります。検査の後に落ちたからといって、検査結果だけが原因だとは限りません。
応募した職種や条件が違えば、通過率も単純には比べられません。同じ段階で不採用が続いているかを、見直す場所を探す手掛かりにします。
書類選考で落ちるときに見直したいこと
求人の条件と、書類に書いた経験がつながっているか
最初に求人票を読み直し、必須条件と歓迎条件を分けます。職務経験、資格、PCスキルに加え、勤務時間、出社頻度、勤務地、手帳の所持など、応募条件を確認してください。
条件を満たしていても、その経験が書類から分からなければ、応募先は判断しにくくなります。職務経歴書の冒頭に、応募する仕事に関係する経験を簡潔にまとめる方法があります。
配属先を応募後に検討するオープンポジションでも、「何でもできます」と広く伝えるだけでなく、経験のある業務、得意な作業、希望する役割を示すと、具体的な仕事との接点を相談しやすくなります。想定される業務が分からなければ、企業や紹介担当者へ確認しましょう。
業務名だけでなく、担当範囲や工夫が伝わっているか
「一般事務」「データ入力」「Excelを使用」とだけ書くと、担当した仕事の内容が十分に伝わりません。
- 何を、どのような頻度で担当したか
- どのソフトや機能を使ったか
- 自分が判断・対応した範囲はどこまでか
- 正確さや納期を守るために何を工夫したか
例えば、「Excelで集計を担当」より、「月次データをExcelで集計し、提出前に元データと件数を照合していた」と書く方が、実際の作業を想像しやすくなります。これは記載方法の例です。実際に担当した内容に合わせ、確認できない件数や成果は書かないようにします。
基本情報の整理は障害者雇用の履歴書の書き方、担当業務のまとめ方は職務経歴書の書き方で確認できます。
必要な配慮と希望条件を、具体的に書けているか
「配慮をお願いします」「体調に不安があります」だけでは、どの場面で何が必要なのかが伝わりません。
仕事を続けるために欠かせない条件と、実施方法を相談できることを整理し、理由とともに書きます。例えば、通院による勤務調整が必要なら、頻度や必要な時間帯、日程を調整できる範囲を示します。
選考に通るために、必要な配慮を減らしたり隠したりする必要はありません。 仕事内容と照らし合わせ、継続して働ける条件を確認するために伝えます。
適性検査・実技選考で落ちるときに見直したいこと
検査の形式と、準備の内容が合っているか
適性検査には、能力検査、性格検査、事務処理、PC操作、企業独自の筆記試験などがあります。案内された形式に合わせて、操作方法や時間配分を確認します。
検査名、所要時間、受検方法、使える道具が分からなければ、企業や紹介担当者へ質問してください。性格検査では、採用されそうな人物像を作るより、自分の実際の傾向に沿って答えます。
実技では、速さだけを意識してミスを増やさないよう、指示の理解や確認手順も見直します。検査結果の扱いや選考全体での比重は企業によって違うため、手応えだけで合否を決めつけないことも大切です。
詳しい準備方法は、障害者雇用の適性検査・筆記試験対策にまとめています。
受検するために必要な配慮を相談できているか
音声による説明を文字でも確認したい、問題の文字を拡大したい、入力方法や休憩について相談したいなど、通常の受検方法では支障が生じる場合があります。
募集・採用時の合理的配慮は、応募者からの申出を受け、企業が本人と話し合い、過重な負担にならない範囲で必要な措置を講じる仕組みです。具体的な方法を自分で提案することが難しくても、何に困るのかを伝えて相談できます。厚生労働省「合理的配慮指針」
準備に時間がかかる対応もあるため、検査の案内を受けたら早めに連絡します。希望した方法が実施できない場合も、困りごとを共有し、別の対応を話し合います。
面接で落ちるときに見直したいこと
職歴と退職理由、次の職場を選ぶ理由がつながっているか
転職回数や短期離職が気になる場合は、回数だけを取り繕うより、当時の事情と、次に確認したい条件を整理します。
担当していた仕事、継続が難しくなった事情、次の職場で必要な条件を順に話すと、説明を組み立てやすくなります。実際に行った対処があればそれも伝え、対処する余地がなかった場合は当時の事情を説明します。
以下の例文は説明の組み立て方を示すもので、筆者の職歴を再現したものではありません。自分の経験に合う内容に置き換えてください。
前職では担当変更後、口頭で複数の指示を受ける場面が増え、優先順位の確認が難しくなりました。メモと復唱で対応しましたが、指示方法の調整には至らず退職しました。次の職場では、重要な指示を文字でも確認できる環境を希望しています。
退職したことを正当化し続けるためではなく、どのような仕事や環境なら続けられるかを伝える説明にします。
障害名だけでなく、仕事への影響を説明できているか
同じ診断名でも、支障が生じる場面や必要な配慮は人によって違います。仕事との関係が分かるよう、次の内容を整理します。
- どの場面で、どのような支障が生じるか
- 自分で行っている対処は何か
- 職場に依頼したい対応は何か
- その環境があれば、どの仕事を進められるか
例えば、次のような説明です。
複数の依頼を口頭で同時に受けると、優先順位を取り違えることがあります。自分でも依頼を一覧にし、期限を確認しています。優先順位が変わる場合に、最優先の業務を文字でも確認できれば、順番を整理して対応できます。
自分で対処できる範囲と、職場の対応が必要な範囲を示すと、実際の働き方を相談しやすくなります。自分だけで解決できないことまで引き受ける必要はありません。
伝える時期や確認方法は、配慮事項を面接・オファー面談で伝える方法も参考にしてください。
体調や通院と勤務の関係を、事実に沿って伝えられているか
体調や通院が勤務に関係する場合は、「大丈夫です」だけで終わらせず、現在続けられている勤務時間、通院の頻度、必要な調整、変化に気づいたときの対応を説明します。
就労経験が少なければ、訓練や学習などで続けられている活動を伝える方法もあります。ただし、それをそのまま実際の勤務と同じ実績として扱わないようにします。
「絶対に欠勤しません」「体調は悪化しません」と約束する必要はありません。仕事との関係を説明するために必要な範囲で、現在の状況を伝えます。
志望動機に、応募する仕事との接点があるか
障害への配慮や働きやすさは、大切な応募理由です。そこに、これまでの経験、担当したい仕事、その求人を選んだ理由を加えると、応募先との接点が伝わります。
前職では、データ入力と照合を担当し、正確さを保つための確認手順を工夫してきました。御社の求人では、その経験を生かしながら集計業務にも担当を広げられると考えました。また、業務指示をチャットでも共有すると伺い、自分の特性に合う働き方だと感じ、応募しました。
求人票や面接で確認していない条件を、あるものとして話さないことも大切です。分からない点は質問して確認します。
質問への答えが、相手に伝わっているか
経験をすべて話そうとすると、質問への答えが後回しになることがあります。まず質問への答えを伝え、理由と具体例を一つ加える形で練習してみてください。
内容を整理することと、表情や話し方を無理に変えることは別です。視線、声量、話す速さなどには、障害特性や使うコミュニケーション手段が影響します。それらだけを「落ちる人の特徴」と決めつける必要はありません。
質問の文字表示、筆談、回答を整理する時間などが必要なら、面接方法について事前に相談します。質問への備えは面接で聞かれること・頻出質問、仕事内容や配慮を確認する質問は逆質問の例文で確認できます。
最終面接の不採用や「不採用フラグ」をどう考えるか
最終面接で落ちても、すべての準備を否定しなくてよい
最終面接まで進んで不採用になると、「最後に大きな失敗をしたのでは」と考えたくなります。しかし、結果だけでは、どの段階の評価が影響したかまでは分かりません。
採用枠に対して複数の候補者が残っている場合や、入社時期、担当業務、勤務条件などを最終的に調整する場合も考えられます。一つの求人で選ばれなかったことから、自分の経験がどの会社でも通用しないと結論づける必要はありません。
まずは、前の面接と説明が食い違っていなかったか、希望条件と相談可能な範囲を伝えられたか、入社後に担いたい仕事を具体的に話せたかを確認します。
面接時間や表情だけで合否を決めつけない
面接が短かった、面接官の反応が薄かった、逆質問の時間がなかったといった出来事だけでは、合否は分かりません。反対に、会話が弾んだから採用されるとも限りません。
正式な連絡を待つ間は、覚えている質問と回答を記録し、次の準備に使います。案内された結果連絡の期限を過ぎている場合は、企業や紹介担当者へ状況を確認します。
不採用が続くときの振り返り方
面接の後に、事実と推測を分けてメモする
不採用通知が来てから思い出そうとすると、やり取りの細部は曖昧になりがちです。面接の後、無理のないタイミングで要点を残します。私も、面接後には印象に残った質問と自分の回答をメモしていました。
- 応募先と選考段階
- 聞かれた質問と自分の回答
- 説明された仕事内容・勤務条件
- 答えに詰まったこと、伝えられたこと
- 次に確認したいこと
「面接官が無表情だった」は観察したことですが、「無表情だったから落ちた」は推測です。「配慮を説明したが、必要になる業務場面を話せなかった」は、自分の説明について振り返れることです。
企業から理由を聞けた場合も、企業が伝えた内容と自分の解釈を分けて残します。「総合的に判断した」という回答から、自分に不利な理由を追加で想像し続ける必要はありません。
できたことを残し、変える点を絞る
不採用になるたびに、書類、志望動機、配慮事項、希望職種をすべて変えると、準備の負担が大きくなります。具体的に話せた経験や、正確に伝えられた条件まで消す必要もありません。
次の応募では、「職務経歴書の冒頭に関連経験をまとめる」「退職理由の後に、次の職場で確認したい条件を加える」など、見直すことを一つか二つ決めます。
応募数を増やす場合も、仕事内容や継続勤務に必要な条件を確認してください。不採用が続いたからといって、働き続けられない条件の求人まで応募対象にする必要はありません。
求人票・書類・面接のメモを、一緒に見てもらう
一人で整理しにくいときは、支援機関の担当者や、応募を仲介している転職エージェントに相談する方法があります。
「なぜ落ちたと思いますか」と理由を推測してもらうだけでなく、次のように聞くと、準備を見直しやすくなります。
- この書類から、求人に関係する経験が分かるか
- 退職理由と今回の志望動機のつながりは伝わるか
- 障害による支障と必要な対応を、具体的に説明できているか
相談先に迷う場合は、障害者の就労支援機関を目的別にまとめた記事を確認してください。民間の求人紹介サービスを検討したい場合は、私が利用した障害者向け転職エージェントの比較も参考になります。
疲れているときは、応募のペースを調整する
振り返ることが大切でも、不採用理由を考え続ければ答えが出るとは限りません。分かる範囲を確認したら、その日の振り返りを終えて構いません。
準備や面接が重なって負担が大きいときは、同時に進める応募を減らしたり、求人確認と書類の見直しだけに取り組む期間を作ったりする方法があります。
私も不採用で強く落ち込んだ経験があるからこそ、結果を受け取ってすぐに気持ちを切り替えられなくてもよいと思っています。応募を休むことも含めて、続けられるペースを考えてください。
障害を理由に不当な扱いを受けたと感じたとき
障害者雇用促進法では、募集・採用を含む雇用の場面で、障害があることを理由とした不当な差別的取扱いが禁止されています。合理的配慮の提供も、過重な負担にならない範囲で事業主の義務とされています。厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」
不採用という結果だけで差別だったと判断することはできません。ただし、障害があることだけを理由に応募を断られた、必要な配慮を申し出ても話し合いがなかったなど、具体的なやり取りに疑問がある場合は、「運が悪かった」と片付けずに相談できます。
求人票、企業とのメール、依頼した配慮と企業の回答、面接での発言、不採用通知などを残しておきます。そのうえで、ハローワークや都道府県労働局の職業安定部へ相談してください。厚生労働省「働く障害のある方へ」
不採用に関するよくある質問
不採用理由を問い合わせてもよいですか
問い合わせることはできますが、詳細な回答を得られるとは限りません。転職エージェント経由で応募した場合は、まず担当者へ確認します。
例えば、「今後の応募に向けて見直せる点があれば、差し支えない範囲で教えていただけますか」と伝える方法があります。理由が分からない場合も、求人と応募書類の接点や、面接で説明しきれなかった点を見直せます。
不採用通知には返信が必要ですか
企業から返信を求められていなければ、必ず返信しなければならないものではありません。お礼を伝えたい場合は、結果を受け取ったことと、選考の機会への感謝を短く伝えれば十分です。
一度落ちた企業へ再応募できますか
企業や求人の再応募に関する方針を確認してください。再応募できる場合は、別の募集職種との接点や、新たに得た経験など、前回から変わった点を整理します。
前回の不採用理由が分からなくても、今回の求人と自分の経験・条件が合うかは改めて確認できます。再応募の可否や時期が不明なら、採用窓口や紹介担当者へ問い合わせましょう。
