障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。
昨日、私が勤めている東京近郊では、朝から強風に見舞われました。聴覚障害の私にとって、平日の強風や大雨、雪は天敵です。
私は毎日電車で通勤しています。日常生活ではなんら問題ありませんが、車内アナウンスが聞こえないのが難点です。
「遅れている」「事故があった」ということくらいは、車内のモニターに映し出されますし、スマホを使えば分かりますが、それ以上の情報は把握できません(JR東日本のアプリでは、かなり詳細な情報が分かるみたいですね。JR使いませんが)。
今後の運行の見通しは?振替輸送(運行不能区間を他の路線で移動する)は行われるのか、どこの駅からどう行けばいいのか……??
通勤電車(ラッシュ)については多くの方がストレスを抱えていると思いますが、私はいつも「今日は通常運行してくれるのか」と更なるストレスを抱えています。
何年も電車に乗っていても、未だに慣れません。ほんの些細なことですが、こうも毎日続くと、障害者はなぜこんなにも生き辛いのか、とたまに考えてしまいます。
障害者が生き辛いのは本人の問題?障害の医学モデルと社会モデル
障害者がなぜ生き辛いのか。その考え方は大きく二つに分類されます。
過去長く定説であったのが「医学モデル」と呼ばれるものです。医学モデルとは、「障害はその人個人の中に(原因が)あり、本人がその障害を取り除かなければならない(克服しなければならない)」という考え方です。
上記の例でいうと、「聞こえていない人(私)に問題がある。私が何らかの手段を用いて、スムーズに通勤できるよう努力すべき」ということです。
それに対し、近年のスタンダード、国連の障害者権利条約で採用された「社会モデル」は、「障害者が生き辛いのは個人の問題ではなく社会全体の問題であり、社会全体でそれを解決する必要がある」という考え方です。
上記の例でいうと、「聞こえない人(私)がいるにも関わらず、音声でしか情報を伝えられていない現状を改善する必要がある」ということです。
「聞こえないものは聞こえない」し、地震などの突発災害の際は、いくら事前に準備をしても対応が人より遅れてしまいます。
障害当事者としては、当然「社会モデル」を支持しますが、とはいえ、待っていても現状は一向に改善する気配がありません。
生き辛さを解消するには、「できる・得意を磨くこと」と「環境を変えること」
社会全体はそう簡単には変わりませんので、生き辛さを解消するためには、「できる・得意を磨くこと」と「今いる環境を変える」ことが大切だと思います。
1.できる・得意を磨く
業務上、私は電話応対を免除してもらっています。
配慮してもらえるのはありがたいことなのですが、それだけで問題が解決するわけではありません。
電話応対を免除されても、「地方の事業所や社外の関係者との連絡や調整等」が必要なことに変わりはないからです。
そうすると、どうしても(電話を使える)人と比べると、コミュニケーションの質と量が劣ります。
たとえば、「音声・文字同時変換のテレビ電話システム」があればこの問題は解決しますが、今ない物の話をしても仕方がないです(こういうものが必要だと主張していくことはもちろん大切ですが)。
そうすると、できないことは一旦置いといて、できること・得意なことでカバーするしかありません。
私の場合は、メールでのやりとりが多くなりますので、「文章で伝えるスキルを磨く」ことを意識しています。
たとえば、
- 受け手の「業務内容の理解度」を考慮して、一度で正しく伝わる内容にする
- 考え得る選択肢を漏れなく、ダブりなく書く
- 相手にいかに「動いてもらうか」を考える(相手が動くメリットを伝える、相手に負担のない方法を提案する 等)
- とにかくスピードを上げる(タイピングを鍛える、よく使う文言はテンプレートにする)
- 業務上関わりのある人と直接会える機会があれば、とりあえず参加して関係を構築しておく(後の仕事をスムーズにする)
できる・得意を磨けば、それは後に「あなたの強い武器」になります。
2.今いる環境を変える
今いる会社では電話応対を免除してもらっていますが、この配慮がなければどうでしょう。「電話をとってもらわないと困る」と言われても、できないモノはできません。
他の障害についてももちろん同じで、それぞれ「苦手なこと」「弱みとなる部分」があります。
- コミュニケーションが苦手
- 集中力が続かない、疲れやすい
- 細かいチェックが苦手
- 重いものが持てない
- 数字に関する業務が苦手 等々
できない(苦手な)ことを無理に求めてくる会社にいると、モチベーションも続きませんし、上記の「できる・得意を磨く」余裕もなくなり、結果強みを作る(伸ばす)ことができません。
そんな環境に居続けても良いことはありませんよね。
「困難に立ち向かうこと」は望ましい在り方ですが、そのパワーは「弱みを克服する」方向よりも、「強みを伸ばす」ために使うべきです。その方があなたのトータルの能力は向上します。
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「働いている」あるいは「まだ働いて(働けて)いないけど、働く意欲はある」という障害者は、頑張りすぎる傾向にあると感じています。無理をして調子を崩してしまった友人が何人もいます。
しかし、頑張りどころを間違えてはいけません。
その環境(職場)で頑張り続けることは、本当にあなたのためになるでしょうか。
環境を変えるのは、逃げではありません。あなたの頑張りが正しく報われる場所を、ぜひ探してほしいと思います。