障害者雇用・転職

聴覚障害のある人が職場で相談したい合理的配慮|会議・連絡を分かりやすくする工夫

障害当事者であり、企業で採用にも携わってきたむじなです。

私は声で会話ができます。それでも、複数人が次々に話す会議では、聞き漏らしや聞き間違いが起こります。「今の発言を確認したい」と思っても、毎回進行を止めるのは気が引けるものです。

そんなときに役立つのが、資料の事前共有や発言の文字化など、情報の伝え方を変える工夫です。この記事では、聴覚障害のある人が職場で相談しやすい合理的配慮を、私の経験を交えて紹介します。

職場の合理的配慮は、本人と会社で考えるもの

雇用の場面では、障害者雇用促進法により、事業主には合理的配慮の提供が義務付けられています。 職場で生じている支障を確認し、本人と話し合いながら、仕事を進められる方法を考える仕組みです。出典:厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」

本人が困りごとを伝えるのは大切ですが、「障害のある人が自分から申し出なければ、会社は何もしなくてよい」というわけではありません。会社が障害を把握している場合は、職場で支障がないか確認することも求められています。

また、希望した方法がそのまま実現するとは限りません。例えば、毎回の会議に文字入力の担当者を配置するのが難しくても、字幕機能を試す、議事録を共有するなど、別の方法を一緒に検討できます。以下の例も「必ずこの方法にしてもらう」という一覧ではなく、話し合いの材料として読んでください。出典:厚生労働省「合理的配慮指針」

1.会議の資料を事前に、決定事項を事後に共有する

会議の議題や資料を先に読めると、何について話しているかを追いやすくなります。私の場合、話題や専門用語を事前に知っているだけでも、会議中の理解が変わります。

まずは、議題と関連資料を会議前に共有してもらえないか相談してみましょう。会議後には、決定事項・担当者・期限を文字で確認できると安心です。

ただし、後から議事録を読むだけでは、会議中に質問したり意見を述べたりする機会は補えません。会議への参加が難しい場合は、次のようなリアルタイムの工夫も必要です。

2.会議中の発言を文字で確認できるようにする

会議の内容をその場で把握する方法には、担当者によるパソコンでの要約入力、手話通訳、音声認識による字幕などがあります。どの方法が使いやすいかは、本人のコミュニケーション方法や会議の規模によって異なります。

議題を画面に映し、発言内容を追記するパソコンテイクも一つの方法です。私にとっても、話の流れを文字で確認できるのは助けになります。一方、入力する人には作業負担がかかるため、「議事録も兼ねれば負担は小さい」と決めつけず、担当者や必要な範囲を話し合うことが大切です。

また、「一度に一人ずつ話す」「発言前に挙手や名前を伝える」といった会議のルールも有効です。字幕や通訳があっても、複数人が同時に話せば内容を追いにくくなります。参考:高齢・障害・求職者雇用支援機構「聴覚障害者の雇用支援マニュアル」

3.重要な業務連絡はチャットやメールでも残す

会議だけでなく、日々の「報告・連絡・相談」にも聞き漏らしの不安があります。特に、作業内容の変更、締切、優先順位などは、口頭だけで伝えられると後から確認しにくいものです。

そこで、重要な指示は会社で使用しているチャットやメールにも残してもらう方法があります。すべての会話を文字にする必要はありません。「何を・いつまでに・誰が対応するか」だけでも確認できれば、行き違いを減らせます。

新しいアプリの導入が難しい職場でも、既存の連絡手段を使えるかもしれません。まずは、普段の業務で困っている連絡から相談するのがよいと思います。

4.音声認識は、試してから使い方を決める

音声認識による字幕は、会議やオンライン打合せの内容をつかむ助けになります。私も以前、音声認識システムを試し、発言がその場で文字になる便利さを感じました。

ただし、固有名詞や複数人の発言には誤変換もあります。字幕だけに頼って重要な決定を済ませるのではなく、結論や担当業務は別途文字で確認できると確実です。

新たに高価なシステムを購入する前に、職場で使っているオンライン会議ツールの字幕機能などを試し、本人にとって役立つか確かめる方法もあります。

5.小さな工夫や安全面も見落とさない

短いやり取りには筆談ボードが使えるかもしれません。電話や館内放送だけで伝えている連絡があれば、文字でも知らせてもらう方法を考えられます。緊急時の警報や避難の指示をどう把握するかも、平常時に確認しておきたい点です。

手話を使う人がいる職場では、希望に応じて、周囲の人が仕事で使う手話を学ぶ機会を設けることも一案です。ただし、手話を教えたり、職場全体に障害を説明したりする役割を、本人一人に負わせる必要はありません。

相談するときは「困る場面」と「試したい方法」をセットで

合理的配慮の相談は、制度の言葉から始めなくても大丈夫です。例えば、次のように具体的な場面を伝えると、相手も方法を考えやすくなります。

会議で複数の人が続けて話すと、発言内容を追い切れないことがあります。まず次回の会議で、議題の事前共有と、決定事項の文字での共有を試せないでしょうか。

試してみて足りなければ、字幕や要約入力を加える。逆に、十分に参加できるようになれば、その方法を続ける。合理的配慮は、一度に完成させるものではなく、働く中で調整していくものだと思います。

相談しても対応が進まない場合は、上司だけで抱え込まず、人事担当者や社内の相談窓口にも伝えてください。会社には合理的配慮に関する相談に対応する体制を整えることが求められています。社内での解決が難しいときは、都道府県労働局やハローワークにも相談できます。出典:厚生労働省「合理的配慮指針」

まとめ

聴覚障害のある人への配慮は、特別な機器を入れることだけではありません。会議資料を先に共有する、発言の仕方をそろえる、重要な連絡を文字で残す。そうした工夫から、仕事への参加しやすさは変わります。

「聞こえにくくて困る」と伝えるだけでも、話し合いの出発点になります。本人が一人で解決策を用意する必要はありません。職場で何が支障になっているかを共有し、使いやすい方法を一緒に探していきましょう。

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