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障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。
2016年4月に施行された「障害者差別解消法」によって、障害者に対する「合理的配慮の提供」が、行政や事業主(雇い主=会社)に義務付けられました。
合理的配慮とは、障害者が、障害のない人と同じように権利や利益を享受できるよう、必要な配慮を行うことです。
合理的配慮の特徴は、「障害者がまず合理的配慮を求める『意思表明をする』ことが必要」であり、かつ「事業主は、『過重な負担がない範囲』で合理的な配慮に努めること」とされている点です。
つまり、障害者自らがまず声を上げないと始まりませんし、事業主=会社にとって、「事業活動の支障とならない」「費用負担が大きすぎない」ような配慮でないと実現しません。
そんな合理的配慮について、私の経験をもとに、細かい職場ルールからシステム導入まで、「会社として取り組みやすい合理的配慮」を紹介したいと思います。
今回は聴覚障害者編。
「会社がなかなか障害について配慮してくれない」と悩みを抱えている方は、まずこういうものから配慮を求めてみてはいかがでしょうか。
1.会議のアジェンダ事前配布・議事録の事後配布
導入難易度:★☆☆☆☆
費用負担 :0円
例え口話(音声・言葉によるコミュニケーション)が可能でも、私を含め、聴覚障害者は会議が苦手な方が多いです。
聞き間違いや聞き漏らしの不安、「ん?」と思うことがあっても、毎回進行を止めて確認するのも気が引ける……。
そんな時、会議前に「どんなことを話すのか」が時系列で事前に分かっていれば、話を理解しやすいです。また、会議のキーワードを事前に把握しておくだけでも理解度が違います。
アジェンダ(進行表)があるだけで、会議が大分楽になるはず。また、会議の進行(および何を目的(目標)にするか)を事前に決めておくことは、会議の生産性を向上させるうえでも重要です。
なので、これは聴覚障害者に対する配慮というだけでなく、会社にとっても意義のあることです。
もちろん、事後に議事録も共有してもらいましょう。
2.会議中のパソコンテイク
導入難易度:★★☆☆☆
費用負担 :0円
さらに、事前に用意したアジェンダを会議中プロジェクターで投影、そこに追記する形でパソコンテイク(発言内容の入力)をお願いできれば、会議の内容把握はほぼ完璧(若干のタイムラグはありますが)。
ただし、会議中一人(もしくは何人かで交代しながら)パソコンテイク係として集中しなければいけないので、負担はあります。
しかしこれも考えようで、同時進行で議事録をとっていると思えば、そこまで過重な負担とは言えないはず。1と併せて検討をお願いしてみては。
3.音声認識システムの導入
導入難易度:★★★★★
費用負担 :280万円(参考費用)
会議の話が続きますが、パソコンテイクがなくても、音声認識システムを導入すれば、各参加者の発言を、リアルタイムで把握することができます。
音声認識システムは、各参加者がマイクに向かって発言し、その音声をリアルタイムで文字化、スクリーンに映し出すシステムです。
最近の音声認識システムは精度が向上しており、また、手直しした部分や固有名詞・略語を自動で学習する機能があり、実用に耐えられるシステムになっています。
アドバンスト・メディアのAmiVoiceをお試し利用したことがありますが、多少の変換間違いはあるものの、会議内容の把握、議事録の土台としては十分なシステムでした。
AmiVoiceの導入費用は280万円と決して安くはないですが、議事録作成時間を削減し、生産性を高めるための投資と思えば、検討の価値はあるはずです。
リアルタイム表示の音声認識システムとしては、AmiVoiceのほか、otomojiやミエルカ・クラウドなどがあるようです。
ミエルカ・クラウドは30日間無料トライアルがあるとのこと。また、導入初期費用無料で、音声認識以外の機能もあるようなので、企業としては検討しやすいかもしれませんね。
4.重要な報連相は文章で⇒チャット・メッセンジャー機能の導入
導入難易度:★★☆☆☆
費用負担 :0円
会議同様、重要な報連相は、聞き間違いや聞き漏らしが怖いです。手話を使う方にとっても、同時にメモすることができませんので、負担が大きいはず。
メールを使うのもいいですが、どうしてもメールのやりとりは形式ばってしまいますし、書き方に気を使う分やりとりが面倒です。
そこで、気軽にテキストでやり取りできる、チャット・メッセンジャーソフトがあれば重要事項のみ端的に連絡することが可能です。
今はSkypeやMessengerなど無料ソフトがありますので、導入をお願いしてみてはいかがでしょうか。
ただし、会社のセキュリティ体制によっては、ソフトをすぐに導入、とはいかないかもしれません。
5.その他
筆談ボードの設置や、音声・文字変換アプリ「こえとら」の使用、「会議の際は挙手してから発言するルール」など、少しの工夫でコミュニケーションがスムーズにできる工夫はあります。
また、手話を使われる方は、お昼休みなどの時間を利用して、手話勉強会を開いて周りの方に覚えてもらえれば、コミュニケーションが取りやすくなりそうですね。
まとめ:少しでも働きやすい環境へ、自ら働きかけよう
冒頭で書いた通り、合理的配慮は、まず障害者であるあなたが声をあげることからはじまります。
待っているばかりでは、働きやすい環境に変わることはありません。少しずつでも、意思表明していきましょう。
「配慮を求めても受け入れてもらえない」「もうこの職場で働くのは限界」というあなたは、さっさと見切りをつけて転職活動を始めましょう。
このブログでは、転職経験者として、障害者採用担当者として、転職関連の記事 もいろいろ書いていますので、参考にしてみてください。