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精神・発達障害への差別意識は根強い。理解促進のポイントと今できること

2018年2月20日

目次

障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。

聴覚障害者は、身体障害者の中でも比較的差別的扱いを受けやすい障害だと思います。耳が聞こえない(聞こえにくい)というのは、目に見えないですからね。

私は聴覚障害者ですが、全く聞こえないわけではなく、ある程度口話(音声(言葉)によるコミュニケーション)ができます。

中途で(後天的に)聴覚障害者になって10年近く、口の動きを読むのにも大分慣れて、静かな環境であれば「障害があるなんて気づかない」と言われるレベルまで上手くなりました。

しかし、それ故に、「いつも聞こえている」と思われて、「都合の悪いことだけ聞こえていない(聞こえないフリをする)」などと(陰で)言われることもあります。

それでも(目に見えなくても)、「聴覚障害」は物理的に音が聞こえない(聞こえにくい)という特性なので、まだ理解してもらいやすいとは思います。

しかし、精神・発達障害者については、ことさら理解されづらく、根強い差別意識があると感じることが多いです(就労の面で)。

なぜ精神・発達障害者への理解が進まないのか。理解促進のポイントと、職場・当事者の双方でできることとは何か。

あまりまとまっていませんが、書き留めておきたいと思います。

 

理解するためのポイント1:障害の多様性を知る

この記事でも「精神障害」「発達障害」とひとくくりにしてしまっていますが、症状や特性は一人ひとり異なります。

精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)の対象となる精神疾患は、うつ病、そううつ病、統合失調症、てんかん、各種依存症、神経症など様々です。

また、発達障害にも、自閉症スペクトラム障害(自閉症やアスペルガー症候群など)、ADHD(注意欠陥多動性障害)、LD(学習障害)などがあります(発達障害も手帳としては精神障害者手帳になります)。

加えて、発達障害については「この人の障害特性はこれ」と明確に線引きできるものではなく、様々な障害が重なり合っていることが多いです。

このような多様な精神障害・発達障害について、「仕事ができる、できない」「どの仕事に向いている、向いていない」など一様には言えません。

最低限の障害についての知識と、一人ひとりと向き合う姿勢が必要だということを認識しておく必要がありますが、現場レベル(実際ともに働く同僚たち)でそこまで理解できている職場が果たしてどれだけあるか……。

 

理解するためのポイント2:配慮が必要だから「障害者雇用枠」なんです

理由1で「多様性」という話をしていますが、それでも「ある程度」共通する特徴というものはあります。

例:精神障害「心身ともに疲労しやすい」「マルチタスク(複数の仕事を同時に進める)が苦手」「環境への適応に時間がかかる」「あいまいな指示が苦手」など

例:発達障害「空気を読む(暗黙のルールを理解する)のが苦手」「コミュニケーション(正しく受け取る、伝える)が苦手」「想定外への対応が苦手」など

忘れてはいけないのは、精神・発達障害者がこれらを苦手としているのは、「精神疾患」や「生まれつきの脳機能の特性」に起因するということです。

「手が不自由な方が、訓練してタイピングを覚える」ように、「私が(聴覚障害者が)、口の動きを読み取れるように訓練する」ように、努力である程度カバーできることはあるでしょう。

けれど、全て本人の努力で克服できるなら、わざわざ賃金が低い傾向にある障害者枠になんて応募しませんよ。

車いすの社員のためにバリアフリーにする、聴覚障害の社員には電話対応を免除する。

それと同じように、企業としてこれらの特性に配慮しながら働いてもらい、それぞれの力が発揮できる領域で会社に貢献してもらうのが障害者雇用です。

まずは一人ひとりの適性を見極め、適材適所で配置し、適切なサポートをするところからスタートです。

 

理解するためのポイント3:「特別な存在」でないことを知る

大きな勘違いは、精神障害者や発達障害者は、何か「特別な存在」「異質な存在」であると思われているところでしょう。

生涯を通じて、5人に1人が精神疾患にかかると言われています。「俺には(私には)関係ない」などと言っている方は、現実が見えていません。

発達障害についても同様で、障害のない人でも、脳機能の特性は生まれつき異なります。

「すぐにイライラする人」「仕事の覚えが悪い人」「雑談が苦手な人」「集中力が続かない人」いろんな人がいますよね。それと同じです。

精神障害や発達障害は、「特別な存在」じゃありません。彼ら(彼女ら)が苦手なものが、たまたま現在、会社員として勤めるうえで必須の振る舞い・スキルになっているだけです。

 

職場でできる配慮とは

精神・発達障害者の雇用が進まない、定着しない(長く勤められない)のは、企業(職場)での無理解が原因です。

周囲のちょっとした配慮や心配りが、「精神・発達障害者が継続して就労できるか」を左右することもあります。今日からでも、職場でできることはあるはずです。

  • 上司や産業医、人事担当者と、一対一で面談する機会を「定期的に」もうける=担当内外で本音で相談できる場を確保する
  • 業務日報などで、日々の体調や業務の悩みなどを上司が把握できるようにする
  • 「なんでもこの人に聞けばいい」という指導者(先輩)を配置する
  • 長いスパンで業務を割り振る=期限に余裕をもって仕事を頼む
  • 社員に対する障害理解研修を実施する。障害についてのリーフレットなどを作成、配布する
  • 社内の障害者同士が気軽に交流できる機会をつくる=悩みを打ち明け、支えあえる仲間を作る
  • 休憩室を設置し、体調が悪いときは休めるようにする
  • マニュアルを整備する=業務手順を見える化する
  • 職場で守るべきルールを検討する。「当事者と協議の上」明文化し、遵守する

「精神障害者はすぐに辞める」「発達障害者は仕事ができない」そんなことを言う前に、障害者を雇用するならやっておくべきことがあるはずです。

 

当事者ができること、やるべきことは

とは言え、会社側の意識や対応が急に改善することはないと思っておいた方が良いでしょう。会社や職場が配慮するのは当然ですが、当事者側もできること、やるべきことはあります。

  • 「どのようなときに体調を崩すのか、どう対処すれば調子を取り戻すのか、調子を戻すのにどれくらいの時間が必要か」「どのようなことが苦手か、逆にどのようなことは得意か」自分の障害について、正しく理解し、開示する
  • 食事・睡眠・運動などの生活リズムを整える
  • 服薬は必ず医師の指示を守る
  • 調子が悪いときは早めに相談する(上司・同僚・産業医・人事・障害者相談窓口など)
  • 仕事で困ったり迷ったときは早めに相談する(同上)
  • 職場で守るべきルールを、会社側と納得できるまで話し合う。決めたルールには従う(配慮は受けても、甘えない)

会社は当然障害者に配慮すべき。それと同様に、十分に配慮してもらっているなら、会社の一員として、当然会社に貢献する義務があります。障害を言い訳にはできません。これは身体・知的障害についても同じです。

しかし、精神・発達障害者については、頑張り過ぎは禁物、障害の悪化につながるおそれがありますので、まずは何でも職場で相談することです。

無理をせず、「長期的に」力を発揮できるようにセルフコントロールする術を身に着けましょう。

 

まとめ:まずは環境を選び、できることから始めよう

あなたが今就労中であれば、上記の『当事者ができること、やるべきことは』を参考に、まずは自分にできることから始めてみることをおすすめします。

しかし、それはあくまでも、あなたが勤めている会社が「障害に配慮してくれる会社であるなら」です。

イチ障害者にできることは限られます。結局、企業側の配慮なしでは、安定して働き続けることは困難です。

上ではあえて記載していませんが、一番の対処法は、あなたの障害を受け入れてくれる(配慮が受けられる)企業に就職・転職することでしょう。

「精神障害者の雇用義務化」「法定雇用率の上昇」など、精神・発達障害者の就職・転職には追い風が続いています。就職・転職活動を始めるなら今がチャンスです。

しかし、あなたに完全にマッチする企業を、自分一人の力で見つけ出すことはほとんど不可能と言っていいでしょう。各企業の「本当のところ」について、個人が収集できる情報の質と量には限界があります。

ですので、精神・発達障害者が就職・転職活動を始めるなら、まずは転職エージェントの利用をおすすめします。

転職エージェントは、各企業の人事担当者と直接パイプがあるので「あなたの障害に対して配慮してもらえる」「あなたの得意なことが活かせる」企業を紹介してもらえます。

加えて、精神・発達障害の方が苦手とする傾向にある面接についても、マンツーマンで丁寧に支援・指導してもらえます。利用はすべて無料なので、相談してみるだけでも価値はあります。

転職エージェントについては下記にまとめていますので、ぜひこちらの記事もご参照ください。

 

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