「平日に通院するたびに、有給休暇が減ってしまう」
「休める制度はあるけれど、仕事のことが気になって使いづらい」
定期的な通院が必要な場合、仕事との両立には、診察の時間だけでなく、移動や待ち時間、治療後の体調も考える必要があります。
障害当事者で、企業の人事労務・障害者採用に関わってきたむじなです。
私は、通院しながら働き続けるためには、休暇や勤務時間の制度に加えて、それを実際に使える業務分担と、相談しやすい職場の風土が大切だと考えています。
この記事では、通院と仕事を両立するために確認したい職場の条件と、会社への相談方法、就職・転職時の質問例を紹介します。
まず、自分に必要な通院の条件を整理する
同じ「定期通院が必要」という場合でも、月に一度、数時間あれば済む人と、毎週決まった曜日に時間を確保する必要がある人では、必要な働き方が異なります。
制度を探す前に、次の点を整理してみてください。
- 通院の頻度と、曜日・時間帯の指定があるか
- 移動や待ち時間を含め、どのくらいの時間が必要か
- 診察や治療の後、そのまま仕事に戻れるか
- 通院予定の変更や、追加の受診が生じることがあるか
「月に一度、午後の休暇が必要」「毎週火曜日は16時までに退勤する必要がある」など、仕事との調整が必要になる場面まで整理すると、会社も対応方法を検討しやすくなります。
治療後の勤務や、働ける時間について判断が難しい場合は、仕事内容や勤務時間を主治医に伝え、相談してください。
通院と仕事を両立しやすい職場の5つの条件
1.必要な休暇を使えること
最初に確認したいのは、通院に使える休暇の種類と、取得方法です。
年次有給休暇は通院にも使えます。ただし、付与される時期や日数、半日・時間単位で取得できるかによって、使いやすさが変わります。
法定の年次有給休暇は、原則として、入社から6か月継続して勤務し、その期間の全労働日の8割以上出勤すると付与されます。週5日勤務など、通常の日数が付与される働き方では、最初の付与日数は10日です。パートなどでも年次有給休暇はありますが、勤務日数や時間によって比例付与となる場合があります。厚生労働省「年次有給休暇の制度」
会社によっては、入社時から年次有給休暇を付与しています。就職・転職時には、年間の日数だけでなく、入社直後の通院をどう扱うかも確認しておきましょう。
半日・時間単位で取得できれば、短時間の受診で丸一日分の休暇を使わずに済みます。
半日単位の取得は、本人が希望し、会社が同意する場合に認められるものです。時間単位の年次有給休暇は、労使協定による制度の導入が必要で、年5日分までという上限があります。厚生労働省「時間単位・半日単位の年次有給休暇制度」
また、会社によっては、年次有給休暇とは別に、通院休暇や病気休暇などを設けています。こうした休暇は、会社独自の制度であり、有給・無給、対象となる通院、取得できる日数、提出書類などが異なります。厚生労働省「治療と就業の両立支援指針」
「通院休暇あり」という名称だけで判断せず、自分の通院が対象になるか、利用したときの賃金はどうなるかまで確認してください。
2.勤務時間を調整できること
通院の時間帯によっては、休暇よりも、出退勤時刻の調整が合う場合があります。
例えば、午後の通院に合わせて早く退勤できれば、仕事と通院の予定を組みやすくなります。
その選択肢の一つが、フレックスタイム制です。一定の期間に働く総労働時間を決め、その範囲内で、日々の始業・終業時刻を本人が調整する制度です。厚生労働省「フレックスタイム制とは」
利用を考える場合は、次の点を確認します。
- 自分の職種・雇用形態も対象になるか
- 必ず勤務する時間帯である「コアタイム」があるか
- 始業・終業時刻を調整できる範囲はどこまでか
- 通院で勤務時間が短くなる日の扱いはどうなるか
コアタイムを設けない制度もありますが、コアタイムが通院時間と重なる場合には、休暇など別の調整が必要になります。
また、フレックスは、必要な総労働時間そのものを減らす制度ではありません。通院日に短く働いた分を別の日に調整することが、体調の負担にならないかも考える必要があります。
会社によっては、フレックス以外に、始業・終業時刻をずらす時差出勤や、短時間勤務を相談できる場合もあります。短時間勤務を利用する場合は、賃金や担当業務がどう変わるかも確認しましょう。
3.在宅勤務を必要な日に利用できること
自宅に近い医療機関へ通っている場合、在宅勤務によって、職場と病院の間を移動する負担を減らせることがあります。
例えば、午前中は自宅で勤務し、午後は休暇を取って通院する、といった組み合わせです。終業後の受診であれば、自宅から直接病院へ向かえることもあります。
ただし、在宅勤務の利用条件は会社によって異なります。
- 入社直後から使えるか
- 通院日に合わせて在宅勤務日を選べるか
- 出社が必要な業務や会議があるか
- 上司への申請・承認が必要か
「在宅勤務制度あり」でも、固定の曜日しか利用できなければ、通院の予定とは合わないかもしれません。
また、在宅勤務中に受診する時間は、勤務時間とは区別して調整する必要があります。休暇や中抜けなど、会社のルールを確認してください。
自宅で仕事ができるかどうかは、職種名だけでは決まりません。扱う情報、設備、担当業務を踏まえ、自分の仕事で利用できるかを確認することが大切です。
4.休む日に仕事を引き継げること
休暇や勤務時間の制度があっても、「自分がいないと仕事が止まる」という状態では、安心して通院しづらくなります。
本人が予定を早めに伝え、引き継ぎを準備することは大切です。同時に、仕事を誰が引き受けるか、どの業務を先に進めるかは、職場全体で調整する必要があります。
例えば、次のような方法が考えられます。
- 通院中の問い合わせに対応する担当者を決める
- 作業の進捗や手順を共有し、代わりに対応できるようにする
- 通院日に重なる納期や会議を事前に調整する
- 業務量が増えたとき、上司と優先順位を確認する
顧客対応や納期のある仕事だから、通院との両立ができないとは限りません。代わりに対応する人や、調整する仕組みがあるかによって事情は変わります。
反対に、事務職でも、一人に業務が集中していれば休みにくくなります。職種名よりも、実際の業務分担を確認してください。
5.通院や体調について相談しやすいこと
制度の有無とともに大切なのが、使いたいと伝えたときに、具体的な調整を相談できる職場であることです。
「通院は仕事を続けるために必要なもの」と理解されていれば、毎回引け目を感じながら説明する負担を減らせます。
相談先が明確か、採用時に話したことが配属先にも伝わるか、通院の頻度や体調が変わったときに見直せるかも確認しておきましょう。
私は、本人が無理を重ねて仕事に合わせることだけを求めるのではなく、働き続けるための条件を一緒に考えられる職場が大切だと思っています。
通院の配慮を会社へ相談するときの伝え方
通院について相談する際は、「通院が必要です」だけでなく、頻度、必要な時間、希望する対応を組み合わせて伝えます。
月に一度、平日の午後に受診する必要がある人なら、例えば次のように説明できます。
月に一度、平日の午後に定期通院が必要です。移動と待ち時間を含め、午後の休暇を取れるよう相談したいです。予定が決まり次第お伝えしますので、その日の業務分担も確認させてください。
毎週、一定の時刻までに退勤する必要がある場合は、その曜日・時刻を伝え、勤務時間の調整方法を相談します。
自分に必要なのが「通院の時間を確保すること」であれば、方法は半日休暇、時間単位年休、フレックスなどから検討できるかもしれません。制度名だけを指定するより、何に困り、何を確保する必要があるかを伝えると、話し合いやすくなります。
雇用分野の合理的配慮では、通院や体調に応じた出退勤時刻・休暇・休憩の調整が例として示されています。障害者雇用促進法に基づき、事業主には、過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供する義務があります。厚生労働省「雇用分野における障害者への差別禁止・合理的配慮」
また、2026年4月からは、治療と就業の両立支援に取り組むことが事業主の努力義務となりました。相談体制の整備や、治療に応じた働き方の検討が求められています。具体的に利用できる休暇・勤務制度については、会社の規程や対応を確認します。厚生労働省「治療と就業の両立支援指針の概要」
話し合いで決まったら、取得・申請の方法、業務調整の担当者、見直しの時期を確認し、メールなどで残しておくと行き違いを防ぎやすくなります。
就職・転職時に確認したい質問
求人票に制度名が書かれていても、自分の通院に合わせて利用できるかまでは分からないことがあります。
まず必要な通院の条件を伝え、そのうえで、次のように具体的な運用を確認してください。
| 確認したいこと | 質問例 |
|---|---|
| 入社直後の休暇 | 「定期通院があるため、入社直後から利用できる休暇や時間調整の方法を教えていただけますか」 |
| 通院に使える休暇 | 「半日・時間単位の年休や、年休とは別の通院休暇は利用できますか」 |
| 勤務時間の調整 | 「毎週○曜日は○時までに退勤する必要があります。フレックスや時差出勤などで対応できるでしょうか」 |
| 在宅勤務の運用 | 「通院日に合わせて在宅勤務日を選べますか。入社直後の利用条件も確認したいです」 |
| 業務分担 | 「通院で不在となる時間の問い合わせや急ぎの業務は、どのように分担していますか」 |
| 入社後の相談先 | 「通院予定や体調が変わった場合、どなたに相談できますか」 |
採用担当者だけでは分からない場合は、配属予定の部署にも確認してもらいましょう。転職エージェントを利用している場合は、担当者を通じて確認を依頼する方法もあります。
通院時間の確保が継続勤務に不可欠なら、企業が対応を検討できるよう、選考の早い段階で相談することが大切です。配慮事項を伝える時期については、面接・オファー面談での配慮事項の伝え方も参考にしてください。
今の職場で両立が難しいときは
今の職場で通院時間を確保しにくい場合は、上司や人事、社内の相談窓口へ、現在の制度と調整できる方法を確認するところから始められます。
既存の休暇を使うだけでなく、業務分担、会議の時間、勤務時刻などを見直せる場合もあります。
相談しても状況が変わらないときの進め方や、社外の相談先は、職場で障害への配慮がないときの対応で紹介しています。
治療や体調への影響が大きい場合は、主治医にも相談してください。職場内の調整に加え、休暇・休職や、条件の合う職場への転職を考えることも選択肢です。
まとめ:制度と実際の働き方を合わせて確認する
通院と仕事を両立するには、次の条件を、自分の通院に照らして確認することが大切です。
- 入社直後も含め、必要な休暇を使えるか
- 出退勤時刻や勤務時間を調整できるか
- 在宅勤務が通院の負担軽減に役立つか
- 不在時の業務分担ができるか
- 通院や体調について相談し、対応を見直せるか
すべての制度がそろっていることが、全員に必要なわけではありません。自分に必要な時間と負担を整理し、それに合う方法を会社と確認していきましょう。
通院のたびに本人だけが無理をして帳尻を合わせる働き方では、続けることが難しくなります。制度の名称に加えて、実際に使える条件と、職場の協力体制まで確かめてください。
