障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。
昨日、平成30年2月5日に開催された、厚生労働省の労働政策審議会(障害者雇用分科会)によって「障害者雇用対策基本方針」の改正案が示されました。
この基本方針は、平成30年度から平成34年度までの5年間の計画で、今後の障害者雇用の方向性を示すものです。
正式に決定するのは来月のようですが、この改正案でほぼほぼ決まりでしょうから、気になるポイントを抜粋したいと思います。
(出典:厚生労働省HP「第75回労働政策審議会障害者雇用分科会」)
改正基本方針の気になるポイント
平成34年度に43.5人以上規模※の企業で雇用される障害者数を58.5万人とする
※筆者注:障害者雇用が義務となる企業規模が「43.5人以上の従業員がいる」事業所です。
直近の障害者雇用数は平成29年6月時点で49万6千人ですので、5年間でおよそ9万人増を目標としています。
ちなみに現在(平成29年度まで)の基本方針では、障害者雇用目標を46万6千人としており、目標数より3万人増で計画を達成しています。
今後も障害者の就職・転職には追い風が吹き続けそうですね。
これまでの基本方針にはない記述が追加されています。
障害者雇用に追い風が吹く中、その多くを大企業(やその特例子会社)で雇用しており、障害者雇用の裾野が広がっていないことを問題視しています。
今後は、法定障害者雇用率の未達成企業について、さらに厳しく指導が行われそうです。
そうなると、今まで障害者雇用を全くしてこなかった企業から求人が出てきますので、これもまた障害者にとっては歓迎すべき傾向ですね。
これは直接方針と関係がある話ではありませんが、意外でした。身体障害者手帳の所持者は減ってるんですね。
しかし、「平成29年障害者雇用状況の集計結果」をみると身体障害者の雇用数は増加していますので、
- (これまで働いていなかったが)就職活動を始めて、就職に成功する障害者が増えている
- これまで企業の雇用(採用)対象とならなかったような、重度障害者や、(言い方は悪いですが)ビジネスマンとしての価値(ポテンシャル)が低い障害者が、雇用され始めた
- ITを主とした技術の進歩によって、これまで就労が難しかった障害者が働けるようになった
ということでしょうか。
これも基本方針には直接関わりのないデータですが、精神障害者保健福祉手帳の所持者は3年間で22万5千人増と急激な伸びをみせています。
身体障害者については雇用を増やそうにも、手帳所持者が減少傾向です。しかも、身体障害者は7割近くが65歳以上の高齢者というデータもあります。(平成28年版障害者白書)
となれば、これまでは精神障害者の雇用に消極的だった企業も、若年層に急激に増加している精神障害者の雇用を進めていくでしょう。
現在身体障害者・知的障害者と比べて雇用数がかなり少ない精神障害者ですが(障害者全体の14%程度)、近いうちに逆転することは明らかです。
赤字部分の、「若年性認知症、各種依存症」が就労支援の対象として追加されました。
障害者手帳を所持していなくても合理的配慮の対象にはなりますので、「若年性認知症、各種依存症」の方については、「今の会社で継続して働く場合は」今後働きやすくなりそうです。
しかし、手帳を所持していなければ、転職・(今は失業中だけど)就職というのは厳しそうですね。
ちなみに話は逸れますが、若年性認知症や依存症は精神障害者手帳の取得対象ですので、該当する方は一度専門医に相談してみるべきです。
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ざっと気になる記述はこんなところでしょうか。
予想通りではありますが、今後しばらくの障害者雇用状況は、障害者にとってますます追い風となりそうです。
今は新年度に向けて企業の採用活動が活発になる時期でもありますので、就職・転職を考えている障害者の方は、本ブログの就職・転職関連の記事をぜひご覧ください。