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障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。
昨日(12月12日)、厚生労働省より年に一度の「平成29年 障害者雇用状況の集計結果」が発表されました。
障害当事者としても、一企業の障害者採用担当者としても、非常に気になるところです。
「障害者雇用状況の集計結果」では、「民間企業」「公的機関」「独立行政法人など」の雇用状況が公表されていますが、今回は民間企業での雇用状況をご紹介するとともに、障害者の雇用環境の動向を考察したいと思います。
障害者雇用の結果概要
民間企業の雇用障害者数は 49 万5,795 人、対前年比で4.5%(2万1,421.0人)増加となりました。
実雇用率は1.97%、対前年比0.05ポイント上昇と、全体でみると(←ここ重要)現在の法定雇用率である2.0%にかなり近づいています。
やはり、障害者の就職・転職市場は右肩上がりのようですね。
来年(平成30年)4月には法定雇用率が2.2%に上昇することが決まっていますし、今後も法定雇用率は上昇を続けるでしょうから、この傾向はしばらく続くでしょう。
しかし、法定雇用率を達成している企業はやっと50%に達したところ。また、障害者雇用義務のある企業のうち、一人も雇用していない企業がまだ29.3%もあるのです。
まぁ、まだまだこれからの伸びしろがあるとも解釈できますけどね。
障害種別の雇用状況について
さて、それでは障害種別に見ていきたいと思います。
注:厚生労働省の発表資料では、「重度障害者」を2人として、「短時間労働者(週20時間以上30時間未満の労働時間の障害者)」を0.5人としてカウントしています。ここから先の記事では、正しい人数を把握するために、このカウントの仕方を適用しません。
民間企業全体の雇用状況について、障害種別にまとめた表がこちらです。
障害種別 | 平成29年 | 平成28年 | 前年比 | 伸び率 |
重度身体障害者 | 94,234人 | 92,058人 | 2,176人 | +2.4% |
重度身体障害者(短時間勤務) | 10,821人 | 10,460人 | 361人 | +3.5% |
身体障害者 | 126,584人 | 125,633人 | 951人 | +0.8% |
身体障害者(短時間勤務) | 15,162人 | 14,782人 | 380人 | +2.6% |
重度知的障害者 | 18,626人 | 17,707人 | 919人 | +5.2% |
重度知的障害者(短時間勤務) | 4,021人 | 3,823人 | 198人 | +5.2% |
知的障害者 | 63,181人 | 58,231人 | 4950人 | +8.5% |
知的障害者(短時間勤務) | 15,679人 | 14,556人 | 1,123人 | +7.7% |
精神障害者 | 41,422人 | 34,700人 | 6,722人 | +19.4% |
精神障害者(短時間勤務) | 17,251人 | 14,656人 | 2,595人 | +17.7% |
合計 | 406,981人 | 386,606人 | 20,375人 | +5.3% |
やはり精神障害者の伸び率が圧倒的です。フルタイムで働いている精神障害者でみれば、前年よりも2割増加しています。
身体障害者や知的障害者に限れば、全体の人数(雇用されている人数ではなく)はそんなに急増するものではありません。
また、身体障害者と知的障害者については、古くから認知され、雇用されてきた歴史があります。
一方精神障害者についてはその人数自体が年々増加しており、また、精神障害者の雇用の歴史も古くはありません(精神障害者が障害者雇用率に算定されるようになったのは平成18年なので、まだ10年未満です)。
故に、「働ける身体障害者や知的障害者」は既にほとんどが就労しており、需要(企業の求人)に対して供給(障害者の応募)が不足している。
特に都市部、身体障害者については、各企業間でし烈な障害者獲得競争が繰り広げられていますので、「働けるけど(そして働く意思もあるけど)まだ就職していない」という人自体が少ないのです。
一方、精神障害者については全体のパイ(人数)が増え続け、これから本腰を入れて精神障害者の雇用を進めよう!という企業もあります(精神障害者を忌避する企業もたくさんありますが)。
需要と供給がマッチしているからこそ、精神障害者の雇用が増え続けているわけです。
障害者の雇用環境についての考察
しかし、精神障害者については定着率に問題があるため、「雇っては辞め、また雇う」の繰り返しが現状でしょう。
精神障害者の1年後定着率は49.3%と、身体障害者(60.8%)や知的障害者(68.0%)に比べて極端に低い傾向にあります
(障害者職業総合センター 平成29年4月「障害者の就業状況等に関する調査研究」)。
私が親しくしている特例子会社の採用担当者は、「精神障害者は2年で辞めると思って雇用している」と話していました。
これは何も、「どうせ辞めるからぞんざいに扱ってやる」ということではなく、「2年でその人が辞めることを想定して、さらに多くの障害者を雇用しなければならない」ということです。念のため。
また、身体障害者については、先に書いた通り、需要は常にあるので(むしろ精神障害者よりも)、就職・転職のチャンスは豊富です。
特に特例子会社ではソフト面・ハード面の整備が整っているため、定着率に問題のある精神障害者よりは、身体障害者の雇用を優先しているのが本音でしょう。
先ほど「働ける(そして働く意思のある)障害者」という書き方をしましたら、需要(企業からの求人)に対して供給(障害者の応募)が圧倒的に足りないため、以前に比べて「働ける」のハードルは下がってきています。
また、今後ますますICT化が進み、テレワーク(在宅勤務)が可能な企業が増えれば、これまで通勤できないために就労できていなかった重度身体障害者の雇用も進むはずです。
まとめ
身体障害者・知的障害者・精神障害者の3者とも、需要(求人)はますます増加していくでしょう。
企業側は採用のハードルを下げてきて、障害者にとって就職・転職しやすい環境が整ってくると考えられます。
しかし、上でも少し触れましたが、肝心なことは、せっかく就職・転職できた企業で、長く・気持ちよく働いていけるか(定着できるか)ということです。
そのために、障害者が納得して就職・転職するための(そして企業が納得して雇用するための)マッチング機能である、障害者専門の転職エージェントはますます活用が進むでしょう。
まだまだ現状では、ハローワーク(もしくは転職サイト)を通して就職・転職活動をしている障害者が圧倒的でしょう。転職エージェントを利用すれば、他の応募者よりも圧倒的に優位に立てるにも関わらず。
つまり、今転職エージェントを利用して就職活動・転職活動を行えば、理想の企業に就職・転職できる可能性が高いということです。
まだ転職エージェントの利用に二の足を踏んでいるあなたは、今のうちに勇気を出して利用した方が良いでしょう。利用は無料ですし、デメリットは何もありませんからね。
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