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障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。
最近面接会続きでヘロヘロです、応募する側ではなく採用する側で。
従業員1,000人を超える大企業ともなれば障害者採用には結構な予算を投入していると思うのですが、その費用対効果(コスパ)は決して良くない企業がほとんどだと思います。
なぜなら、障害者の離職率が健常者に比べて圧倒的に高いからです。
健常者が離職率15.0%(フルタイム・パート併せ)なのに対して、身体障害者39.2%、知的障害者32.0%、精神障害者50.7%となっています。
出典1:厚生労働省 平成27年度の雇用動向調査結果の概要
出典2:障害者職業総合センター 障害者の就業状況等に関する調査研究(平成27年度調査)
「こんなに力を入れているのに、障害者雇用が全く上手くいかない・・・」と嘆いている障害者採用担当の皆様も多いことでしょう。…私もですが。
しかしこれを=障害者採用に使っているお金と労力を、障害者の待遇改善と職場環境改善に使った方が、よっぽど障害者雇用の推進につながるのではないでしょうか。
ちょっと計算してみましょう。
大企業では、障害者採用にどれだけの予算を投じているのか
私が勤める会社では、年間およそ10回ほど民間企業が主催する障害者合同面接会に出展しています(+WEB媒体に求人を掲載しています)。
これにかかる費用は1回につきおよそ50万円、10回で年間500万円です。
また、転職エージェント(人材紹介)を通した採用も行っています。これがおよそ年3人ほど。紹介料は一人につきおよそ100万円として、年間300万円です。
また、当然採用にかかわる人件費も必要です。私がこの1年、“直接”説明会や面接に費やした時間は、およそ100時間ほどでした(企画立案や調整・準備はここでは除く)。
企業が私を働かせるのにかかる費用は時間当たりおよそ3,000円(私の時給が3,000円という訳ではありません泣)、一人当たり3,000円×100時間=30万円。
障害者採用はサブも含めて3人体制なので×3、人事や配属予定のマネージャーの面接アサインもプラスαで考えると、採用に直接かかる人件費は、年間100万円というところでしょうか。
障害者採用に費やしている年間予算は、500万+300万+100万の合計900万円です。
障害者採用の予算を、障害者の待遇改善と職場環境改善に充てると、こんなことができる
私の勤める会社は従業員1,000人超の大企業です。分かりやすく従業員数1,000人としましょう。
法定雇用率の達成基準である2.2%の障害者を雇用した場合、1,000人×2.2%=22人です。
上記で計算した900万円を、新規採用に充てるのではなく、この22人で分け合うと、一人当たり年間41万円分を、障害者の待遇改善と職場環境改善に使うことができます。
これだけあれば、
- 障害者の収入アップ
- 段差解消のバリアフリー化
- 読み上げソフトや文字音声変換会議システムの導入
- テレワークシステムの導入による在宅勤務制度の整備
- 休憩スペースの確保
……等々、色んなことができそうですね。
新規採用の前に、まずは既存の障害のある社員に長く安心して働いてもらうための投資をした方が良いのでは?
障害者採用の予算を、障害者の待遇改善と職場環境改善に充てると、こんな良いことがある
これらの投資による効果は、定着率の向上に留まりません。
- 収入アップによるモチベーション・ロイヤリティの向上
- 環境整備による仕事の効率化→生産性の向上
- 長期で働くことができる→仕事の熟知→生産性の向上
- 離職率減による良い口コミ効果→採用効率の向上
……等々、良いことづくめです。
環境が整い障害者が実力を発揮できれば、一般社員が抱く印象も良い方向に変わっていくでしょう。
そうすれば、ハード(施設・設備)の面だけでなく、ソフト(人的支援・人間関係)の面でも障害者が働きやすい会社になり、ますますポジティブなスパイラルです。
まずは障害者を大切にする会社になることが、障害者雇用を進めるための近道です。
「障害者の採用が上手くいかない」「せっかく採用した障害者がすぐに辞めてしまう」とお悩みの障害者採用担当の皆様。
まずは既存の障害のある社員に長く・安心して活躍してもらえる環境整備から始めてはいかがでしょうか?
結果それが、障害者雇用を進めるための近道になると思います。
……私も引き続き頑張ります。