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障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。
採用+研修関連のビッグイベントが重なり、やっと一息ついたところで盛大に体調を崩し、2,3日寝込んでいました……。
障害者への配慮というと、「聴覚障害者のための筆談」「視覚障害者のための点字」「車いすユーザーのためのスロープ」などが頭に浮かぶ方が多いと思います。
これらは必要なものではありますが、障害者が働いていくためには、これだけでは足りません。
「長く安定して」働いていくためには、「障害者の疲労」への配慮が絶対に必要だと思います。
障害種別に関係なく、障害者は疲れやすい
障害者は疲れやすい、これは精神障害に限らず、多かれ少なかれ障害者が共通して持つ特徴だと思っています。
私は聴覚障害がありますが、「聴覚障害者は疲れやすい」と言っても、知らない人には理解されづらいでしょう。
しかし私にとって、ただ話を聞くということ自体が非常に集中力を伴う作業なのです。
健聴者:耳から聞こえた音が自動的に言葉として頭で理解できる
聴覚障害者(私):①耳から聞こえるわずかな(歪んだ)音を必死に聞き取る+②話の主題と前後の文脈から、その音がどのような意味の言葉かを考え、理解する+③次にどんな話が来るか予想しておく ①~③を繰り返す
「ただ聞く」だけで、頭の中でこれだけの作業が必要になります。イメージがつかない方は、24時間イヤホンガンガン伝言ゲームだと思ってください。疲れますよね?
これは一例で、別に私が特別なわけではありません。
障害者は多かれ少なかれ、何かしら足りないもの(聞こえ)を他のもの(集中力と思考)で補いながら生きています。
健常者と同じことをやっていても、より疲れるんです。
疲れは精神論ではどうにもできない
疲労はパフォーマンスに重大な影響を与える要素であるにも関わらず、日本の職場ではどうも軽視される風潮が見受けられます。疲れは精神論ではどうにもなりません。
どこかで見た例ですが、
あなたは高校生で、これから数学のテストを受けます。クラスのみんなが席で集中してテスト開始を待つ中、あなただけが1500m全力で走ってこいと命じられました。
テスト開始直前になんとか戻ってきたあなたは、みんなと一斉にテストを受け始めます。
どうでしょう?テスト開始時間には間に合いましたが、これは平等な条件でしょうか。違いますよね。
これであなたのテスト結果が悪かったとしても、それは疲労のせいで本来のパフォーマンスを発揮できなかったからだと誰でもわかる話です。
しかし仕事のこととなると、「やる気がない」「忍耐が足りない」「疲れているのはみんな一緒」と精神論が出てきて、個々の疲労蓄積を慮ろうとしません。
1500m走のように目には見えていなくても、蓄積された疲労は確実に仕事のパフォーマンスに影響します。
「1500メートル走」も「仕事のストレス」も「障害による疲れ」も変わりません。疲れるものは疲れるし、疲れたらその分は休まないとパフォーマンスは回復しない。
障害者と働く上で知っておいてほしいことは沢山ありますが、個人的にはまずこの「疲れやすさ」を理解してほしいなと思います。
まとめ
ここでは障害者の話をしましたが、健常者でも、仕事の忙しさはもちろん、職場では見えないところで、育児や介護などで疲労が溜まっていることもあるでしょう。
「疲れ」は思っている以上に業務上のパフォーマンスに影響する。本来できることも、疲れていればできなくなる。
何も「障害者だけを甘やかしてほしい」という話ではなく、障害の有無にかかわらず適切なタイミングで休んだ方がトータルで見て生産性は上がるし、その「適切なタイミング」は各々違うということです。
仕事でミスが続いたり、集中していないと感じる同僚・部下がいたら、「こいつはサボっている」「ダメな奴だ」とすぐに判断するのではなく、
「最近疲れてない?」「大丈夫?ちょっと休んだ方がいいよ」と声をかけ合える職場になってほしいですね。