障害者の仕事の悩み

障害者が無理なく通院と仕事を両立させるための条件-風土・人事制度

2018年3月7日

目次

障害当事者であり、採用担当でもあるむじなです。

私は幸い、障害のことで病院に行くのは年に一度の検査の時くらいですが、頻繁に通院が必要な方は、通院に伴う負担が大きいです。

特に、人工透析で週に数回の通院(しかも長時間の処置)が必要な腎臓障害の方のご苦労は、きっと私には想像もつかないほどでしょう。

「週に数回」まではいかなくても、「平日5日間」「朝から夕方までの1日8時間」の勤務が基本となる会社勤めでは、通院しながら仕事を続けるのは難しい方も多いと思います。

旧態依然の勤務体系や人事制度、寛容でない企業風土のままでは、障害者が長く勤めることは難しいですし、そんな企業には人材も集まりません。

どのような企業であれば、無理なく通院と仕事を両立させられるのか。人事部門に勤める障害者として、「風土」「制度」の面から考えてみました。

 

1.有給が気兼ねなく使える

有給(年次有給休暇、年休)をいつでも、気兼ねなく使える職場であるというのは、「通院と仕事の両立」のみならず、働きやすい職場の必須条件だと思います。

会社は「組織で」仕事をするところなので、会社には「あなたにしかできない業務」はありません。あるとすれば、あなたしかやる人がいない「未熟な職場」があるだけです。

つまり、業務が理由で有給が自由に使えないのは、会社の仕組み(制度)および風土の問題であって、あなたの調整能力のせいではありません。

ちなみに、法令上、有給休暇は「入社から継続して6か月以上勤務」かつ「全労働日の8割以上出勤」した場合、10日間与えなければならないと定めています。

しかし、上記は「最低限守るべきライン」であり、各社の規定により実際の運用は異なります。入社初日から20日間有給休暇が付与される会社もありますので、就職・転職の際はよく確認しましょう。

参考:有給休暇付与に関する法定の最低基準

継続勤務年数 法定最低付与日数
0.5年 10日
1.5年 11日
2.5年 12日
3.5年 14日
4.5年 16日
5.5年 18日
6.5年以上 20日

 

2.業務内容の配慮

「業務が理由で有給が取れないのはあなたのせいじゃない」という話をしましたが、責任感の強い人は、忙しい職場で自分だけ有給を取ることに、どうしても引け目を感じてしまうでしょう。

ですので、職場=担当してもらう業務内容についても配慮が必要になります。

例えば、納期が短い業務を多く抱えていると、自分が休む間、どんなに些細なことでも、他メンバーに仕事を分担してもらう必要が出てきます。

同じく、顧客対応などで「突発的に対応が必要な」業務を担当していると、代わりに対応してくれる人が必要になります。

このように自分の加減だけでは調整しきれない仕事は、「通院と仕事の両立」が前提となる方には向いていません。

同じ職種や部署でも、会社によって事情は異なるため「●●部が良い」など言い切れませんが、デザイン・プログラミングや、一般事務・企画・調査研究の一部でしょうか……良い事例があれば追記します。

 

3.フレックスタイム制

頻繁に通院が必要な方については、そのたびに有給を使っていると「個人的な都合」のために使う分がなくなってしまいます。

そんなときに便利なのが、労働時間(始業時間・就業時間)を自分で調整できる「フレックスタイム制」

必ず働く必要がある「コアタイム」が設けられていることが多いですが(例:10:00~15:00 等)、それでも「一日何時間働くか」を自由に決められるのはありがたいです。

通院の日は15時に仕事を切り上げるなど、有給を使うことなく柔軟に対応できます。

また、副次的な効果ではありますが、フレックスタイム制が利用できれば、朝や通勤ラッシュが苦手なことが多い精神障害の方も働きやすいでしょう(定時が9:00~18:00のところを、10:00~19:00にするなど)。

 

4.在宅勤務制度

職場に合わせて病院を変えることも難しいので、定期的に通院されている方は、自宅近くの病院が「かかりつけ」ということも多いのではないでしょうか。

仕事上がりで病院に向かうと、それだけで時間がかかってしまいますよね。ちょっとしたトラブル対応に時間がかかり、予約の時間に間に合わないなんてことも。

常時(毎日)ではなくとも、必要に応じて在宅勤務ができる制度であれば、終業後すぐ病院に向かえるので、時間のロスがありません。

事務職であれば、今時PCがあればどこでも仕事ができる時代です。

職種にもよるとは思いますが、オフィスで働くときは細かなデータ処理を後回しにして、在宅勤務の時に集中して取り組むなど工夫の余地はあるはず。

 

5.通院休暇(有給)制度

近年、年次有給休暇とは別に、通院のための有給休暇を取得できる、配慮が行き届いた企業も出てきました。

通院休暇制度があれば、(年次)有給は自分の時間のために使えますし、無理なく通院と仕事を両立できるでしょう。

が、残念ながらこの制度が整っている企業は少ないです。

最近では、インターネットサービスのヤフー株式会社が、「通院・入院・体調不良時」に使える特別休暇制度を導入したようです(毎日新聞:ヤフー 障害者に特別休暇制度 通院や入院に対応)。ただし、年6日のみ。

一部特例子会社では、必要な日数だけ取得できる制度もあります。

 

まとめ:通院と仕事の両立は、個人の努力では難しい。整った制度、寛容な風土の企業へ

年次有給休暇の制度は法令で定められたものですが、その他制度の導入状況は各社異なります。

また、企業の風土はそう簡単に変わるものではありませんし、人事制度の改正も一筋縄ではいきません。配慮を求めても、残念ながら対応してもらえないことが多いと思われます。

正直、個人の努力だけで両立することは困難ですし、相当の負担があります。

通院と仕事の両立で挫折しそうな方は、転職も視野に入れましょう。世の中、探せば制度が整った会社がたくさんあります。

しかし、「探せば」とは言うものの、細かい人事制度については公開されていないことがほとんどです。

そんなときは、就職・転職活動を支援してもらえる転職エージェントを利用すれば、応募前に「どんな制度がある会社なのか」が分かります。転職エージェントは、各社の人事担当者と直接つながっていますので。

制度の整った企業への転職を希望される方は、障害者専門の転職エージェントを利用することをおすすめします。

 

 

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