「障害者雇用の求人に応募したいけれど、志望動機が思いつかない」
「必要な配慮を受けられることが応募の理由でも、そう書いてよいのだろうか」
履歴書や面接で志望動機を求められると、何を伝えればよいか迷うことがあります。私も、応募する企業が増えるほど考えすぎてしまい、志望動機をまとめるのが苦手でした。
私は障害当事者として転職を経験し、企業で障害者採用にも携わってきました。応募する側と採用する側を経験して、応募先について調べたことと、自分がやりたいこと・できることを結びつけると、志望動機を整理しやすいと考えるようになりました。
この記事では、求人票から材料を集める手順、状況別の例文、配慮やキャリアの希望を伝えるときの考え方を紹介します。
志望動機では「この会社で、なぜこの仕事をしたいか」を伝える
志望動機を考えるときは、次の三つを整理します。
- 応募先の会社や仕事の、どこに関心を持ったか
- 自分のどの経験・学習・強みが、その仕事につながるか
- 入社後、どのような仕事に取り組みたいか
ハローワークの「応募書類の作り方」でも、企業を選んだ理由、仕事に活かせる経験・能力、どんな仕事で役立ちたいかを盛り込むことが案内されています。ハローワーク「応募書類の作り方」9ページ
私が採用に携わった経験でも、会社について調べていることに加え、自分の経験と応募する仕事の接点が伝わるかは、大切な点だと考えています。
ただし、志望動機をどの程度重視し、何を確認するかは、企業や求人によって異なります。会社のことを調べた事実だけで終わらせず、「その仕事に自分がどう関わりたいか」まで説明しましょう。
自己PRでは自分の強みを中心に伝えますが、志望動機では、その強みを「なぜ、この応募先で活かしたいのか」につなげます。
志望動機の材料は、求人票と自分の経験から集める
いきなり文章を書き始めるより、応募先の情報と自分の経験を、短いメモにすると進めやすくなります。
まず、担当する仕事を確認する
求人票の「仕事内容」と「応募条件」を読み、実際に何を担当するのかを確認します。
たとえば「事務職」でも、受注入力、資料作成、勤怠の確認、電話対応など、担当する仕事は違います。自分の経験を活かしたいなら、どの業務で活かせそうかまで考えます。
続いて、企業の公式サイトで事業や製品・サービス、採用情報を確認します。会社が何をしていて、募集する仕事がその事業をどう支えるのかが分かると、応募する理由を具体化できます。
会社の歴史や製品が生まれた背景を、必ず志望動機に入れる必要はありません。応募する仕事との関係が分かる情報を選びましょう。
仕事に活かせる経験を選ぶ
求人の仕事内容と、自分が経験してきたことを並べます。
たとえば、受注入力の求人なら、過去の入力・照合業務が材料になります。資料作成の求人なら、使ったソフトや、どのような資料を作っていたかを整理します。
「正確に仕事をします」だけよりも、「入力後に元の資料と照合し、不明点は担当者へ確認していました」と、実際の行動を添えると伝わりやすくなります。
職務経験が少ない場合は、職業訓練、学習、学校やアルバイトなどで、応募する仕事に関係する経験を探します。学習や演習で取り組んだことは、実務経験と区別して説明してください。
関心を持った点と、その理由を結びつける
応募先の情報を、そのまま紹介するだけでは志望動機になりません。
「法人向けサービスを提供している会社です」で終わらせず、「そのサービスを支える営業事務で、受注管理の経験を活かしたい」と、自分との接点を加えます。
企業理念に関心を持った場合も、理念の言葉を引用するだけでなく、自分の経験や仕事で大切にしていることとの関係を説明します。
私自身の転職活動でも、応募先の事業や製品・サービスを調べ、自分がやりたいこと・できることと結びつけて、志望動機を組み立てていました。応募先ごとに一から特別な物語を作るより、確認した情報と自分の経験の接点を探す方が、考えやすくなると思います。
志望動機の組み立て方と、状況別の例文
集めた材料は、「応募する理由 → 根拠となる経験 → 入社後の取り組み」の順でまとめてみてください。
文章の骨組みは、次のように考えられます。
貴社の〇〇という仕事に関心を持ち、志望しました。これまで△△を経験し、□□に取り組んできました。この経験を活かして、入社後は〇〇の業務に取り組みたいと考えています。
以下は、説明のために作成した例文です。私が実際に応募したときの文章ではありません。自分の経験と、応募先の求人内容に合う部分を使ってください。
経験のある仕事に応募する場合
各拠点の受注情報を取りまとめる、営業事務の求人を想定した例です。
貴社の営業事務職を志望します。求人に記載された、各拠点の受注情報を取りまとめ、営業担当者を支える業務に関心を持ちました。前職では受注データの入力と納期の確認を担当し、不明点を確認してから処理することを心がけてきました。この経験を活かし、正確な受注処理と情報共有に取り組みたいと考えています。
「事務経験があります」で終わらせず、募集されている仕事に関係する経験を選ぶのがポイントです。担当した範囲や工夫について、面接で質問されても説明できる内容にします。
未経験の仕事に応募する場合
データ入力・資料確認を担当する、未経験者も応募できる事務職の求人を想定した例です。
貴社が募集する、データ入力と資料確認を担当する事務職を志望します。職業訓練でExcelの入力や集計を学び、演習では入力後に元の資料と照合して確認してきました。事務職の実務経験はありませんが、学んだ操作を活かし、業務手順と確認方法を習得して、正確な事務処理に取り組みたいと考えています。
未経験の場合は、今できることと、入社後に覚える必要があることを分けます。経験や資格が必須の求人では、その条件を満たしているかも確認してください。
「学ばせてほしい」だけで終わらせず、すでに取り組んでいる準備と、それを仕事にどう活かしたいかを伝えましょう。
オープンポジションで、配属先が決まっていない場合
物流会社のオープンポジションで、事務領域を希望する場合を想定した例です。
貴社の物流事業を支える事務業務に関心があり、オープンポジションに応募しました。これまで勤怠データの取りまとめと書類の確認を担当してきたため、管理部門など、正確な情報処理が必要な仕事で経験を活かしたいと考えています。具体的な担当業務については、これまでの経験と必要な配慮をお伝えしたうえで、ご相談したいです。
配属先が未定でも、自分が希望する領域と活かせる経験は伝えられます。「何でもできます」と広げすぎず、どのような仕事を想定しているかを説明し、企業が検討している配属先を確認しましょう。
配慮を受けられることが応募の理由でもよい?
必要な配慮を受けながら働けることは、応募先を選ぶ大切な理由です。勤務地や勤務時間と同じように、働き続けられる条件として考えて構いません。
志望動機では、その条件に加えて、応募する仕事への関心や、そこで活かしたい経験も伝えます。
たとえば、求人に「業務指示を文章でも共有する」と記載されていて、その方法が自分に合うと考えたなら、何に関心を持ったかを具体的に説明できます。そのうえで、経験のある入力・確認業務など、取り組みたい仕事につなげます。
ただし、障害者雇用の求人であることだけで、自分に必要な配慮がすべて実施されると判断することはできません。求人で確認した内容と、個別に相談する必要がある内容を分けましょう。
また、志望動機の欄に障害の説明や配慮事項をすべて詰め込む必要はありません。応募先の様式に合わせて、障害・配慮事項の欄や別紙、面接で具体的に伝えます。継続勤務に不可欠な条件は、企業が検討できるよう、選考の早い段階で相談してください。
伝える時期と説明の例は、障害者雇用の配慮事項はいつ伝える?面接・オファー面談の例文で紹介しています。
「キャリアアップしたい」は、希望する仕事まで具体化する
「キャリアアップ」「ステップアップ」を志望動機にする場合は、何を変えたいのか、どの仕事に取り組みたいのかまで説明します。
私が採用に携わった経験からも、応募者が希望する仕事と、会社が任せたい仕事に接点があるかは、確認したい点です。「キャリアアップしたい」という言葉だけでは、その接点が分かりません。
たとえば、求人に給与計算と社会保険手続きが含まれていて、給与計算の経験をもとに担当領域を広げたい人なら、次のように伝えられます。
これまで担当してきた給与計算の経験を活かしながら、求人に記載されている社会保険手続きにも取り組み、労務業務の担当範囲を広げたいと考え、志望しました。
収入を上げたい、仕事の幅を広げたいという希望があっても構いません。その希望と、応募先で担当する仕事がつながるかを確認することが大切です。
将来の異動や昇進は、求人票だけでは分からない場合があります。実現が決まっているものとして志望動機に書くより、選考中に担当業務やキャリアの選択肢を確認しましょう。確認する質問は、障害者雇用の面接で使える逆質問20選を参考にしてください。
履歴書と面接では、同じ内容を伝わる形に整える
履歴書では、応募先の指定文字数や欄の大きさに合わせて、理由・経験・入社後の取り組みを簡潔にまとめます。細かな実績は、職務経歴書で補えます。
面接では、書いた文章を一字一句再現するより、まず応募した理由を伝え、関係する経験を説明します。質問を受けたら、具体的な業務や行動を補足してください。
会社への応募なら、書類では「貴社」、面接で話すときは「御社」を使うのが一般的です。書類と面接で言い回しが変わっても、希望する仕事や経験の内容は一致させます。
履歴書全体の書き方と、障害・配慮事項を記載する場所については、障害者雇用の履歴書の書き方で詳しく紹介しています。
志望動機が思いつかないときは、分からない点を確認する
知らなかった会社や、未経験の業界に応募するときは、最初から強い思い入れがなくても、求人を読んで関心を持った点を探せます。
給与、勤務地、勤務時間が希望に合うことをきっかけに、応募を検討する場合もあるでしょう。その場合は、条件を入口にして、どの仕事に取り組みたいか、自分のどの経験がつながるかを確認します。
仕事内容が「事務業務全般」などとしか書かれていなければ、文章を工夫する前に、主な担当業務を問い合わせる方法があります。転職エージェント経由なら、担当者に確認を依頼できます。
仕事内容を確認しても、自分が取り組みたい点を見つけられない場合は、応募先の選び方を見直す材料になります。事実と違う思い入れや経験を作って、文章を埋める必要はありません。
自分だけではまとめにくい場合は、求人票と下書きを一緒に見てもらいましょう。ハローワークの職業相談窓口では、応募書類の添削アドバイスを受けられます。ハローワーク「履歴書・職務経歴書の書き方」
利用中の就労支援機関や転職エージェントにも、志望動機の整理について相談できます。対応する支援の内容は、担当者に確認してください。
提出・面接前に確認したいこと
完成したら、次の点を確認します。
- 応募先の会社・仕事に、なぜ関心を持ったかが分かる
- 求人票や公式サイトで確認した情報を使っている
- 経験・学習・実績を事実に沿って書いている
- 入社後に取り組みたいことが、募集されている仕事とつながっている
- 履歴書・職務経歴書・面接で、経験や希望条件が食い違っていない
- 他社の名前や、別の求人に向けた文章が残っていない
志望動機を考えるときは、まず求人の仕事内容と、自分の経験を並べてみてください。そこから、関心を持った点、活かせること、取り組みたいことを自分の言葉でまとめます。
採用されるための文章を整えることとともに、その仕事を自分が希望しているか、必要な条件を確認できているかも大切にしてほしいと思います。
