障害者雇用・転職

障害者雇用の面接で信頼される伝え方|素の自分を伝える準備と例文

「自分に合った会社を見つけたいから、面接では素のままで話した方がよいのだろうか」

「採用されるためには、上司や同僚を褒めたり、苦手なことを隠したりする必要があるのだろうか」

障害者雇用の面接では、自分らしく話すことと、相手にどう受け取られるかの間で迷うことがあると思います。

私は聴覚障害と発達障害の当事者で、転職を経験し、企業で障害者採用の面接官も務めてきました。現在は一般企業で人事労務の仕事をしています。

私が大切だと考えているのは、実際の経験、できること、難しいことを整理し、応募先が入社後の働き方を具体的に考えられるように伝えることです。そのための準備は、自分らしさを失うことにはつながりません。

この記事では、過去に寄せられた相談と採用担当の経験を踏まえ、自分を取り繕わずに伝えるための準備、上司・同僚や前職についての話し方、職場との相性の確かめ方を紹介します。

「素の自分」を伝えるためにも、面接の準備は役立つ

以前、ブログに「職場とのミスマッチを避けたいので、面接では取り繕わずに話しているが、不採用が続いている」という相談が寄せられました。

本当の自分を知ったうえで採用してほしい、という考え方は私も大切だと思います。その相談への回答では、自分のことを正確に伝えるためにも、話す内容を整理しておくことを勧めました。

私が障害者採用を担当していたときは、応募者の良さを引き出したいと思いながら質問していました。ただ、面接の限られた時間で、その人の経験や考えをすべて理解できるわけではありません。

たとえば、次のような問いについて、仕事の具体的な場面を振り返っておくと、自分が大切にしていることを説明しやすくなります。

  • 思い入れのある仕事は何か
  • その仕事の、どのような点にやりがいを感じたか
  • 自分が担当したこと、工夫したことは何か
  • その経験を通じて、何を学んだか

準備するのは、面接官に好かれそうな架空の人物像ではなく、自分の経験を表す言葉とエピソードです。質問に合わせて経験の一部を選ぶことも、自分を偽ることとは違います。

面接で伝えたい「誠実さ」とは

厚生労働省は、公正な採用選考の基本として、応募者の基本的人権を尊重し、求人職種の仕事に必要な適性・能力に基づいて評価することを示しています。厚生労働省「公正な採用選考の基本」

その考え方を踏まえると、応募者が伝えるべきなのは、自分がどのように仕事を進められるかという情報です。私は、ここでいう「誠実さ」を、事実と自分の考えを区別し、相手と認識を合わせようとする姿勢だと考えています。

話すのが得意かどうか、すぐに答えられるかどうかだけで、その人の誠実さや仕事の能力が決まるわけではありません。分からない質問は確認し、考える時間が必要なら、そのことを伝えて構いません。

自分を取り繕わずに伝える4つのポイント

以下の例文は、伝え方を示すための例です。ご自身の実際の経験や状況に合わせて使ってください。

1.経歴と、実際にできることをそろえる

応募書類と面接で、担当業務、在籍期間、転職理由などの事実が食い違わないように確認します。

特に、仕事の経験は「関わったことがある」「補助を担当した」「一人で担当できる」を区別すると、相手が理解しやすくなります。チームで経験した業務を、すべて一人でできると説明する必要はありません。

給与計算の業務では、勤怠データの確認と入力を担当していました。最終的な計算結果の確認は上司が行っていました。

また、過去と現在で仕事選びの考え方が変わっていても、その変化を説明できます。「以前は○○を重視していましたが、△△の経験から、現在は□□を大切にしています」と、経緯を話しましょう。

実際にしていない仕事や、まだ分からないことを無理に言い切るよりも、経験の範囲と今後学びたいことを分ける方が、入社後の認識のずれを減らせます。

2.上司・同僚の協力と、自分の役割を分ける

上司や同僚について話すときは、周囲の協力と自分が担った仕事を、それぞれ具体的に説明します。

「すべて上司のおかげです」で終わると、自分が何をできるのか伝わりません。反対に、チームの成果をすべて自分の手柄として話すと、実際の役割と食い違います。

たとえば、次のように担当範囲を分けて話せます。

業務の進め方は上司と相談して決めました。私は、確認する項目を一覧にし、作業の進み具合をチームに共有する役割を担当しました。

実際に助けてもらったことがあれば、その内容を伝えれば十分です。好印象を得るために上司を褒めたり、自分の貢献を小さくしたりする必要はありません。

3.前職の問題や失敗は、起きたことと今後を整理する

退職理由や人間関係の話では、起きた出来事と、自分の受け止めが混ざりやすくなります。

「上司に理解がありませんでした」という説明だけでは、何が難しかったのか、次の職場ではどのような環境が必要なのかが伝わりません。次の内容を分けて整理すると、仕事との関係を説明しやすくなります。

  1. どのような業務・環境で、何が起きたか
  2. 自分はそれをどう受け止めたか
  3. 相談や対応をした場合、その内容と結果
  4. 次の職場で確認したい条件は何か

相談できなかった場合や、改善につながらなかった場合に、成功した話へ作り替える必要はありません。ハラスメントや差別を受けた経験についても、無理に自分の非を探したり、つらい詳細まで話したりする必要はありません。

失敗について聞かれた場合は、自分に改善できる点と、仕事を進めるうえで必要な支援・環境を分けて振り返ります。「もう絶対に失敗しません」と約束するより、確認方法を変える、早めに相談するなど、現在行っている対処を説明しましょう。

まだ対処方法を試せていないなら、「今後は○○を試したいと考えています」と、実施済みのことと今後の案を区別します。

4.苦手な場面と、相談したい配慮を具体的にする

障害名や「苦手です」という言葉だけでは、仕事への影響は十分に伝わりません。何が難しいのかを、実際の業務場面に置き換えてみてください。

たとえば、口頭の指示を整理することが難しい場合には、次のような伝え方があります。

口頭で複数の依頼を同時に受けると、内容や優先順位を整理しきれないことがあります。作業内容と期限を、チャットやメールでも確認できるようにしていただけると助かります。

整理したいのは、次の内容です。

  • どの場面で、何が難しいか
  • 自分で行っている対処があれば、その内容
  • 会社に相談したい対応
  • これまでその対応でできたこと、これから確認したいこと

未経験の仕事について、配慮があれば必ずできると断言する必要はありません。仕事内容を確認しながら、経験から分かっていることと、試してみないと分からないことを分けて相談できます。

仕事に必要な情報を伝えることと、病歴や私生活をすべて説明することは別です。配慮の伝え方や相談する時期は、障害者雇用の配慮事項はいつ伝える?面接・オファー面談の例文で詳しく整理しています。

自分に合う会社かどうかは、こちらからも確認する

自分のことを正確に伝えても、会社側の仕事内容や対応が分からなければ、相性を判断しにくいままです。

「障害への配慮があります」「相談しやすい職場です」という説明を聞いたら、自分が気になる場面について、具体的に確認してみましょう。

  • 「複数の依頼が重なった場合、優先順位はどなたに確認できますか」
  • 「業務の指示は、口頭のほかにメールやチャットでも共有されていますか」
  • 「仕事量や進め方について困ったときは、どなたに相談する形になりますか」

自分の経験や必要な条件を添えると、何を知りたいのかが伝わりやすくなります。たとえば、「口頭で複数の依頼を受けると整理が難しいため、指示の共有方法を確認したいです」と理由を説明できます。

面接官だけでは答えられないこともあるので、必要に応じて配属先への確認をお願いし、入社判断に関わる条件は内定承諾前までに認識を合わせておきましょう。

仕事内容や職場環境を確かめる質問は、障害者雇用の面接で使える逆質問20選|目的別の例文とNG質問も参考にしてください。

面接前は、回答の要点を書き出して話してみる

準備するときは、長い台本を作るより、次の内容を短い言葉で整理する方法があります。

  • 応募する仕事に関係する経験と、自分の担当範囲
  • 仕事で工夫したこと、周囲と協力したこと
  • 転職を考えた理由と、次の職場で重視する条件
  • 難しい場面、現在の対処、相談したい配慮
  • 応募先に確認したいこと

実際に声に出してみると、説明が長くなりすぎる部分や、具体例が足りない部分に気づくことがあります。文章を一字一句覚えるより、「何を伝えたいか」と「その根拠になる経験」をつかんでおくと、質問に合わせて話しやすくなります。

質問ごとの準備は、障害者雇用の面接で聞かれることは?質問例・答え方と緊張対策にまとめています。

話しにくさがある場合は、面接方法も相談する

緊張や障害特性によって答えを整理しにくいときは、「少し考える時間をいただけますか」「質問は○○について、という理解でよろしいでしょうか」と確認できます。

聞き取りや口頭でのやり取りに難しさがある場合は、筆談の併用、メモの使用、支援者の同席など、自分に必要な方法を選考前に相談しましょう。

JEEDの採用選考に関する資料でも、聴覚障害のある人との意思疎通の方法を事前に確認することや、必要に応じた支援者の同席、回答を急がせない進め方などが紹介されています。JEED「募集活動・社内支援の準備(採用選考・面接)」

一人で整理するのが難しいときは、支援を使う

ハローワークや利用中の就労支援機関、転職エージェントに、回答の整理や模擬面接について相談する方法もあります。利用できる支援の内容は窓口やサービスによって異なるため、何を手伝ってほしいのかを伝えて確認してください。

練習では、話し方だけでなく、「自分の役割が伝わるか」「必要な配慮が具体的か」「応募書類と説明が食い違っていないか」を見てもらうと役立ちます。相談先を探したい方は、障害者の就労支援機関はどこに相談する?仕事探し・準備・定着の窓口を目的別に紹介をご覧ください。

面接の準備は、自分を立派に見せるためだけのものではありません。自分の経験と必要な条件を伝え、応募先の仕事や環境を確認するためにも使えます。自分を大きくも小さくも見せず、お互いが入社後を具体的に考えられるように話すことを、私は大切にしています。

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