私は聴覚障害と発達障害があり、障害者雇用で複数の会社に勤めてきました。同じ私でも、職場によって働きやすさや評価が大きく違った経験があります。
ある会社では担当リーダーを任され、社内表彰も受けました。一方、別の会社では仕事の進め方がつかめず、ミスが増え、職場にいるだけで疲れていました。
発達障害の特性や診断が、転職によって消えたり現れたりするわけではありません。仕事内容も違うため、評価の差を一つの理由で説明することはできませんが、二つの職場を振り返ると、仕事の任され方、相談のしやすさ、オフィス環境に大きな違いがありました。
A社:相談して方向を決め、内容は任される仕事
A社は特例子会社でした。障害への理解と配慮が働き方の前提にあり、オフィスも比較的小規模です。一緒に働く人たちはほぼ顔見知りで、困ったときには上司やチームへ相談しやすい環境でした。
担当したのは、クライアントからの依頼に応じて調査し、報告をまとめる仕事です。調査のテーマは上司やチームと相談して決めます。そのうえで、何を盛り込み、どう構成するかは私の判断に任されていました。
他の人と常に連携しなければ進まない仕事ではなく、一人で考え、作業する時間も多くありました。ただし、最初から最後まで一人で抱えるわけではありません。方向を確かめたいときには相談でき、決まったあとは自分の裁量で進められました。
この職場では担当リーダーも任され、社内表彰を受けました。
B社:一人で進める仕事でも、見通しが持てなかった
B社は一般企業で、障害者雇用枠での勤務でした。オフィスは広く、席はフリーアドレス。どの部署の誰がどこにいるのか分からず、変化が得意ではない私には、その環境だけでも負担でした。周囲の社員には、私に障害があることも共有されていませんでした。
担当したのは人事のデータ管理に関する仕事です。こちらも一人で進める部分が多い仕事でしたが、A社のような裁量があるとは感じられませんでした。何を、どのように進めればよいのかが分からないまま仕事を渡され、手探りで取り組んでいました。
分からない点を相談しても、「そんなところから分からない?」というような反応が返ってくることがあり、次第に質問しづらくなりました。別の部署で部下を怒鳴って叱る声が聞こえることもあり、自分に向けられた言葉でなくても萎縮していました。
仕事の進め方も周囲の人との距離感もつかみにくく、A社とは対照的に、ミスが増えていきました。
「裁量がある」と「手探りで任される」は違う
A社とB社は業務内容が異なります。ただ、どちらにも「一人で進める時間が多い」という共通点がありました。
A社では、調査の方向を上司やチームと相談して決めたうえで、内容や構成を任されました。B社では、何をどこまで決めてよいのか、何を完成させればよいのかが見えにくいまま、仕事を進めていました。
私にとって、両者はまったく違う働き方です。自分で判断できる範囲が明確なことと、判断材料がないまま一人で考えるしかないことは、同じ「一人仕事」ではありません。
オフィスにも違いがありました。A社では周囲の人を把握しやすく、声をかける相手も分かりました。B社では人の居場所が分からないことに加え、相談への反応や周囲の叱責も気になり、落ち着いて働きにくい状態でした。
特例子会社なら働きやすく、一般企業なら働きにくい、という話ではありません。私が経験した二つの職場では、仕事の進め方や人との関わり方を支える条件が違っていた、ということです。
発達障害情報・支援センターも、仕事や生活での困難には本人だけでなく環境との関係があり、環境を整えることや相談できる場の重要性を説明しています。
次の職場を選ぶときに確認したいこと
求人票には職種や仕事内容が書かれています。しかし、実際にどう仕事を任され、誰に相談できるかまでは分からないことが多いものです。
私なら、面接や職場見学などで機会があれば、次の点を確認したいと思います。
- 仕事の目的、成果物、優先順位は誰と確認するのか
- 自分で判断してよい範囲と、相談すべき範囲はどこか
- 分からないことがあったとき、誰に相談できるのか
- 固定席かフリーアドレスか、周囲の人を把握しやすい環境か
- 必要な配慮について、本人の意向を踏まえて誰とどのように共有するのか
一度の面接ですべてを見極めるのは難しいと思います。それでも、「一人で進める仕事です」という説明だけで、自分に合う働き方だと判断しない方がよいと、二つの職場を経験して感じました。
自分にとって負担の少ない働き方や必要な配慮を整理したい場合は、私が受けた地域障害者職業センターの職業相談・職業評価についても紹介しています。求人を探す段階では、障害者向け転職エージェントの比較記事も参考にしてください。
おわりに
うまく働けないとき、私は自分の能力だけに原因があると考えがちでした。しかし、A社とB社では、仕事の内容だけでなく、任され方や相談のしやすさ、オフィスでの過ごしやすさが違いました。
自分の得意・不得意を知ることは大切です。同じくらい、どのような条件なら力を発揮しやすいかを具体的にしておくことも大切だと思います。次の職場を考えるときには、職種名だけでなく、日々の仕事がどう進むのかまで確かめたいです。
