聴覚障害や難聴があると、仕事を探す際に「電話対応ができなくても働けるだろうか」「職場での会話についていけるだろうか」と気になることがあります。
私は聴覚障害があり、人事労務の仕事をしています。会話自体はできますが、騒がしい場所や複数人の会話では聞き取りが難しく、相手の口元が見えない電話は特に困難です。職場では電話対応を免除してもらい、必要な受電・架電は同僚にお願いしています。
その経験から、仕事を選ぶ際には、職種だけでなく、実際の担当業務と、職場での連絡方法、必要な配慮を受けられる体制を確認することが大切だと感じています。
この記事では、私が仕事で困る場面と、その対応方法、求人紹介や面談で確認したいポイントをまとめます。聞こえ方や必要な配慮は人によって異なるため、一つの体験として、ご自身の条件を整理する際に参考にしていただければと思います。
聴覚障害・難聴の仕事選びで、職種名だけでは分からないこと
「聴覚障害がある人に向いている仕事」を探すとき、事務や専門職など、職種から候補を考えることは一つの入り口になります。ただ、同じ職種でも、電話の量や会話の多さは担当業務によって違います。
たとえば、私が働く人事労務の分野でも、給与計算と、労働保険・社会保険の手続きでは、確認しておきたいことが変わります。
給与計算は、データの確認や計算が中心の担当であれば、電話でのやり取りは比較的少ないのではないかと感じます。ただし、社員からの問い合わせを電話で受けるかなどは、職場によって異なるはずです。
一方、労働保険・社会保険の手続き、助成金、制度改正への対応などでは、私の経験上、ハローワークや労働基準監督署、労働局とのやり取りが発生しがちです。専門的な確認では、問い合わせへの回答だけでなく、追加の質問が入ることもあります。
| 業務の例 | 応募前に確認したいこと |
|---|---|
| 給与計算 | 計算・データ確認の範囲、社員からの問い合わせの量と連絡方法 |
| 労働保険・社会保険の手続き | 行政機関との連絡がどの程度あるか、電話以外でやり取りできるか |
| 助成金・制度改正への対応 | 専門的な問い合わせがある場合、電話を代わってもらえる体制があるか |
この表は、職種ごとの適性を決めるものではありません。同じ人事労務の仕事でも、担当範囲によって電話対応の負担が変わる、という例です。
求人票に「事務」「人事」と書かれているだけでは、仕事を進める様子までは分かりません。これまでの経験を生かせそうな仕事を見つけたら、業務内容をもう一段具体的に確認したいところです。
職場で困るのは、電話だけではない
騒音のある場所や、複数人の会話は聞き取りにくい
私の場合、周囲が騒がしい場所や、複数人が同時に話す場面では、会話を聞き取るのが難しくなります。
一対一では会話ができても、人数や環境が変わると同じようにはいきません。「会話ができる」と伝えるだけでは、仕事で困る状況が十分に伝わらないことがあります。
そのため、応募先に説明するときは、「どのような場面で聞き取りにくくなるか」まで具体的に伝えると、職場との相性を確認しやすくなると思います。
聞き取りに集中すると、同時にメモを取りにくい
私は、話を理解するために集中して聞く必要があります。そのため、聞きながら同時にメモを取ることが難しいです。
口頭で指示を受けたときは、後からテキストでも共有してもらうようにしています。文字で確認できれば、内容を振り返りながら仕事を進められます。
ここでも、「口頭の説明が全く分からない」ということではありません。その場で理解できることと、聞きながら記録して、後から正確に確認できることは別だと感じています。
仕事の手順や期限、細かい条件など、後から確認する必要のある情報について、どのように共有してもらえるかは大切なポイントです。
電話対応を免除してもらいながら、仕事を進める方法
私宛の電話は、部内で受電した人に、まず用件を聞いてもらっています。その概要を口頭で教えてもらい、内容に応じて対応を分けています。
すぐ答えられる内容は、代理で回答してもらう
概要を聞いて、すぐに回答できる内容であれば、「○○と回答してください」と受電した人に伝え、代理で答えてもらいます。
最初からすべての問い合わせを詳しく書き起こしてもらうわけではありません。簡単な確認であれば、その場で回答を伝えてもらうことで済む場合もあります。
確認が必要な内容は、質問をまとめて聞いてもらう
資料を確認する必要がある場合や、専門的でその場では回答しにくい内容の場合は、いったん折り返す形にします。
このときは、相手が確認したい項目を、できるだけまとめて詳しく聞いてもらいます。何を確認したいのかが曖昧なままだと、回答を準備しても、後から別の質問が入り、何度もやり取りが必要になることがあるためです。
あわせて、「担当者に聴覚障害があるため、メールなどで回答できる窓口はありますか」と確認してもらうこともあります。
電話番号しか案内されていない窓口でも、事情を伝えるとメールでのやり取りを案内してもらえる場合があります。毎回利用できるとは限りませんが、まずは確認してもらうようにしています。
折り返しをお願いするときは、周辺情報も渡しておく
電話での折り返しが必要な場合は、私が確認事項への回答をまとめ、同僚に伝えてもらいます。その際、回答そのものだけでなく、追加で聞かれそうな周辺情報も一緒に渡します。
以下は、回答メモの形を示した架空の例です。実際の問い合わせや書類を再現したものではありません。
問い合わせ内容
提出書類の対象期間と、訂正版の送付予定についての確認。伝えてほしい回答
- 対象期間は4月1日〜4月30日です。
- 訂正版は本日中に送付する予定です。
追加で聞かれそうな情報
- 当初の提出日:5月1日
- 受付番号:ABC-123
- 修正箇所:対象期間の記載
メモにない確認が入った場合
追加の質問内容を聞いて、私に確認してください。
毎回一度の折り返しで完結するわけではありませんが、最初に確認事項をまとめてもらい、関連情報も準備することで、やり取りの往復をなるべく減らすようにしています。
なお、私の職場では、電話を代わってもらう相手を特定の一人に固定していません。部内で受電した人に用件を聞いてもらう体制のため、急ぎの電話で対応する人が見つからず困ることは、あまりありません。
電話対応の免除を確認するときは、必要な電話を誰に、どのようにお願いするかまで考えておくと、実際に働く様子をイメージしやすくなります。
在宅勤務では、聞き取りによる疲労が減ることもある
私にとって、職場での会話は「できるかどうか」だけでなく、「どのくらい疲れるか」も大切な問題です。
会話自体はできても、集中して聞き続けることには疲労が伴います。出社した日は、ちょっとした確認を口頭ですぐに済ませられるのが良い点ですが、そのやり取りにも聞き取りの負担はあります。
一方、私が在宅で仕事をする場合は、口頭でのやり取りがなく、その疲労感がないことが大きなメリットになっています。
ただ、出社すればすぐに聞けることを、在宅では別の方法で確認する必要があります。「気軽に口頭で確認できる」という利点と、「聞き取りの負担がある」という難しさは、表裏一体だと感じます。
在宅勤務を希望する場合も、在宅の日数だけでなく、実際の連絡方法を確認したいところです。在宅でも電話や音声でのやり取りが中心であれば、私が感じているような利点を得られるとは限りません。
求人紹介や面談で確認したい職場環境
私が求人紹介や面談で実際に確認しているのは、まず電話対応の免除が可能か、電話業務がどの程度発生するか、社内でチャットツールなどがどの程度活用されているかです。
これまでの職場での経験も踏まえると、次のような質問が、仕事内容を具体的に考える材料になります。すべてを一度に聞く必要はありませんが、ご自身が困りやすい場面に関係する項目から確認するとよいと思います。
| 確認したいこと | 質問の例 |
|---|---|
| 電話対応の免除 | 担当する予定の業務では、電話対応の免除は可能ですか。 |
| 電話の量と内容 | 社内・社外との電話は、どの程度ありますか。主にどのような内容ですか。 |
| 代理対応の体制 | 電話での確認が必要な場合、同僚に用件の確認や回答の伝達をお願いできますか。 |
| 口頭指示の共有 | 仕事の手順や期限などは、口頭の説明に加えて、テキストでも共有していただけますか。 |
| チャットの使い方 | ちょっとした確認もチャットで行いますか。それとも口頭でのやり取りが中心ですか。 |
| 会議での情報共有 | 会議の資料や、決まったことを後から確認できる記録は共有されていますか。 |
| 在宅勤務中の連絡 | 在宅勤務中の連絡は、主にチャットやメールでしょうか。電話や音声でのやり取りはありますか。 |
チャットツールの導入だけでは、使いやすさは分からない
チャットツールについては、実際に入社してみないと分からないことも多いです。同じツールを導入している会社でも、使い方には差があります。
「チャットを導入しています」と聞くだけでは、日常のちょっとした確認にも使われているのか、連絡事項の掲示が中心なのかまでは分かりません。
「どの程度気軽に使っているか」を正確に事前把握するのは難しいですが、実際の使い方の例を聞くことで、少し具体的に考えられると思います。
必要な配慮と、できることをセットで伝える
必要な配慮を説明するときは、困ることに加えて、どのような方法なら仕事を進められるかも伝えると、話が具体的になります。
たとえば、私の経験をもとにした説明例なら、次のようになります。
電話は相手の口元が見えず、聞き取りが難しいため、対応の免除を希望しています。問い合わせ内容を確認し、資料を調べて回答をまとめることはできます。口頭の指示については、要点をテキストでも共有していただけると、確認しながら仕事を進めやすくなります。
これは、私の困り方と対応方法をもとにした例です。ご自身の聞こえ方や、できる業務に合わせて説明することが大切です。
応募先によっては、想定している業務上、電話対応の免除は難しいと言われることもあります。私は、基本的に電話免除が可能なところで選考を進めています。必要な配慮と業務内容が合うかを、応募の段階で確認したいと考えているためです。
自分に合う仕事を探すために、相談時の条件を整理する
求人を探す際や、転職エージェントに相談する際は、次の四つを整理しておくと、希望する働き方を説明しやすくなります。
- 生かしたい経験・スキル:これまで担当した仕事、今後取り組みたい業務。
- 困りやすい場面:電話、騒がしい場所、複数人の会話、聞きながらメモを取る場面など。
- 必要な配慮:電話対応の免除、口頭指示のテキスト共有など。
- 職場で確認したいこと:担当業務、連絡方法、代理対応の体制、在宅勤務の使い方など。
必要な配慮だけでなく、これまでの経験も併せて伝えることで、仕事内容と働く環境の両方から求人を検討できます。
障害者向け転職エージェントを利用する場合も、希望する職種に加えて、電話対応の可否や連絡方法を具体的に伝えたいところです。求人紹介の段階で確認してもらい、企業との面談でも実際の進め方を確かめると、入社後の仕事を考える材料になります。
私が利用した転職エージェントの体験・比較は、別の記事にまとめています。
年収や担当業務も含めて求人を検討したい方には、実際に紹介された求人をもとにした記事もあります。
障害者雇用で年収500万〜600万円の求人はある?実際に紹介された求人から考える →
仕事内容と、仕事を進める方法を一緒に確認する
私の場合、電話対応は難しくても、必要な情報を確認し、回答を用意することはできます。口頭の指示をテキストでも共有してもらうことや、電話を代わってもらう体制によって、仕事の進め方が変わります。
聴覚障害・難聴がある人の仕事選びでは、興味や経験に合う職種を考えながら、その仕事をどのような環境で進めるのかも確認したいところです。
まずは、ご自身が困る場面と、どのような方法なら対応しやすいかを整理し、求人紹介や面談で具体的に伝えてみてください。
