障害者雇用・転職

聴覚障害がある私の面接官経験|聞こえにくさを伝え、仕事を進める工夫

私は聴覚障害があり、企業の採用担当として面接官を務めた経験があります。

以前、「聴覚障害があるのに、どうやって面接をしているんですか?」という質問をいただきました。面接は会話で進める仕事なので、聞こえにくさがある場合、どのようにやり取りするのか気になる方もいると思います。

私の場合は、話し言葉で面接を行い、最初に聞こえにくさと、話す速さについてのお願いを伝えていました。

この記事では、その具体的な伝え方と、面接官として働く中で私が考えていたことを紹介します。聴覚障害がある人の仕事や、職場でのコミュニケーション方法を考える際の、一つの事例として読んでいただければと思います。

私は話し言葉で面接をしていた

私は、声で会話することができます。ただし、聴覚に障害のない人と同じように聞こえるわけではありません。相手の話を聞き取れず、聞き返すことがあります。

そこで、面接では応募者に話し方を少し調整してもらうようお願いしていました。

同じ聴覚障害でも、聞こえ方や使いやすいコミュニケーション方法は人によって異なります。私のように話し言葉でやり取りする人もいれば、手話や筆談などを使う人もいます。

高齢・障害・求職者雇用支援機構のマニュアルでも、本人が望むコミュニケーション方法を確認することが示されています。仕事上のやり取りを考えるときも、障害名だけで方法を決めず、本人に合う手段を確認することが大切です。高齢・障害・求職者雇用支援機構「聴覚障害者の雇用支援マニュアル」第2章

面接の最初に、聞こえにくさと話す速さを伝える

私が面接の冒頭で伝えていたのは、次のような内容です。

私は耳に少し障害があるので、聞き返してしまうことがあるかと思います。すみませんが、ご了承ください。ただ、○○さんは普段通りに話していただいて大丈夫です。できれば、気持ちゆっくり目・はっきり目に話していただけると助かります。

ここでは、三つのことを伝えています。

  • 聞こえにくさがあり、聞き返すことがある
  • 基本的には、普段通りに話してもらってよい
  • 少しゆっくり、はっきり話してもらえると助かる

「耳が聞こえにくいです」とだけ伝えると、相手はどのように話せばよいのか迷うかもしれません。そこで私は、聞き返す可能性と、協力してもらいたいことを一緒に説明していました。

これは私の聞こえ方に合わせたお願いです。人によって必要な方法は違いますが、「どのような場面で困るか」と「どうしてもらえると助かるか」を具体的に伝える考え方は、ほかの仕事上のやり取りにも使えると思います。

ゆっくり話してもらうことは、面接の進め方にもつながる

私が面接官として大切にしていたのは、応募者の経験や考えを、落ち着いて話してもらうことでした。

面接では、すぐに答えが浮かばない質問を受けて、「早く答えなければ」と焦ることもあると思います。私は、急いで答えることよりも、本人が何を経験し、どう考えているかを知りたいと思っていました。

その点で、「少しゆっくり話していただけると助かります」というお願いには、私の聞き取りを助けることに加え、会話を急がずに進めるきっかけになる面もあると考えています。

応募者にとっても、面接官から話す速さについて具体的なお願いがあると、「焦って話さなくてもよい」と受け止めやすくなるのではないか。これが、私がこの方法に感じていた意義です。

面接官として聞こえにくさに対応する工夫が、相手の話を丁寧に聞く姿勢にもつながりうると考えています。

面接官として働く姿も、職場を知る材料になる

障害者採用では、応募者が「障害のある社員は、実際にどのような仕事をしているのか」を気にすることがあります。

仕事内容や配慮について説明を受けても、自分がそこで働く姿を想像しにくい場合もあると思います。

そのとき、聴覚障害のある私が面接官を担当していること自体が、障害のある社員が仕事を任されている一つの実例になります。

私は、採用担当者として働く自分の姿を通じて、職場での働き方を具体的に伝えられる面があると考えていました。制度の説明に加えて、実際に働いている人の姿を見てもらえることには意味があると思います。

ただし、担当する仕事や必要な配慮は、一人ひとり異なります。面接官の働き方を参考にしながら、自分が担当する業務や、配属先でどのような対応ができるかも確認することが大切です。

自分の工夫と職場の配慮を組み合わせる

私の場合、話し言葉でやり取りできることを前提に、聞こえにくさを説明し、話す速さを調整してもらう方法で面接を行っていました。

この経験から、仕事の可能性を考えるときには、具体的な業務に分けて、どこで支障が生じるか、どのような方法なら進められるかを考えることが大切だと感じています。

また、仕事を進める方法は、本人の工夫と職場の対応を組み合わせて考えるものです。

雇用分野では、障害者雇用促進法に基づき、事業主には過重な負担とならない範囲で合理的配慮を提供する義務があります。具体的な対応は、本人の意向を尊重しながら、仕事上の支障と職場の状況を踏まえて話し合います。厚生労働省「合理的配慮指針」

会議や日常の連絡で使える方法については、聴覚障害のある人が職場で相談したい合理的配慮で、資料の共有や発言の文字化などを紹介しています。

私にとって、面接官としての経験は、聞こえにくさへの対応を考えながら、採用の仕事に携わった経験です。その中で、自分の工夫が面接の進め方や、職場の働き方を伝えることにもつながりうると考えるようになりました。

必要な配慮を確保しながら、自分の経験や得意なことをどのように仕事に活かせるか。その両方から、働き方を考えていきたいと思います。

これから就職・転職する方が、必要な配慮を応募先に伝える時期や方法を考える際は、障害者雇用の配慮事項はいつ伝える?面接・オファー面談の例文も参考にしてください。

-障害者雇用・転職
-, , ,

© 2026 むじなの障害者就労・障害年金ノート