聴覚障害と発達障害がある、元人事のむじなです。
障害者の就職先を探すとき、「どの地域なら仕事を見つけやすいのだろう」と気になることはありませんか。
私自身、地元での就職活動に行き詰まった経験があり、その後は東京を中心に就職・転職活動をしてきました。
ただ、人事として採用に携わっていたときも、関東以外の事情に詳しかったわけではありません。当初は「大阪や名古屋も、大都市なのだから東京とそれほど違わないのでは」と考えていました。
その見方を考え直すきっかけになったのが、障害者の就職件数を、就職先の内訳まで分けて見たことです。
就職件数が多い地域と、自分が希望する働き方の選択肢が多い地域は、必ずしも同じとは限りません。
この記事では、私が当時調べた東京・大阪・愛知のデータから、地域別の数字を読む際の注意点と、就職先を探すときに確認したいことをまとめます。
※この記事は、2020年に公開した考察を見直したものです。掲載する比較表は2017年度のデータであり、現在の求人状況や「就職しやすい地域ランキング」を示すものではありません。また、比較単位は東京都・大阪府・愛知県で、名古屋市単独のデータではありません。
就職件数だけを見ると、大阪は東京より多かった
厚生労働省が公表した2017年度の「障害者の職業紹介状況等」によると、ハローワークを通じた障害者の就職件数は、全国で97,814件でした。
そのうち、大阪は7,911件、東京は6,809件、愛知は5,489件です。
この数字だけなら、「大阪は東京よりも障害者が就職しやすい」と感じるかもしれません。
しかし、これは就職した件数の比較です。求職者の数や希望条件が同じ地域同士を比べているわけではなく、個人の内定の得やすさを示しているわけでもありません。
さらに、就職先の内訳にも注意が必要です。
就職件数には、就労継続支援A型への就職も含まれる
この統計には、就労継続支援A型事業所への就職も含まれています。
A型は、通常の事業所で働くことが難しい障害のある人に、雇用契約に基づく働く機会や、知識・能力を高めるための支援を提供する障害福祉サービスです。
一般企業への就職とは制度上の位置づけが異なりますが、A型で働くことも雇用契約に基づく就労です。
そのため、A型への就職を含めて集計していること自体が、統計の誤りというわけではありません。
ただ、一般企業で働きたい人が地域の状況を知るには、総件数だけでなく、その内訳も確認した方がよいと考えました。
A型を分けると、就職件数の見え方が変わる
当時のデータを、A型への就職と、それ以外に分けると次のようになります。
| 地域 | 就職件数全体 | うちA型 | A型を除く件数 | A型の割合 |
|---|---|---|---|---|
| 全国 | 97,814件 | 20,891件 | 76,923件 | 約21.4% |
| 東京 | 6,809件 | 537件 | 6,272件 | 約7.9% |
| 大阪 | 7,911件 | 3,078件 | 4,833件 | 約38.9% |
| 愛知 | 5,489件 | 1,779件 | 3,710件 | 約32.4% |
※2017年度のハローワークを通じた就職件数です。「A型を除く件数」は全体からA型の件数を差し引き、割合は筆者が計算しています。
出典:厚生労働省の上記資料、および姜博久「障害者の就労施策と大学における障害学生のキャリア支援」『関西大学人権問題研究室紀要』第76号、2018年、93ページ。論文の公開ページ
全体の就職件数では大阪が東京を上回っていますが、A型を除いた件数では東京の方が多くなっています。
また、全体に占めるA型の割合にも差がありました。
私が気になったのは、この点です。同じ「障害者の就職件数」でも、その数字に含まれる働き方の構成は地域によって違っていました。
なお、ここで示した「A型を除く件数」は、そのまま民間企業の正社員への就職件数を意味するものではありません。雇用形態や仕事内容まで、この表から読み取ることはできません。
この表だけでは、地域差の原因までは分からない
以前の私は、この違いから「東京なら一般企業で働ける人でも、大阪や愛知ではA型を選ばざるを得ないのでは」と考えました。
しかし、見直してみると、この表だけでそこまで結論づけることはできません。
例えば、数字の違いを理解するには、次のような情報も必要です。
- それぞれの地域で、どのような条件の求職者が仕事を探していたのか
- 本人がどのような働き方や支援を希望していたのか
- 一般企業やA型事業所に、どのような求人があったのか
- ハローワーク以外の経路で、どれくらい就職していたのか
企業への直接応募や民間の転職サービスなど、この統計だけでは捉えきれない就職経路もあります。
したがって、「大阪や愛知の企業は障害者を採用したがらない」「東京へ行けば就職できる」と断定するのは適切ではありません。
このデータから私が伝えたいのは、地域を比較するときには、就職件数の多さだけで判断せず、どのような仕事や働き方につながっているのかを見る必要があるということです。
A型の割合が高いこと自体を、地域の優劣や、そこで働く人の能力の評価に結びつけるつもりもありません。
自分の就職先を探すときに確認したいこと
地域の統計は参考になりますが、実際の就職活動では「今の自分に合う求人があるか」を確かめることが大切です。
私なら、次の順番で確認します。
1.通勤できる範囲で、希望条件に合う求人を調べる
まずは地域全体の求人数よりも、自分が応募を検討できる求人を具体的に見ます。
確認したいのは、例えば次のような点です。
- 経験を活かせる仕事内容か
- 必要な収入を得られるか
- 雇用形態や契約更新の条件はどうなっているか
- 勤務時間と通勤の負担に無理がないか
- 障害について必要な配慮を相談できるか
求人数が多くても、自分の希望や体調に合わなければ選択肢にはなりません。逆に、求人数が少ない地域でも、条件の合う仕事が見つかる可能性はあります。
2.一つの窓口だけで、地域の可能性を判断しない
ハローワークで希望する求人が見つからなかったとしても、それだけで「この地域には仕事がない」と決める必要はありません。
企業の採用ページや障害者向けの転職サービスも確認し、探す経路を増やす方法があります。
私自身、障害者向けの転職エージェントを8社利用してきました。紹介される求人や担当者との相性を含め、利用先を比較することには意味があると感じています。
ただし、転職サービスも、地域・職歴・希望条件・求人状況などによっては紹介が難しい場合があります。登録すれば必ず求人が増える、ということではありません。
一般企業への就職・転職を考えている方に向けて、実際の利用経験を踏まえたサービスの選び方を別記事にまとめています。
3.在宅勤務を探す場合も、出社条件まで確認する
通勤の負担や住んでいる地域が制約になっている場合は、在宅勤務ができる仕事も検討対象になります。
ただ、「在宅勤務可」と書かれていても、完全在宅なのか、週に何日か出社するのかで条件は変わります。研修期間中の出社や、居住地域の指定についても確認したいところです。
また、企業に雇用される在宅勤務と、案件ごとに報酬を受け取る副業・業務委託は分けて考える必要があります。
毎月の安定した収入を求めるのか、空き時間で収入を補いたいのかによって、合う探し方も異なります。
4.転居は、求人だけでなく生活全体で判断する
私には地元での就職活動に行き詰まり、東京を中心に仕事を探してきた経験があります。
ただ、その経験から、誰にでも「東京へ出ればよい」とは言えません。
転居を伴う就職では、給与だけでなく、家賃や引っ越し費用、通院先、家族や支援者との距離、生活環境の変化も考える必要があります。
まずは転居前に応募できる求人を調べ、具体的な仕事内容や雇用条件を確認する。そのうえで、生活が成り立つかを検討する順番がよいと思います。
まとめ:就職件数より、自分が選べる働き方を確かめたい
東京・大阪・愛知の過去のデータを調べて、私が考え直したのは「大都市なら、障害者の就職事情も似ているだろう」という見方でした。
就職件数の総数が多くても、その内訳まで同じとは限りません。
一方で、地域全体の数字だけでは、自分が就職できるか、希望する働き方を実現できるかまでは分かりません。
大切なのは、地域のイメージや件数だけで可能性を決めず、現在の求人と、自分が働き続けるための条件を照らし合わせることです。
地元で探す、通勤範囲を広げる、在宅勤務を検討する、条件を確かめたうえで転居を考える。いくつかの選択肢を比較しながら、自分に合う働き方を探していきたいと思います。
